過去の思い出(2)
「ーーってことがあっておれは、仁が好きってことに気がついた出来事でもあるんだ」
素敵な話だけど悠真は勘違いしてるような……
この出来事は続きがあって、その続きの方が私には印象深い。
「うーん。仁が私に告白したっていうけど、あれは違う意味だと思うよ」
私がそう言うと悠真は首を傾げた。
「どういうこと? あの状況の好きは告白しかないよ」
「あの後には続きがあってね。仁は私が引っ越すと勘違いして泣いてた所を、仁のお母さんが旅行に行くだけって説明したの。でもなんでそこに好きだ!って告白めいたことを言ったのかというと、お父さんを亡くしたことが原因みたい」
「亡くなったことはわかってだけど、それが原因ってなんで?」
仁が小学四年生の時、仁のお父さんは交通事故で亡くなった。亡くなった日の朝、仁はお父さんと口ケンカをした勢いで酷いことを言ったと後悔していた。
「お父さんなんか嫌いだって言っちゃったらしいの。仲直りもできず事故で亡くなって、仁はすごく後悔したみたい。嫌いって言ったから大事な人がいなくなったんだ。いなくなってほしくない人には好きって言葉を言えば離れることはないって」
「ーーってことは、好きって言ったのは美紀が引っ越して離れていくと思ったから」
「そう。だから悠真が私の立場だったとしても仁は同じ事を言ったと思うよ」
悠真は誤解だと分かると、能天気に仁が好きと自分に言っているところを想像してニヤニヤしている。口を押さえているが隠しきれていない。
「すき、好きかぁ。言ってくれねぇかな」
あらやだ。
悶々としすぎて口が悪くなっているわこの人。
私達の間に誤解も解けたことで協力関係を築き上げた。
「おれのこと好きって言わせてみせる!」
「いいね! ガンガン攻めちゃえ!」
「えっどっちの意味で?」
ニヤニヤと悠真は私を見る。その質問に私もニヤリと笑う
「もちろん。両方の意味で」
「「ハハハハハ」」
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二人が笑い合っている中、家でテレビを見ながらアイスを食べていた仁はゾワっと寒気が襲っていたという。