行間
「お兄ちゃーん?この服、……何?」
「!!………」
雄人は光に壁ドンをされていた。最も、今光がしている壁ドンは心にキュンとくるものではなく、圧力をかけるような、脅迫に近い感じの壁ドンだ。
「ずいぶんボロボロなんだけどー、…これ、ティナさんがやったの?」
「いや、……あいつじゃねー…」
ボロボロの服というのは、雄人が勝手に光の部屋から持ってきた服で、ティナの服の代わりにしていた。フウゼンとの戦いでそこら中破けて、とても着れる状態ではなかったので、後で捨てるためにとりあえず雄人の部屋に置いてあったのだが、光にあっさり見つかってしまった。
「へー、じゃあお兄ちゃんがティナさんを無理矢理襲ったって事でいい?やっぱり誘拐って事でいい?」
「んなわけねーだろ!?ってかその服俺の部屋に置いてあったはずだけど!勝手に入ったのかよ!?お前それはダメだろ!」
「お兄ちゃんがそんな事言える立場?この服入ってたところに私の下着とかも入ってたんだけど?」
「いやお前の下着なんて毎朝見てるっつーか見せられてるっつーかでもう見慣れたっつーか。お前も毎朝いつの間にか俺の部屋いんだろーが」
「開き直ってんの?私はお兄ちゃんよりデリケートなの。大体女の子の部屋に勝手に入るって何なの?」
「何がデリケートだよ。普段だらしねー格好なのによお」
「何お兄ちゃん?死にたいの?」
「ごめんなさい、マジでごめんなさい」
光は更に睨みを利かせて、雄人を萎縮させる。
「なんでこんなに服がボロボロなのかちゃんと説明してよ」
「えーっとそれはだな、…そう!ティナに街の案内しててよー、あいつ結構転ぶんだよ!ドジっ娘かよって思ったな!うん!」
「でも風呂から上がってきた時傷なんか一つもなかったじゃん。(私より胸大きかったし…)」
「!…傷の治りも早いんだろ!?けがしたの昼前だったし、お前が帰って来るまでにはとっくに治って…」
「昼前?お兄ちゃん学校に行ってなかったの?」
「……あ」
雄人の発言が全て裏目に出てしまい、光の機嫌を更に悪くさせた。
「つまりあれだね、お兄ちゃんは私が学校で授業を受けてる間に街中デートをお楽しみだったと、…そういうわけ。」
「(つーか街の案内すらしてねーんだけど、ここは素直に謝っておこう)……本当に申し訳ございませんでした。」
雄人が深々と頭を下げ謝ると、光は何かを思いついたように、にんまりと笑った。
「いいよ、服の事も学校さぼった事も許してあげる。その代わり、条件があるよ」
「はい、何なりと」
「今度の休み、私の買い物に付き合ってよ。」
「……できれば他の事を」
「替えの新しい服も買わないといけないし」
「行こう、次の休みに絶対行こう」
「うん!…それに、ティナさんの服とかも買わないとだし」
「……やっぱり光は優しいよな、いろんなところに気が回るし」
そう言うと、雄人は光の頭を撫でる。
「えへへ///当然だよ!荷物持ち、ちゃんとやってよね?忘れちゃダメだよ?約束の指切り!」
「へーい」
さっきまでの怒りはどこへいったのか。今の光は無邪気に笑っていて楽しそうに雄人と話していた。
雄人と光は指切りをして、光は自分の部屋に戻っていった。
雄人も部屋へ戻ろうとすると後ろから囁くような声が聞こえた。
「ゆーうさん」
「!?」
「ふふっ」
雄人が振り向くと、ティナが静かに笑みをこぼし、立っていた。
「ずいぶん楽しそうでしたね~。…いえ、兄妹なんですからそれが普通だと思うんですけどぉ」
ティナは雄人に歩み寄って目の前に立ち、頭を雄人に向ける。
「はい!どうぞ雄さん」
「……どうしたティナ?頭なんか下げて」
雄人は首を傾げるとティナは頭を上げ、頬を膨らませて雄人を見る。
「雄さんもう忘れたんですか?全部終わったら私の頭を撫でてくれるって約束を」
「…あー、あの時途中で止めた…よし」
雄人は思い出し、ティナの頭を優しく撫で始めた。
「!!……はにゃ~///」
ティナは目を細めてとても気持ち良さそうにしている。
「今まで、独りでよく頑張ったな。これからは俺もいる、だから一緒に頑張っていこうぜ!」
「はい!///」
こうして雄人の一日は終わりを告げた。




