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赤い花  作者: 加護景
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プロローグ


 何度目の開花だろうか。


 咲き乱れた花が、辺り一面を真っ赤に染め上げていた。

 目の前の、赤い花を手折る。

 何気なく手に取った花は、酷く特徴的な形をしていた。

 蜘蛛の足のように細い花が何本も、くるり、くるりと外向きに巻いている。水の中に絵の具を垂らしてできる模様、それに近いのかもしれない。


 死人花。そのような異名を持つこの花は、鮮血を思わせるような、綺麗な紅色をしていた。


 鼻先に、花を近づけてみる。

 何の匂いもない。鼻孔をくすぐるような刺激の類はその花には存在しなかった。死のイメージとは程遠く、ただ、湿っぽい空気の匂いがするだけだった。


 どの花にも、花言葉というものが存在する。人は花に自らの願いを込め、そっと祈りを捧げるのだ。

 今、手に取ったこの花には、どのような想いが込められているのだろうか……


 すっ、と柔らかな風が吹いた。周りの赤という赤が、風に煽られ、艶やかにそよいでいた。その幻想的とも思える様子は、まるで自らの存在を主張するようであった。


 きっと、尋常ではない想いがこの花には詰まっているのだろう。

 その想いが、善意であるのか、悪意であるのか。はたまた、そのようなカテゴリに収まる類のものではないのか。

 わからない……わからないが、一つだけ、感じていることがある。

 この花は、自分の人生の行く末を、運命を担う重要な要素なのだと、そう思えてならなかった。


 何度も繰り返される光景に、何度も繰り返された悲劇に、終わりを告げる存在なのだと、そう願っていた。

 手に取った花を、そっと放り投げる。宙に浮かんだ花は、重力に導かれるまま赤い群生の中に溶けていった。


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