金色の炎(ゴールド・フレイム)
「…あれが、…あの金色の炎が、私の力……!こんなに魔力が高まるなんて!!」
ティナは自分の能力を初めて見た。この世界に来てから、何度も自分の能力を発揮させようと試みたが全くできず、人間や他の生き物に化ける事くらいしかできなかった。しかし今、ティナは自分の真の能力を目の当たりにし、感激していた。
「ティナ、この金色の炎を纏った瞬間、力がみなぎってくるようだ!これならいける、野郎をぶっ飛ばせるぞ!!」
雄人は自分の拳を強く握った。
「行くぜバンダナ野郎!!」
「赤髪ぃぃ~~!!!」
フウゼンは拳に風を纏わせ雄人に襲いかかった。
「雄さん!!」
「任せろティナ!……え~っと、」
「うらぁぁ!!」
雄人が自分の身に纏った金色の炎をどう扱えばいいのか困っていたところで、有無を言わさずフウゼンは雄人にボディブローを決め、先程の風圧とは比べ物にならないくらいに勢いよく後方に吹き飛ばされた。
「ゆ、雄さん!!」
「はっ!ヒーロー気取ってた割には呆気なかったなぁ!!」
ティナはふらつきながらも雄人の元へ行こうとするが、フウゼンによって阻止される。
「おいガキ、もうあの野郎はもう死んだ。一緒に殺してやれなくて悪かったなぁ、だからよぉ、あいつの後を追ってくれや…死んだ後でなぁ!!」
「…!!」
そう言うとフウゼンはまた拳に風を纏わせ、大きく振りかぶりティナを攻撃しようとした瞬間、ティナの後ろから金色の火の玉が飛んできてフウゼンの顔に直撃する。
「がぁぁぁぁ!あちぃぃぃ!!!」
フウゼンの顔は燃えて地面を転げ回る。ティナが後ろを振り向くと雄人が立っていた。
「雄さん!!無事だったんですね!!」
「ああ、わりーな心配かけて。盛大に吹っ飛ばされた割にはあんま痛みを感じなかった!お前のこの力のおかげだな。ありがとよ」
雄人はティナに礼を言った後、頭を撫でる。すると、ティナは顔を真っ赤にして雄人に言う。
「雄さん!///そういうのは全部終わってからでお願いします!」
「おう、そーだな!」
すると、さっきまで転げ回っていたフウゼンは起き上がり、怒りの血相をしながら雄人に言い放つ。
「赤髪ぃぃ、てめぇ只で済むと思うなよ?切り刻んで悲惨な結末をてめぇに送ってやるよぉ!!」
「やってみろ、次はこっちの番だ!!」
雄人はさっきのフウゼンがしていた技を真似するかのように拳に炎を纏わせた。
「!!…てめぇ俺の技を!?」
「お前の技を真似るのは気に食わねーが、生憎この炎の扱いには慣れてねーからな、これで行かせてもらうぜ!!」
雄人はフウゼンとの間合いを一瞬で詰め、フウゼンは慌てて自分の両手にも風を纏わせて、雄人を迎え撃つ。
「ラァァァァッシュ!!」
「ッッ!!(速い、こいつのラッシュ!しかも一発一発が重いだと!?)」
フウゼンは雄人のラッシュを受け止めてはいるが、自分からは攻められず、防ぐのに精一杯だった。
「ふんっ!!!」
「がぁっ!!」
そして雄人の一撃がフウゼンの腹部に入った。フウゼンは後退りするが、何とか耐える。
「…すごいです!雄さん!」
ティナは想像以上の力を身につけた雄人に驚き、フウゼンもその脅威的な強さに驚きを隠せないでいた。
「ふざけんじゃあねぇぞ!!たかが契約者だろぉが!なのに何で、何でこの俺が人間ごときに押されなきゃあいけないんだぁぁぁ!!?」
雄人はすかさずフウゼンに頭突きを喰らわせ膝まつかせた。
「かはっ!?」
「俺って目付きとか悪いからよー、たまに不良とかに絡まれんだよ。まぁ大抵はあんまり面倒事にしたくなくて逃げたりしてんだけど。だがな、一度だけ、不良共が俺の大切なもんを傷付けようとしてた時があったんだ。その時俺はぶちぎれたね。」
雄人が話しているとフウゼンはアッパーを喰らわせようとした。
しかし、雄人はその行動を読み、難なくかわす。
「くそが!!何ほざいてんだぁ!人間ごときが魔物の俺を見下してんじゃあねぇぞぉぉ!!!」
フウゼンは威嚇しているが、雄人は気にせず大きく右腕を上げ、拳を強く握ると金色の炎が再び燃え上がる。それは今までで一番大きな魔力を纏わせ、金色の炎も更に輝いていた。
そして雄人はフウゼンに言う。
「俺が何言いたいか分かるか?…似てるんだよ、その時の状況と今の状況が。少し違うとすればお前は俺の大切なもんを傷付けたって事だな!!!」
雄人は思い切り拳をフウゼンに振り下ろし、地面に大きなひびが入った。フウゼンはその攻撃をまともに喰らい、血を吐いて気絶した。そして、力を使い果たしかのように雄人の纏っていた金色の炎も消えていった。
「……雄さん、やりました!やりましたよ!!雄さんが勝ったんです!!見事な逆転勝利です!!!」
ティナは自分の事のように喜び、雄人に飛び付いて来た。
「おいティナ!そんなにはしゃぐなよ。傷口広がるぞ!?」
「だって勝ったんですよ!?生き残ったんですよ!?初めての勝利なんですよ!?」
「わかった!わかったから少しは落ち着けよ!」
雄人はティナの傷を心配するがティナはお構い無しに今も喜んでいる。雄人はティナを落ち着かせる為にある一言を言った。
「……頭撫でる約束取り消すかな。」
「雄さん何はしゃいでるんですか?早く帰りますよ」
「おいこら狐、はしゃいでたのお前だろーが。」
「……てめぇらぁ、何もう勝った気で……いやがるんだぁぁぁぁぁぁ!!!」
雄人とティナが談笑しているとフウゼンは意識を取り戻し、怒りに満ち溢れ巨大な風を吹き荒らす。
「こいつ!まだこんなに力有り余ってんのかよ!?」
「魔力がどんどん上昇しています!!もうここら一帯は軽く吹き飛ばせるほどの魔力です!」
「ハハハハ!全部、…全部ぶっ壊してやる!!」
フウゼンの創り出した風はまだ大きくなっていく。
「ティナ!金色の炎どうやって出すんだ!?確かさっき契約すれば使いたい放題って言ってただろ!?」
「!…あれは言葉のあやというか、雄さんに契約してほしくて…嘘つきました!すみません!!」
「……マジかよ、……いや待て!」
雄人は閃いたかのようにティナに問いかける。
「ティナは金色の炎出せるんじゃねーのか!?元はお前の能力なんだ!俺が使えてティナが使えないわけねーだろ!」
「…でも、今まで何回やってもできなかったのに、今更できるわけが……」
ティナの心は不安でいっぱいだった。
すると雄人はティナの手を握る。
「自分に自身を持て!お前はもう一人じゃねぇ!俺がついてる!!」
「…雄さん、………私、やってみます!!」
雄人の言葉を聞き、ティナは覚悟を決め、雄人の手を握り返す。
「このまま、手を繋いでていいですか?」
「……ああ、頼むぜティナ!」
「はい!!…いきます!!!」
ティナは目を瞑り、精神を研ぎ澄ますかのように、集中力を高める。すると、ティナの体は輝き始め、その輝きは金色の炎へと変わった。
「……できた、できました!」
「よし!でかい一撃を喰らわせてやれ!!」
「はい!!はああぁぁぁぁ!!!」
金色の炎は太陽のような球体を創り出した。そしてフウゼンは、極限に溜めた風の魔力を雄人達に放った。
「消えろカス共ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「撃てぇ!ティナ!!」
「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
二つの強大な魔力がぶつかりあった――。




