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電車男

 とあるモンスターゲームを知っていますか。技をレベルアップで覚えられるのに、4つまでしか覚えられない。新しい技を覚えると、古い技を忘れてしまう。


 人間もそうだと思うんですよね。


 もしも異能なんてものがあるならば、私たちは何を失うのだろうか。


--------------------------------------------


 俺は工藤光、高校生だ。どこにでもいる普通の高校生だと思っている。


「光は、変に気にしすぎる所あるんだよ。嫌われてないって。」


 少し落ち込んでいる俺を慰めている彼は近藤風雅、同級生だ。要領がよく、人間関係も勉強もノラりクラりと進めていく。


「和音さんに嫌われたと思う。なんというか、目が笑ってなかった…。」


 風雅を含む同級生達と、好きな人を言い合う恋バナを楽しんでいた。そんな時に、想い人の佐藤和音さんにちょうど聞かれてしまった。


「驚きはすれど、嫌われる要素はないと思うけどな。気にすんな。」


 笑う風雅。人の気も知らずに。


「気にする。」


「そんなことより、帰ったらどうする。遊びに行くか。カラオケに行くか。行くしかないよなぁ。」

 全くもってお構いなしの風雅。


「カラオケ良いかもしれないな。」


 ちょうどよく駅構内に電車の到着を知らせるアナウンスが流れた。


「誰か助けてくれっ!殺されるっ!」


 叫び声が聞こえて、後ろを振り向く。全身スーツを着た40歳ぐらいの男性がふらりふらりとホームを歩いていた。まるで酔っ払いだ。


「おじさん、酔っているのは分かるけど危ないですよ。」


 線路に近づく男性に手を伸ばした。


「そうそう、危ないですよ。え?」


 風雅も同時に手を伸ばした。しかし、目の前にいた男性は突然として、その場から消えた。


「殺さないでくれっ!助けてくれっ!」


 先ほどまで目の前にいた男性は、線路内にいた。線路へ飛びだした訳ではなかった。まるで、最初からそこにいたかのようだった。


「おっさん!」


 飛び込む風雅。ざわめく周囲。電車は近くまで来ている。

 風雅は男性をホームへ押す。その男性の手を掴んでホームに引き上げる俺。ホームへとよじ登る風雅。


「助けてくれっ!殺さないでくれっ!」


 まだ叫ぶ男性。繋いでいる手がぐわんぐわんと揺らされる。


「ホームですよ、おっさん。本当に危ないんだから」


 風雅がなだめる。そして、電車がホームへと滑り込む。

 途端、暴れていた男性の手が急におとなしくなり、声も静かになる。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 突如、叫び声が上がる。指さすのは、俺の手の先だ。

 嫌な感覚を味わいながら手の先を見る。風雅も同時だった。


 そこには、男性の腕だけが残されていた。


 確かに握っていたはずだった男性は、腕の先からはいなく、すっぱりと綺麗な断面を残していなくなっていた。

 急停車を知らせるアナウンスと供に止まる電車。その先には、腕から先が潰れた男性の無残な姿があった。

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