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金色妖狐のティナ  作者: KAITO
第二章 魔物の組織
21/31

憤怒の焔(レイジ・フレイム)





「敦、コルセラは今どこにいるんだ?」



「…………」



敦は下を向き何も答えず、ただじっと立ち尽くしたままだ。

すると敦は、雄人の方を向き笑顔を見せた。


「コルセラ?何だよそれ、名前かなんかか?いきなりそんなこと言われても分かる訳ないだろ?」


「………嘘はもうやめろ。知ってんだよ、お前がコルセラの仲間で、ティナを狙ってるってことも……全部……」




「……………はぁ……」


敦は観念したかのように溜め息をついて頭を掻いた。


「どこ情報だよそれ、今まで上手くバレずにやってきたのに……」


「……いいから教えろ。あの糞野郎はどこなんだよ」


「居場所を教えたら、俺からの頼みも聞いてくれんのかよ」


「嫌だ」


「……はぁ!?」


雄人は腰に手を当てきっぱり断った。

敦は大きく口を開けて雄人を見ている。


「俺がお前の頼みだけ聞いて、お前は俺の頼みを聞いてくれねえってのか!?」


「お前の頼みってのは、『ティナを渡せ』……なんだろ?」


「!……」


雄人の一言で敦は口ごもった。


「お前にティナを渡せば、コルセラのところに連れて行くんだろ?そうだとしたら、いくらお前でもその頼みだけは絶対に聞けない。」



「…………っ……」


敦は拳を握り、悔しそうに歯を食いしばる。


「……契約者が、…雄人じゃなかったら……」


敦は雄人に早足で近づき、雄人の胸ぐらを掴んだ。


「雄人が契約者じゃあなかったらよお!!こんな思いしなずに済んだんだ!!お前や研意外の契約者なら、女だろうが子供だろうが、俺は何も気にせずに倒せた!」


「………」

雄人は黙ったまま、敦の話を聞いていた。


「なぁ頼むよ雄人。ティナちゃんを渡してくれ。できることなら、俺はお前と戦いたくない!ティナちゃんとの契約を切ってくれ。そしたらまた、俺と研とお前でいつも通りの日常に戻れるんだ!楽しく高校生活送ろうぜ……」


敦は胸に秘めていた思いを雄人にぶつけた。

雄人の胸ぐらを掴んだ両手は、小刻みに震えて、敦の声量もだんだん小さくなっていく。



「……敦……」

雄人は敦の両手をゆっくり離し、



「悪い。………約束したんだ。俺はティナとこの先もずっと戦っていく。その上でコルセラは、どうしてもぶちのめさねえといけない野郎なんだ!あの人殺しをこの世界で生かしておく訳にはいかねえんだよ!!」



雄人も自分の思いを敦にはっきり伝えた。


「…………」


敦は力が抜けたかのように両手を下ろした。


「……そうかよ。…雄人は、俺と……」


敦は強く拳を握り、雄人の腹部にボディブローを入れた。

雄人はよろめいて数歩後ろに下がった。

「がはっ………敦てめえ!」




「戦うことを選んだんだろ?ならそれしかねえよなぁ雄人!!」


敦は雄人に向かって突進していき、雄人は急いで避けた。


「敦!俺もお前とは戦いたくねえ!!俺が今戦う相手はコルセラなんだよ!」


体勢をすぐに立て直し、敦は雄人に殴りかかる。

拳のラッシュを雄人は紙一重でかわし続け、敦の拳を受け止めた。


「そのコルセラをお前はこの間倒せなかったんだろ!!」




ゴキッッッ!!!

敦は空いてる片方の拳で雄人の頬を思い切り殴った。

雄人は後方に勢いよく吹き飛ぶが、大きなフェンスによって屋上から落ちることはまぬがれた。



「……次は、絶対に野郎を倒してみせる。だから……場所を教えろよ!!」


「…ティナちゃんの力を使っても勝てなかったんならもう無理だ。」


そう言って敦は雄人の胸ぐらを掴み、顔面を殴った。


「っ!!!」


雄人はフェンスにもたれかかる状態になるが、倒れはしない。

口の中を切り、血が流れ始めた。


「ほらどうした、……俺に能力を見せてみろ!!」




ゴスッ…!!ゴスッ…!!

雄人は敦の拳を二発、三発と受け続け、鈍い音だけが屋上で響いていた。

敦は最後に拳を力一杯握りしめ、雄人を殴り飛ばす。

フェンスに背中を打ち付け倒れ込む。

雄人の顔はあざだらけになり、鼻血や吐血などで顔が血まみれになりつつあった。

無論、敦の拳にも血が付着して、血がポタポタと地面に落ちていた。



「……………なんで、………だよ。」


口を開いたのは敦だった。


「なんでお前は攻撃してこねえんだよ!!俺はお前の敵で、いざとなったらティナちゃんだって殺すぞ俺はよお!!ティナちゃんとの約束があるんだろ!?だったら来いよ!!俺を止めろよ!倒せよ!俺なんかお前の目には写っちゃいねえってことかよ!!!」


敦は大声で自分の思いを叫び、


「俺達の望む平和な日常は戻って来ねえんだよ。……だからもう終わりでいい。……俺と…お前らの関係……。」


涙を流して地面に膝まずいた。


「この広い世界で、なんでお前が契約者に選ばれちまったんだ。なんで俺とお前が敵対しなきゃいけないんだ。なんで、……こんなにも苦しく辛いんだ……」


敦は感情を抑えられずにはいられなかった。

いつの間にか自分の抱いた気持ちを雄人にぶちまけていた。


「……敦……」


雄人はフェンスに手を掛けてふらつきながらも立ち上がろうとしていた。




「俺にお前がコルセラと繋がりを持っているって教えてくれたのは、……研一だよ。」



「!!?………嘘、…だろ?」



今日の放課後、敦が雄人を呼ぶこと、コルセラと内通していることを雄人に教えたのは研一だった。



「あいつ、ずっと俺を騙してたのか。……くそっ!!」


敦はコンクリートの地面を思い切り叩いた。


「騙してなんかいねえ。……研一はお前を助けたかっただけだ」


「……助ける?」


「あいつは言ってた。『敦は僕の古くからの友達だから、絶対に救う』ってよ。」


雄人は敦のところまで行き、視線を同じ位置にする為にしゃがみこんだ。


「俺もお前を助けたい。だからよお、なんでコルセラとつるんでんのか、今の野郎の居場所はどこか…教えてくれ。」



敦はうつむいて、


「……………教えねえ。」


一言そう呟き、敦は雄人から即座に離れた。


「敦ぃ!」


「うるせぇ!!もう遅いんだよ!!」



ボォオオオ!!!

敦の両手から真っ赤な炎が燃え上がるように発動した。



(研一が言ってた通りだ、敦も契約者だった!!)


「"憤怒レイジフレイム"、全てを焼き付くす炎だ。これで出さざるを得ないだろ。……さあ出せよ、…お前の、"金色ゴールドフレイム"をよお!!」


「くそっ!この分からず屋が!!」


雄人も両手に"金色の炎"を発動させて、攻撃の姿勢になった。


「行くぞ雄人!!」


「どこからでも来やがれ!!バカ野郎!!」


敦は右腕を後ろに下げて魔力を一点に集中させる。

すると、"憤怒の焔"は形を変えて、大きな槍へと変化した。



「"憤怒グングニル"!!」



敦は雄人目掛けて槍へと変化した炎を放った。


「真っ直ぐしか飛んでこないんならよー、避けるのは簡単だぜ敦!!」


雄人は軽々と"憤怒の槍"をかわした。


バギャァッッ!!!

"憤怒の槍"はフェンスの金網を豪快に突き破って飛んでいく。


「動きは一直線の単調だが威力は凄まじいってことか。…お前本気で俺を殺す気かよ!!」


雄人の言葉を無視して敦は勝手に語り出した。


「知ってるか雄人。…『グングニル』ってのは北米神話の主神オーディーンの持つ槍の名前だ。それは敵を必ず射止める槍、勝利をもたらす槍なんだぜ!」


「……まさか…!」


雄人は後ろを振り向いた。




バギャァンッッ!!


"憤怒の槍"はまたフェンスの金網を突き抜けて雄人の元へと飛んで戻って来た。


「くそぉぉっ!!」


雄人は右手と左手に魔力を溜め、"憤怒の槍"を受け止めた。


「!?止めるのか…"グングニル"を!!」


「ぐぎぎぎぎぎっ」


"憤怒の槍"を両手で必死に押さえて力ずくで止めようとしている。

しかし、勢いを止める事はできず雄人は後退していく。


「後ろががら空きだぜ雄人!!」


敦は左手で真っ赤に燃え上がる火の玉を創りだし、雄人の背中に撃ち込んだ。

雄人の背中に火が点いて制服が燃え始めた。


「あつっ!!このっ……野郎!!」


雄人は全身にも"金色の炎"を纏わせ、敦の放った火の玉を自分の能力"金色の炎"で吸収した。


「「!!?」」


雄人と敦は同時に驚いた。


「って何で雄人まで驚いてんだよ!つか俺の能力を吸収しただと!?」


無意識の内に雄人は敦の能力を自分の体へ取り込んでいた。


「なる……ほどなぁ!どこまでも『イメージ』ってことか!!」


"金色の炎"は"憤怒の槍"を包み込み、雄人の掌へと消えていった。


「嘘だろ?…"グングニル"まで吸収しやがった……」


「はぁ…はぁ、……どうよ敦!お前の能力俺には通用しねえぜ!!」


雄人は両手に炎を灯して敦に飛びかかる。

右手にグッと力を入れて当てようとするが敦はそれを受け止めた。


「雄人にも出来たんだ!俺にも出来るはず……」



敦は"憤怒の焔"を発動させて雄人の能力を自分の中へ取り込もうとするが雄人の"金色の炎"を取り込む事が出来ず、


「なっ!?」

(俺の能力じゃあ炎属性の能力は吸収できないのか!!)


「おぉらあ!!」


バキッ!!――と鈍い音がした。

雄人が残った左手で敦の頬を殴った音だった。


「ごふぁっ!!?」


一、二回転しながら敦は吹き飛ばされた。


「…………くそ」


雄人は敦を殴った左手を見て眉をひそめる。


「最悪な気分だ……俺は………」


体を起こし、敦は口から流れる血を袖でぬぐった。


「敦、俺を殴った時、…お前はどんな気分だった…?」


「……………」


敦は顔を下に向けたまま静かに立ち、




「さっきも言ったはずだ。お前は、俺の敵、倒すべき相手なんだ!そして、………研も……」


「………」


「コルセラとの繋がりが知ってたんなら、…あいつも契約者なんだろ?…お前を倒し、ティナちゃんをコルセラのところに連れて行ったら、次は研を倒す。友達なんかもういらねえ。てめえらを俺の手で倒す!!」



決意を変えない敦に対し、雄人の中に怒りの感情が芽生え始める。


「……バカ…野郎!!何で分からねえんだ!!あいつはお前のことを本当に救いたいって思ってんだぞ!!お前がその気持ちに応えなくてどうすんだよ!!」


「うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ!!誰が『俺』を救ってくれなんて言った!?…俺のことなんかどうでもいいんだ!救ってほしいのは俺じゃあねえんだよぉ!!!」


敦は右手のみに魔力を集め、右手は真っ赤な炎に包まれて籠手こての形に変化した。



「"憤怒ガント籠手レット"!!」



敦が右手に装備させた"憤怒の籠手"は荒々しく燃え盛っていた。



「もう手遅れなのかよ!!敦いぃ!!」


雄人は両手を強く握り、その握った拳と拳をガツンと合わせた。

そして、右手のみに"金色の炎"を纏わせ、後ろへと大きく振りかぶった。



「"スピリット・バーン"!!」




雄人と敦は睨み合って、






「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」」




雄叫びをあげながら相手に向かって走り出した。



ドゴオオオオオオオオンッッ!!!!!


"金色の炎"と"憤怒の焔"が激突して二人は金色と赤色の炎が混ざりあった爆炎に包まれた。




―――――――



その頃。

ティナは雄人の元へ行こうと準備をしていた。


(二つの大きな魔力が衝突、一つは私の魔力、…恐らく雄さんが戦っている!)



玄関のドアを開けて、学校の方へ走って向かおうとすると数十メートル先からこちらに向かって歩いてくる少女が一人いた。


「!」


ティナは足を止めた。

少女もティナの近くまで来ると足を止めて、


「………まさか、あなたが標的だったなんてね……」


冷めた声でティナに語りかける。



「……やっぱり、…あの時かすかに感じ取った魔力はあなただったんですね………すみれさん」



ティナの前に立ち塞がった少女はすみれだった。

先日、雄人達と買い物に行った時、その先で偶然真結とすみれに出会いティナは挨拶をした。

そして名前を名乗りあった後、ティナとすみれはしばらく見つめ合っていた。その時既に二人は互いの魔力を感じ取っていたのだ。



「いつか私を倒しに来るかもと思っていました。…ですがこんなに早く来るとは………」


「倒す?……違うわ。『あなたを連れて来い』って、ある魔物から指示があったの。抵抗さえしなければ私も手荒な真似はしないわ。」


「……嫌です。私は今急いでるんです。邪魔しないでください。」


「……そう、なら殺して連れて行くしかないわね。覚悟しなさい。」


すみれがティナに向けて左手を出すと、



「ちょっと待って」



何処からともなく声がした。



「……誰?」


すみれは辺りを見回すが、ティナ以外には誰もいない。

ティナもキョロキョロと辺りを見るが、声の主を見つける事ができずにいた。



「ここだよ、ここ」




「「!?」」




フードを被った少年がティナとすみれの目の前に居た。

身長はティナより少し高く、童顔の少年だ。

二人は驚いて、すみれはフードの少年に指をさしてこう言った。


「あなたいつの間に目の前まで来たのよ!?」


(違う!目の前まで来たのではなく目の前にいきなり現れた!!)

ティナが冷静に分析していると、再び少年が話し始めた。


「悪いんだけどお姉さん、この子を連れていくのはよしてくれない?そっちの組織にこの子を渡す訳にはいかないんだよね」


「!?……あなたどこまで知ってるのよ…」


「さあ、どこまで知ってると思う?」


「教えなさい!あなたも魔物なんでしょ!?」




「……レオン。それ以上喋らない」


また一人、月丘高校の制服を着た少年がティナ達の元に来た。


「…あなた、…あいつの友達の……」



ティナ達の前に現れたのは、研一だった。



「遅いケンイチ。後少しでバトル始まるとこだった。」


「これでも結構急いで来たんだ。間に合ったし、特に問題はない。」


「研一さん、あなたまさか、…契約者……なんですか?」

ティナは驚愕の表情を浮かべて研一に聞いた。


「うん。ごめんティナちゃん……でも安心して。僕とレオンは敵じゃあない。雄人とティナちゃんの味方だから」


研一は微笑みながらティナに言った。





「……さあ、水風さん。あなたに聞きたいことが沢山ある。話し合いするか、戦うか……選んで。」





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