表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

フログの息子

令和6年7月24日(水)

一部見直し表現を変えましたが、内容に変更はありません。






 ある日、兄弟全員で悪魔王に呼ばれた。

 まだ小さい弟や妹は、自力で長距離を歩くことはできなかったり、昼寝時間だから寝ていたりしているので、兄、もしくは姉の頭の上に乗せている。

 人間社会では身分の高い者に対し、弟妹を頭の上に乗せお会いしたら、不敬になると聞いている。だが悪魔の一員である僕の一族は、頭の上に乗せることで、この子は赤子だと他者に示している。


「まだ赤子もいるのか。そういえばフログから、人数しか聞かなかったな」


 だからか悪魔王は、不敬だと言うことなく受け入れてくれた。人間からすると、器量がある方だと思われるかもしれないが、悪魔の外見、習性は様々だ。悪魔王はそれを理解しているだけ。


「まあ、よい。お前たち、イトコについては知っているな?」

「はい」


 長兄である僕が全員を代表し、答える。


「お前たちもイトコたちと同じく、悪魔と人間との間に産まれた者。つまり能力や地位に関係なく、人間社会に行き来できる存在だ。そこでだ。お前たち兄弟にも、イトコたちと同じ仕事をしてもらいたい」


 イトコたちが悪魔王に命じられ、人間社会で悪魔の書を配っていることは知っている。それを僕たちにも行えと言うことか。


「悪魔王の望むままに」


 さすがに最敬礼を行うため、全員が頭に乗せていた弟妹を手に抱え直した。



◇◇◇◇◇



「人間社会、か……」


 しっかり目深(まぶか)にフードを被り、背を丸めて歩くのが当たり前となった僕は呟く。

 母のように美しい、僕の理想の姿をした者たちだけが暮らす世界。そこに僕は憧れているが、父は言う。


「それは、お前の幻想だ。確かに妻は美しい見た目だが、中には人でありながら、醜い見た目の者だって存在する」


 父は僕の思いを、なにも分かっていない。人間の容姿、それだけで羨ましいだけなのに。


 だらん。人間に比べて長い両腕を胸の前で垂らし、視線を左右に動かす。これほど多くの人間を見るのは、初めてだ。新鮮で嬉しくもあり、憎くもある。

 やはり僕のように、まるで人間の頭から骨を抜いたように平たく、カエルみたいな頭の奴はいない。しかもこんな頭なのに、母と同じ色をした髪の毛は生えている。これほど不気味な見た目をした人間、この世界にいる訳がない。


 この見た目が幼い頃から嫌で、鏡で直視しないように前髪を伸ばしている。けれどその毛はくせがあり、うねって余計に醜く見える。己の姿に厭悪(えんお)し、割った鏡は一枚ではない。


 人間社会に降り立ち、なにかの建物の屋上から人々を見回し、一番に出た言葉はこれだった。


「羨ましいなあ」


 父が言うように、確かに人間も外見に優劣がつけられる生き物。だけどやっぱり僕のように、父に似た肌色の人間はいない。頭だって母のように丸い。こんな潰れた頭の人間なんて、一人もいない。


 人間の外見をしている。それだけで恵まれているというのに、人間は、まだ望むのか。なんて強欲な生き物なのだろう。

 ひひっ、自然と笑い声が出る。


「悪魔王に感謝しなければ」


 悪魔が魂を食えば、その魂は復活することはない。

 これは人間の願いを叶える書でもあるが、人間を滅ぼす書でもある。


 僕のように不満を抱え、世を恨んでいるような人間は、たやすく見つかる。僕と同じ、暗い目をした者を探す、それだけでいいのだから。そしてそういう目を持つ者ほど、なにか叶えたいものを抱えている。


「なにを望んでいる? この書には、お前が願いを叶える(すべ)が書かれている。そう、悪魔の書だ。さあ、受け取れ」


 今日もまた一人、震える手で受け取ると、大事そうに書を抱え走り去る。その後ろ姿を見て、また自然と、ひひっ。笑ってしまう。


 憎め、望め、悪魔を呼び出せ。どれだけ恵まれているか理解していない、愚かな人間たちよ。さあ、破滅の道を歩くが良い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] カエルと人間、どちらかに振りきれていればまだ諦めもついただろうに、悪魔ながら哀れな子。 この拗らせ方だとイトコ仲は凄い悪そう。 [気になる点] 悪魔の世界では赤子は頭に乗せるのか、ちょっと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ