暮らしのヒント 発泡剤とバリウムの飲み方
毎年恒例の会社の定期健診日、この日は憂鬱だ。何故なら胃透視があるからだ。いや、胃透視というより発泡剤の存在が私の気持ちを暗くさせる。
振り返れば、35歳を過ぎてはじめて胃透視を受けた日。ふんふん、なーに余裕さとたかをくって、発泡剤を飲んで即座にリバース、半泣きでギブアップ苦い思い出がある。それから数年は胃透視は避けてきた。胃透視をすると会社のみんなに迷惑(時間のロス、そして自分がハズイ)かかるし、自分は健康だもん。そうやり過ごしてきた。発泡剤の存在を消去したのだ。
と、このまま平和な検診が続いていくと信じていたのだが、遅まきながら私は結婚し奥さんが出来た。三年前の検診前、胃透視は受けないつもりといった途端、こっぴどく怒られて検診は大事だからという理由で再び参戦することとなった。
やるからには、前回のような思いはしたくない。私はスマホから「発泡剤の飲み方」を調べ、ある方法を採用した。それは発泡剤を少しずつ飲みバリウムをちびちび飲んでいくという戦法。さすがに一気飲みは前回のこともあるし、それでいこう。これが3年前。これは相当時間がかかったものの、検査結果も異常なく私は発泡剤を克服したかに思えた。
2年目、まあ大丈夫と臨んだ。検診、より成功の成果を確実なものにしようと、発泡剤をさらに小分けにバリウムをちびちび飲む作戦。あまりにも長くかかり、看護婦さんが「がんばって」と声をかけるものだから、「大丈夫ですよ。ありがとう」と返事を返してはまた飲む。を繰り返した結果、精密検査の知らせが届いた。驚愕し落ち込んだが、後日胃カメラの結果は異常なし。ほっと胸をなでおろした。が、なんで再検査となったのか、私は飲み方にあると考え出来る限り素早く行わないといけないと結論づけた。
そして今回、スマホの情報を総合する。発泡剤を飲む際、舌先に入れず奥に入れる。バリウムは一気に飲む。・・・でも、出来るのか。
当日、血圧、採決、視力、聴力、心電図、身長、体重、尿検査とこなし、ついに胃透視へ。レントゲンバスに乗り込むと、早速、バリウムが機械でシェイクされていた。どんよりとした気持ちになる。
まずは胸部レントゲンこれはスムーズ。問題はここから、それは看護婦さんも重々承知のようだ。以前と変わらず同じ方で少し顔がひきつっている。これは私を覚えているな。まあ、当然か。
「では、お願いします」
「発泡剤は半分ずつ飲んでいいですか」
「いいえ、一気に飲んでください」
「前回は良かったんじゃ」
「いいえ、一気にお願いします」
・・・山本シフトやん。包囲網やん。私は頭の中で妄想する。
「君たち、彼の飲み方は駄目でしょう」(お偉いさん)
「でも、彼は一生懸命飲みました」
「それだけ駄目だよ。マニュアルどうりじゃなきゃ、駄目でしょ」
「はい」
「わかったね。今回はちゃんとさせるんだよ」
「はい。わかりました」
・・・・・・・・。
妄想は止め。私の策の一つは封じ込められた。
「はあ」
私は発泡剤を手にする。飲もうとするが気持ちが拒絶する。
「もし、駄目でしたら病院(胃カメラ)でします」
少し恨みがましく言ってみた。
だが、もはや退路はない。決心し、顔をあげ喉奥に発泡剤をイン。喉奥がハジケざわつきはじめるが、バリウムで流し込む。なんとか、耐えた。それから残りのバリウムを細心の注意をはらって流し込んだ。
あとは「やめろ!ショッカー」ばりの機械の回転ショーあんど指示通り動くことに、ゲップとリバースしないように心がけなんとか終了した。
途端に感謝の気持ちが芽生え、技士さんと看護婦さんに「ありがとう」と思いを伝える。
来年は同じ要領でいけば、なんとかなるかそんな光明が見えた検診だった。