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金色妖狐のティナ  作者: KAITO
第一章 ティナとの出会い
3/31

魔物 (編集中)



電柱の上に一人、たたずむ金髪の少女がいた。

そよ風が吹く中で少女は月丘町を見渡していた。


「この近くのはずなんだけどな~どこにいるんだろ?」


少女はキョロキョロと辺りを見て誰かを探している。

しかしいくら探しても見つからず、溜め息をついた。


「…………早く会いたいな……」


少女が本音であろう独り言を呟くと、どこからか話し声が聞こえてきた。


「?…………あ!」


少女が立つ電柱の近くで、雄人と光が話していた。

そして少女は雄人の方を見た瞬間、笑みを浮かべた。


「いた!やっと見つけた」


すぐに雄人のところへ行こうとする少女だったが、動きが止まる。


「……なんて言おうかな……。」


少女は雄人に会いたい為、この町にやって来た。それには理由があったからだ。その理由は突拍子とっぴょうしのないもので、雄人に会うまでずっと考えていたのだが、結局理由がまとめられないまま雄人を先に見つけてしまったのだ。


「あぁ~!こんなことなら先に理由考えとけばよかった~!!」


両手で頭をわしゃわしゃと掻く少女。

そうこうしている内に雄人は学校の方角へ向かって行く。


「どうしよ行っちゃう!……とりあえず追いかけながら考えよう!」


電柱から家の屋根に飛び移り雄人の後を追いかける。

人間とは思えない程のジャンプ力で軽々と電柱へ飛んだが、宙を飛んでいる最中に向かい風が吹き、電柱の上に着地した時に不安定な体勢になってしまう。


「!……わっ……とっとっ……」


当然、片足だけでバランスをとるのは難しく、電柱の上から落ちてしまった。


「きゃっ!!」


少女は落ちた拍子に思わず声を上げてしまい、丁度電柱の真下に歩いて来た雄人は足を止める。


「?……何だ今の声…」


雄人は後ろを振り返るが誰の姿もない。

気のせいだと思い再び歩き始めるが、地面を見て自分以外の影がもう一つある事に気付く。


「上か?」


空に顔を向けると、少女が目の前に落ちて上手く地面に着地して見せた。ちなみに少女はワンピースを着ていたので下に居た雄人には少女が身に付けている下着が丸見えだった。


「…………」

「…………」


少女は雄人に背中を向けたまま動かず、雄人は驚きのあまり硬直状態になっている。


(……空から子供が落ちて来た。……びっくりし過ぎて言葉出ねぇぞ。ってか何で空から?パンツ見えちまってたしどこから突っ込めばいいか分かんねーんだけど……)


頭の中で色々考える雄人だが、とりあえず少女に怪我がないか確認を取る事にした。


「おい大丈夫か?」


「……………ください……」


「?」


少女は小刻みに体を震わせ始める。

ぼそぼそと小さな声で何か言っているようだが、雄人は聞き取る事が出来ず首を傾げた。

すると少女は、顔を真っ赤にして涙目で雄人の方に振り向いた。


「責任とってください!」


「……は?」


雄人は困惑していた。突如上から落ちてきた少女に無事かどうかを確認したはずなのだが、少女は雄人にいきなり訳の分からない事を言い出したのだ。


「お前怪我の方はなん「責任とってください!」リピート!?」


言葉を遮る程の勢いで雄人に迫る少女。

少女の伸長は雄人に比べかなり低い為、自然に上目遣いになる。涙目+上目遣い+顔真っ赤により生み出された破壊力抜群の仕草をの当たりにする雄人だが、


(昔の光に似てるな…)


その少女の姿を見て思わず笑ってしまう。


「何笑ってるんですか!?……もしかしてパンツですか?私のパンツで……おもいだしわらい?…ってやつですか!?」


「見えたことに気付いてたんか。つーか声でけーよ少し落ち着け。」


「ひゃっ!……~~///」


興奮している少女に対し頭を撫でる雄人。少女は少しずつ落ち着きを取り戻し、今度はふにゃりとしただらしない表情になった。


「おぉ、光にやった時と同じ反応。ますます似てるなお前」


「何あたま撫でてるんですかぁ。責任とってくださいよぉ」


「まだ言うのかそれ」


撫でられているのが気持ちいいのか、目を細めてうっとりしている少女。

少女の頭から手を離すと、少女は名残惜しそうな目で雄人を見つめた。

とりあえず雄人は今一番疑問に思っている事を口に出した。


「それよりお前足大丈夫なのかよ?結構勢いよく落ちてきたみたいだけど。ってかどこから落ちてきたんだ?」


すると少女は空の方に手を上げ指差した。


「まさか空から降ってきたとか言うんじゃねーだろうな?」


「違いますよ。この電柱の上から飛び降りたんです。後、私の足は大丈夫です!私身体能力高いので!」


どや顔で胸を張って言い放つ少女の様子を見て雄人は安心した。


「そっかそっか、そりゃぁ良かった。けど一応病院で見てもらった方がいいぞ、骨にひび入ってるかもしんねーし。そんじゃ俺はこれで…」


雄人は少女の横を通り過ぎようとしたが少女に手を掴まれた。


「勝手に何事もなかったかのように行かないでください!責任とってください!」


「しつけーよ。ってかさっきから思ってたけど責任ってなんだよ」


「私のパンツを見た責任です」


「あーやっぱそっちか。しかも真顔でさらっと言ったな……逆にこっちが恥ずかしいぞ。」


なんの動揺もなく言える少女に対し、雄人は思わず目を反らす。


「………まあ事故とはいえ見たことには変わりないし、悪かったな。」


「分かればいいんですよ!」


少女はにんまりと笑顔になり満足げに頷く。


「じゃあ俺はこれで」


「何を………なちゅらる…?に行こうとしてるんですか。責任とってませんよ」


「言えないなら無理して言うなよ。意味は合ってるけど……で?何やってんのお前……」


自然な流れに乗ってこの場を立ち去ろうと思った雄人だったが、後ろから少女に両手でホールドされてしまう。


(胸当たってんぞって言いたいけど………言ったらまた騒ぎ出しそうだし、黙っておくか。……結構でかいな……)

「いい加減離れろ」


背中に抱きつく少女の胸の感触が伝わり、雄人は恥ずかしさと罪悪感の気持ちで一杯になった。

両手をはがそうとするが少女は離さないと言わんばかりに更に力を込める。


「ちょっ!痛いんだけど!!マジで離してくんね!?」


「嫌です!!離したら逃げるじゃないですか!絶対に離しません!!」


「逃げない逃げないから!!だから離せ!!」


「……分かりました」


少女は渋々両手を離す。雄人は少女の両手から抜け出すと二、三歩後ろに下がり距離をとった。


「逃げるのはなしですからね」


「……ああ、分かってる……」

(なんつー馬鹿力だよこいつ!子供が出せる力じゃあねえぞ!)


雄人は脇腹を押さえながら少女が飛び降りた電柱の方へ視線を移した。


(よく考えてみりゃ、…あんな高い場所から落ちて来て無傷で済むはずがない。なのにあいつは何ともなさそうに普通に俺と話してやがる!『身体能力が高い』だけじゃ説明つかねーぞ!)


今までの少女の行動を改めて考え直した雄人は、少女の異常さにようやく気付いた。


(面倒な事になる前にこいつから離れた方が良さそうだな。これ以上興奮させないようにしねえと)

「もう一度聞くけど、責任って俺は他に何すればいいんだ?」


「そうでした!……では、あなたには私のパンツを見た責任として"契約者"になってもらいます」


「…………ん?今なんて言った?」


「契約者ですよ。なってください、私の契約者に!」


「……………」


少女の謎の発言は、雄人の思考を混乱させるのに充分だった。


(なんだよ契約者って、ごっこ遊び的なやつなのか?つーかこいつの今までの行動とあの馬鹿力のこと考えると結構信憑性高くなっちまうんだけど。………確信を持てるとしたら、絶対に厄介事だってことだけだな。)


「さっきから黙ったままですね、何か言ってくださいよー」


「へ?ああそうだな。…ここじゃあれだし場所移すか」


「そうですね!」


にっこり微笑み両手をパン!と合わせ雄人の元に歩み寄る少女。

一つ一つの仕草が可愛く感じられると思うが、今の雄人にそんな事を考えている暇はなかった。


(早くこの子をどうにかしてかねえと、学校に遅刻しちまう)




午前七時五十分前――、通勤途中のサラリーマンや学校へ向かう生徒が行きう中、雄人と少女は手を繋いで町中を歩いていた。


「………そういや名前言ってなかったな。俺は朱夜 雄人、お前は?」


「ティナ・アストリアです」


「ふーん、じゃあティナでいいか」


「私は雄さんと呼びますねー、えへへ~」


「ところで、何で俺達は手を繋いで歩いてんだ?」


「だって雄さん、隙あらば逃げるじゃないですか。」


少女もとい、ティナが雄人と手を繋ぐ理由は、雄人を逃がさない為である。しかし、それは周りの人々から注目を浴びる事になり、雄人も恥ずかしく思っていた。


「ちくしょー、さっきからこんなんばっかだな……」


空いている片方の手で自分の顔を押さえなげく雄人。

ティナはその様子を見て手を離した。


「どうした?」


「すみません。さすがに迷惑でしたよね……あなたに会えたことが嬉しくてつい浮かれてしまいました……」


「………それってどういう……」


雄人は話を途中でやめ、ある建物を視線の先に見つけた。


「なあ、お前ってここらへんに住んでるの?」


「……いいえ…」


「……父さ……パパかママは?どこにいるのか分かるか?」


「……知りません。」


質問をすると、ティナは悲しげな表情になり下に俯いた。


「なるほどな。……ちょっとついて来い。」


「……はい」


雄人は深刻なおもむきでティナをある建物の方へ連れて行く。

すると、その建物からは一人の男性が出てきて雄人達に睨みをかせた。


「ひっ、ゆ……雄さん?あの人こっち見てます!」


「そうだな」


雄人はその男性の元へ行くき、目の前で立ち止まり、


「……すんません、この子迷子みたいなんすけど。」


と告げた。

雄人が向かったその先は交番であり、雄人が今話している男性は青い制服を着た警察官だった。


「迷子?……」


警察官は雄人の後ろで怯えているティナを見ると、再び雄人の方へ視線を戻した。


「お前まさか、この子を拐って来たんじゃないだろうな?」


「んなわけないでしょ。大体誘拐した子をわざわざ警察につき出す馬鹿がどこにいるっていうんすか?」


「ほーん、『今回』は違うと、そういう訳だな。」


「あのしんさん、今回も何も一回もやったことなんかないっすからね?」


「冗談冗談!」


雄人は自身の疑いを全力否定すると、警察官は笑いながら雄人の背中をバシバシと叩いた。


「……それで話戻しますけど、進さんにこの子のこと頼んでもいいっすか?親が今どこにいるのか分からないみたいなんで探してもらいたいんすけど…」


「ここらへんじゃ見ない顔だな。金髪だし外国人か……」


進は雄人の後ろに隠れているティナに目線を合わせるようにしゃがむと、顎に手を当て考え始めた。


「………?」


「そうか!!」


ティナは首を傾げ、進は数秒程ティナを見ると何か閃いたかのように立ち上がる。


「俺の推理によれば、家族で外国から遠路遥々(えんろはるばる)この日本ジャパンにやって来て、観光している最中に親御さんとはぐれてしまい、途方に暮れていたところで雄人、お前がこの子を拾った……そういう訳だな!?うん、そうに違いない!」


ガッツポーズをとり、ティナの話を聞く前に一人で無理矢理納得してしまう進に対して、ティナはオドオドし、雄人はあきれていた。


「何一人で完結してるんすか。」


「ん?違うのか?」


「……そのことについてはこれからこいつに聞けばいいんじゃないっすか?」


そう言うと雄人はティナの頭を撫で始めた。


「………///」


ティナは頬を赤らめ、気持ち良さそうにしている。


「ティナ、悪いがここでお別れだ。後は進さんに任せとけば、きっとパパとママは見つかるぜ。」


「え………雄さん?」


キョトンとした表情になるティナ。


「それじゃ進さん、俺は学校に行くんで後のことはお願いします」


「おう任せろ。お前は"また"喧嘩なんかすんじゃねーぞ。学生なら学生らしく、しっかり勉学にはげんで来い!」


「分かってるっすよ。じゃあなティナ。」


「あ、雄さ…」


雄人はティナの頭から手を離し、ティナが何かを言おうとしたがそれを聞かずに、そそくさと交番を後にした。





■■■■■■■





(よーーし!自然な流れであの状況を打破したぜーー!)


交番を後にしてから約三分、雄人はティナから無事離れる事が出来て心の中で浮かれていた。


「進さんには悪いことしたかなー………そういや、ティナのやつ契約者なれとか言ってたっけ。……まあどうでもいいか」


ふとティナの言っていた事を思い出すが、すぐに考えるのをやめて学校に向かう事にした。

暫く歩いていると、パトカーのサイレンが聞こえてきた。


(なんかあったのか?)


サイレンは大きくなり、だんだん雄人に近付いていく。

パトカーは雄人の近くに止まり、中からは鬼の形相ぎょうそうをした進が出てきた。


「どうしたんすか進さ「どうしたもこうしたもねえ!!」………」


雄人のすぐ側で怒鳴り散らす進。気迫に押されて雄人はたじろぎ、進は続けて雄人に言う。


「この嬢ちゃんから話は聞かせてもらった………お前と嬢ちゃんは生き別れの兄妹だってことをなぁ!!」


「はぁ!?何を言っ「とぼけてんじゃねえ!」……」


迫り来る気迫に圧倒され言葉を失う雄人。

進はパトカーの元へ戻り後ろ座席のドアを開けた。そこには勿論ティナが座っていて、今にも泣きそうな顔で雄人を見つめていた。


「雄人の馬鹿野郎はきっちり捕まえたぜ!後は嬢ちゃんの好きにしな!」


「なっ!おいちょっとま「妹を警察につき出す野郎に拒否権はねえぜ!!」さっきから言ってることが無茶苦茶っすよ!?」


雄人と進が言い争ってる中、ティナがパトカーから下りて雄人の方へ歩み寄っていく。

雄人の前で立ち止まったかと思いきや、ティナの目からは涙がこぼれ始める。


「ひどいよお兄ちゃん、やっと会えたのに……私をまた置いてっちゃうなんて………!」


「おいいいお前まで何言ってくれてんだぁ!!」


「このおよんでまだ言いやがるか!!」



涙をぬぐうティナ。

雄人達の騒ぎ声により周りに人がどんどん集まってくる。


「と、とりあえずティナ!泣くのやめような!?俺が悪かったから!ごめん!」


周囲の視線を気にせずティナの頭を撫でてなだめる。


「ひぐっ……」


「雄人、家族を大事にしろよ。それはお前が一番知ってるはずだ。」


「…………」


進は急に真面目な顔付きになり雄人に言って聞かせる。

その言葉に重みを感じ、雄人は何も反論しなかった。


「この子の家族は無事な見つかった訳だし、俺はこれで失礼するぜ。後はお前に任せる。」


「…………うっす、すんませんした。」


進はパトカーに乗り込み、この場を後にする。

周囲に集まっていた人々も去っていき、雄人とティナだけになった。


「……………」

「…………グスッ……」


横目でティナの方を見ると涙は既に流れ終わり、目の下は赤くなっていた。

ポケットに入れてあるスマホを取り出し時刻を確認すると、八時を過ぎていた。


(遅刻確定か……しゃーねえ)


今から学校に行っても遅刻すると思った雄人はティナの方へ手を差


「お前が良ければだけど、………一緒に来るか?」


「………学校というところですか?」


「いや俺の家。今から行っても間に合わないしな。」


「うぅ、……ごめんなさい。」


「謝んなよ。俺が悪いんだし……それでどうすんだ?」


「行きます行きます!」


雄人の手を慌てて両手で掴むティナ。

ティナ手を引いて、来た道を引き返す。


「……ところで、何で進さんに俺とお前が兄妹だって嘘をついたんだ?」


「…………私は雄さんに会いにこの町に来ました。せっかく会えたのに、雄さんったら、……酷いんですもん……」


頬を膨らませジト目で雄人を見る。


「進さん、…ですよね?あの人には嘘をついてごめんなさいと思ってますよ。でも私の目的は雄さんなんですから、今は他に構ってる余裕はないんです。」


「その目的ってのはさっき言ってた俺に契約者になれってやつか?」


「はい!はい!そうですそうです!!なってくれますか!?」


「だから落ち着けってーの。」


食い気味に迫ってくるティナを落ち着かせる為、頭を撫でる。


「ふにゃぁ………、ハッ、いきなりはやめてくださいびっくりします!やり直しです!」


雄人から一歩下がると、髪を整えてから雄人の方に頭を出す。


「そんなことよりもよー、契約者って何なんだよ。遊びとかじゃねーのかよ?」


「むぅ、……遊びなんかではありません!これは戦いです!」


「あーハイハイ」


ティナの言動をスルーして家に向かう雄人。いい加減な返事にティナは再び頬を膨らませ、小走りで雄人の後ろをついていく。


「その言い方、私の話を信じてませんね?」


「突拍子もないしな。具体的な説明ないと全然分かんねーよ」


「分かりました!雄さんの家に着いたら説明しますのでその時はちゃんと聞いてください。」


「それで頼むわ。……そういやお前ってさ、……その…こういう言い方するのは失礼だと思うんだが……」


頬を掻きながら言いにくそうな口調で話す雄人。


「何ですか?」


「………人間なのか?」


雄人が聞きたかった事、それは最初から思っていた疑問であった。言うか言わないか迷っていたが、これからティナの話を聞く以上その事について聞かない訳にはいかなかった。


「……いやですね~、今は人間に決まっているじゃないですか~。」


「そ、そうだよな。……ん?………」


ティナの言葉に少し違和感を感じた雄人だったが、気にしない事にした。

話をしている内に雄人の家に着いた。


「着いたぜ、ここが俺んちだ。」


「ほえ~、ここが雄さんの家ですか……」


「話す前にお前少し汚れてるみたいだし風呂入った方がいいんじゃねーの?服は妹のヤツ用意しとくからよ。」


雄人がそう言うとティナは雄人が言った事にピクンと反応した。


「……妹さん、居たんですか?」


「ん?おぉ。親は今海外にいて俺と妹の光だけで住んでる。」


「………そうですか。」


そう言うとティナは風呂場に向かった。


「お前、風呂場分かるのか?」


「えっ!?あ、あぁ~。見た感じで何となくですよ!アハハ~」


ティナはごまかすような仕草を見せるが、雄人は気にせず二階へ行く。



―――――――



ティナが風呂から上がってリビングに行くと、雄人は椅子に座って電話をしていた。


「先生にに伝えておいてくれ……ああ、じゃあな研一」


電話を切り、スマホを机の上に置くとティナが目を輝かせてそれを見ていた。


「雄さん雄さん!それって何て言うものなんですか?」


「知らねーの?『スマートフォン』っていう携帯電話だよ。これで遠くの人と話せたり、位置情報を確認することができる。」


「へぇ~、すごいですね!」


「まあそうだな、…ほら、椅子に座ってこれでも飲んどけ。」


雄人は関心を抱くティナに椅子に座るように促すと、先にキッチンで入れたココアを出した。


「ありがとうございます!では、いただきます………フーッ……あちゃ…」


カップを手に取り息を吹きかけ冷ますティナだったが、最初に飲んだ時まだ熱かったのか口からカップを遠ざけた。


「わりーまだ熱かったか」


「いいえ、雄さんのせいじゃありません。もう一度飲みます………フーッ、フーッ…………」


今度は念入りに息を吹きかけ熱を冷まし、ちびりちびりと口に含んだ。

すると、口の中は甘い味がほんのりと広がっていき、ティナは熱さなど忘れてごくごくとココアを飲み始めた。


「どうだ?」


「甘くてとってもおいしいです!心がぽかぽかします!」


雄人が味の感想を求めるとティナは無邪気な笑顔で答えた。


「そうか、喜んでくれて良かったよ」


ココアを飲み終え、雄人は二つのカップを片付けた後椅子に座ってティナに言う。


「…本題に入ろうぜ。契約者ってのは一体何なんだ?」


「はい、では初めから説明します。…実は私、人間ではないんです。簡単に言えば魔物なんです。」


「……ん?お前さっき人間って言ってなかったっけ?」


「はい人間ですよ。……今は」


「どっちだよ、つーか魔物って……そんな漫画じゃあねーし」


「信じてませんね。」


いきなり魔物だの契約者だの言われて普通に考えて信じられる訳がない。そんな事を思っていると、ティナは顔をしかめながら雄人に言った。


「そんな事信じろって言われてもな……俺から見ればお前はただの子供にしか見えないぞ。」


「むぅ。…分かりました、今その証拠を見せますので私の魔物の姿をか……かつもく?……してください」


「わざわざ難しく言おうとしなくていいから。つまり見てろってことだろ。分かった、やってみろよ」


雄人はティナの事をじーっと見始めた。


「……そんなに見つめられると照れますね///」


「お前が見ろって言ったんだろ!?」


「こほん、では、…いきます。」


ほんの一瞬の出来事だった。ティナの頭の上からはふんわりとした大きな耳、大きく丸々とした尻尾が金色の粒子を散らしながらえてきた。


「!?…すげー!耳と尻尾が生えてんじゃねーか!何か狐っぽいなその形!」


「フフン!どうですか?これで信じてくれましたか?ちなみにこれは正真正銘、狐の耳と尻尾ですよ!」


雄人は驚きを隠せず、ティナは尻尾をブンブン振りながら胸を張ってどや顔を決めている。


「なぁ!ちょっと触って見てもいいか!?」


「!…す、すごいグイグイきますね。良いですよ」


「それじゃ、耳から………すげー!このさわり心地、本物みたいじゃあねーか!」


雄人が興味津々になって耳を触っているとティナの息が段々荒くなってきた。


「…ん!……本物…みたい…じゃ……なくて、…あん………本物……なんですよ~!///」


ティナの様子に気づいて雄人は触るのをめる。


「……おい大丈夫かよ?めっちゃ顔赤いじゃねーか。」


「ハァ、…ハァ///いいえ、…問題、ないです。次は、尻尾…ですね///」


「もういいよ。なんつーか、すげー罪悪感が…」

「いいえ!触ってください!雄さんまだ信じてなさそうなので!」


「信じる、信じるよ。その様子見て本物だって分かったしよぉ」


「お願いします!このままじゃ私の気がおさまらないので!」


「お前も人のこと言えないくらいグイグイ来てるぞ……じゃあ、少しだけ。」


そう言って雄人はティナの尻尾を触って見た。


「んぁ!……や、…ん!…ハァ……///」


これ以上触っていたらいろんな意味でまずいと思った雄人はすぐに手を離した。


「…なんかわりーな。お前が魔物だって事はよく分かった。うん」


雄人は罪悪感を感じながらも、ティナが魔物だということを理解した。


「い…いぇ、…分かって、…いただければ……いい、です///…すみません、取り乱してしまって。…その、初めてだったんで///」


「だから言い方よ!誤解招きそうな感じで言わんでくんねーか!?」


頬を真っ赤に染め、甘い声で言ってくるティナに対し、雄人も恥ずかしくなった。


「そうですね。…実はこちらの世界に私以外にも魔物がたくさん居るんです。その理由はですね、魔物同士で戦って最後まで生き残った魔物の願いを一つだけ叶えてくれるみたいなんです。」

「生き残るって…お前ら魔物が殺し合いしてるのかよ。命を懸けて!?」

「簡単に言えばそうですね。」


そう言うと雄人は怒り気味でティナに言った。


「簡単な訳がねぇだろ!?魔物だろうがなんだろーが皆命を持ってるんだぞ!!その願いの為にてめーらは殺し合いなんかやってんのかよ!?」


するとティナは急に青ざめて小刻みに震え始めた。

「私だって!…私だって、本当は、戦いたくなんかないんです!!怖いんです!…でも、殺らなきゃこっちが殺られるんですよ!?」

「!…そうだな。わりーないきなり怒鳴って…」

「いいえ、私も取り乱してすみませんでした。」


ティナは落ち着き、話を続けた。


「私、魔物に戻れば目と耳が凄くよくなるんです。普段は人間に化けているので魔物の時よりは良くないんですけど。それでこの前、偶然魔物の気配を感じたので、遠くから見てみたんです。そしたら、森の中で二体の魔物が戦っているのが分かりました。どちらの魔物も傷だらけで、今にも死にそうな感じで。結果は相討ちでした。そして、その二体の魔物は、…消えました。」


「……消える?どういう事だよ?」

「文字通りです。命が尽きた魔物は、この世界から消えるんです。…私は、それが怖くて、怖くて怖くて!……だから、契約者を探していたんです。」


「まさかその契約者ってのは……」


「はい、私と一緒に魔物と戦ってください!」


「マジかよ。…俺普通の人間なんだけど。」


「私と契約さえすれば私の能力が雄さんに与えられます。つまり、雄さんは私の異能力使いたい放題です。」


「もう少し別の言い方無いのか。…ってか他の魔物達も人間の契約者を探したりしてんのか?」


「戦い方は色々あるんです。私のように契約者を探している魔物もいれば、魔物同士で組むとか、魔物一体だけで戦うというやり方があります。」


「で、お前は契約者組って訳な?」


「はい、一人は嫌なので。」


「だったら魔物同士で組むやり方はどうなんだよ?人間と組むよりそっちの方が強いんじゃねーの?」


「考えてみてください。魔物同士で組んでも、最終的にはどちらかが消えなければいけないんですよ?それに、いつ裏切られるかも分からないですし。」


「なるほどな。でも何で俺なんだ?お前は何で俺にこだわるんだよ?」


雄人は疑問に思っていた事を口に出し、ティナに言った。

するとティナは顔を赤くしながら雄人に言った。


「……その、波長ですかね。雄さんには見えないと思うんですけど、私と雄さんの波長がピッタリ一致しているんです///契約は誰でも良いという訳ではなく、その波長が合ってなければ契約はできないんです。」


「へぇー、そういうもんなのか…。」


「それで、…どうですか?…私と一緒に戦ってくれませんか?」


すると雄人は下を向いて黙りこんだ。


「……(やっぱりだめだよね。)」

ティナが諦めかけた瞬間、雄人はティナに言った。


「いいぜ、組んでやるよ!お前と!」


「えっ!?…いいんですか?命懸けの戦いになるんですよ!?」


「んだよ。あんだけしつこく頼んできたくせに今更引くのかよ?組むって言ってんだからいいだろ?」


「でも、……」


「それにお前の事、ほっとけねーし。」


「雄さん……(やっぱり優しいです)、ありがとうございます。ではこれから………!!」


契約を始めようとした時、ティナは何かを感知した。

「どうした!?」



「………魔物が近づいて来ています!!」

















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