無事両思いになりました。
舞台組は、男女バスケ部の部室を借りて衣装から制服へと着替えた。
徐々に周りは部室から出て行き、俺と悠真の2人きりになった。
舞台の上以外はまだ一言も会話をしていない。
多分、悠真は俺のことが嫌になったんだろう。
そう思うと、どんどん胸が締め付けられる。
すると、悠真が久しぶりに話しかけてくれた。
「舞台...楽しかったね」
「お、おう! 楽しかった」
話しかけられるとは思ってもみなくて驚いたが、
久しぶりに会話出来たことが嬉しくなる。
「王子役、カッコ良かったよ」
「悠真も、似合っていた」
あぁ、悠真と会話できるってこんなに幸せなことだったんだな。凄く嬉しいし、凄く落ち着く。
「...おれ、諦めようと距離空けたんだけど全然諦め
きれなくて、今でも仁のこと好きなままなんだ」
「...諦めるのか?」
「仁にはもう無理させたくないから...」
悠真は下を向いて俺を見ようとしない。
「俺、悠真の事が好きだ」
「だからそれは...!」
俺の告白にやっと顔を上げたかと思えば、俺の気持ちを信じてくれず否定しようとしている悠真に、悲しくなり感情が爆発した。
「じゃあなんなんだよ...
離れると寂しいって気持ちは!
俺以外と仲良くされるとイラつくのは!
抱きしめてほしいって気持ちは!
キスしたいって気持ちは...
お前と同じじゃないって言うなら、この気持ちは
なんていうんだよ...!」
涙が溢れてきて止まらない俺に、悠真は目を見開く。
「...仁」
「教えてくれよ...」
「ごめん! ごめんね 仁!」
強く強く抱きしめられ、俺も背中に手を回し、少し背の低い悠真の肩に顔をうずくめる。
「この気持ちは好きってことじゃないのか...?」
否定されたらもう、俺には分からない。
弱々しく聞くと、悠真の手で俺の頬が包み込まれる。
「そうだね...! おれと同じだ」
久しぶりに悠真の笑顔が見られた。
その笑顔に胸がキュンとする。
よく見ると、ほんの少し悠真の目にも涙が流れていた。
「なんで泣いてるんだよ」
「仁が泣いてるから...
それと、おれが嬉しいから...」
「なんだそれ」
いつも通りの悠真に笑ってしまったが、抱き合ったままの状態に恥ずかしくなり、悠真の腕から抜けようとすると、もう一度強く抱きしめられドキッとする。
「まだ...まだ仁とこうしていたい」
耳元で甘く優しい声で囁かれた。
この甘い状況に慣れていない俺は、頭から火が出そうだった。
「...文化祭回らないのか?」
「この状況より優先する用事なんてないよ」
全然離してくれない。
俺もさすがに疲れてきた。
どうしたら離してくれるだろうか。
どうしようか考えていると部室の扉が急に開いた。
「「「あっ」」」
俺達が離れるより先にドアを開けられ、美紀に見られてしまった。
「お2人いま、抱きついてませんでした?」
「いや、そんな事はしていない」
「嘘つけ! ガッツリ見ちゃったわ!」
必死に誤魔化したが、すぐにバレてツッコまれた。
「おれ達、仲直りしてちゃんと付き合うことになった」
「やっと両思いになったのね!」
美紀は大喜びしているが、それでいいのだろか?
舞台の袖で言っていたことを思い切って聞いてみた。
「...いいのか? 悠真の事好きだったんだろ?」
「「え?」」
悠真は初耳だったらしくキョトンとしているが、
なんで、美紀までキョトンとしているんだ?
「...あー、あれ嘘! 大嘘! 」
美紀は舞台袖の事を思い出したようだが、すぐに笑って否定した。
「そんなこと言ったの? やめてよ〜!
美紀と付き合うなんてありえないから〜」
悠真は腕をさすり、引いた目で美紀を見つめた。
すかさず美紀は否定した。
「私もねーよ!」
「...じゃあ、キスも本気でするつもりもなかったのか?」
「あったりまえじゃん! 仕掛けたら仁はどういう
反応するかきになっただけ」
「そうか...よかった」
ハッキリ否定してくれて正直ホッとした。
ライバルになり幼馴染の関係が崩れるのだけはイヤだ。
「え? なになに、おれと美紀がキスすると思って
あの時止めたの?」
あの時のアドリブの真意を今知った悠真は、ニヤニヤしながら俺に近づいてきた。
「...うるさい」
「まーた照れちゃって〜! 素直になりなよ」
美紀に腕をツンツンされ、認めるまでしつこそうだったので素直に認める。
「...そうだよ 悪いかよ」
照れ隠しで素っ気なくなったが、悠真はそれでも感動したのか抱きついてきた。
「じ〜ん! もー大好き〜! 愛してる!」
「なっ あ、あ、」
「「あ?」」
「...俺も好きだ」
悠真からの愛してるは心臓に悪すぎる。
愛してるを悠真に言うなんて、俺にはまだハードルが高すぎた。
「「キャーーー」」
「からかうな! 早く行くぞ!」
恥ずかしさのあまり、部屋から急いで出ると
2人はからかいながらも着いてきた。
「じ〜ん! もう一回言って!
ついでにキスもして〜!」
「キ、キスはまだ早くないか?」
「え? キスなんて毎日するものよ!」
「...そうなのか?」
やっと自分の気持ちに気づき、思いもぶつけ合い、よりいっそ仲が深まった気がする。
そして、久しぶりの3人で文化祭を回る事ができた。




