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金色妖狐のティナ  作者: KAITO
第一章 ティナとの出会い
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「お前、嘘つきだな」


「…………はぁ?」


雄人は少女に向けて一言、「嘘つき」と言った。

この一言に少女は眉をひそめる。


「いきなり何言ってるの?私がいつあなたに嘘をついたって言うの?訳の分からない事を言わないでよ」


「俺にじゃあねえ、アイツにだよ。」


「……」


「ティナに止めを刺そうとした時、お前はさよならって言ったよな。後半の方は聞こえなかったけどよお」


「…だからなんだっていうの?これから殺す相手に最後のお別れくらいしてもおかしくない…」


「悲しそうだったぞ」


「!………」


雄人に言われた瞬間、少女は体をピクンと反応させる。

少女は気を紛らわすかのように雄人に反発した。


「うるさいなぁー、もういいよ!簡単に殺してあげようかと思ったけどやめた!!ティナのように苦しめてあげるよ、お兄ちゃん!!」


そう言うと少女は雄人を見つめ始めた。

少女が何かを仕掛けてくると思い、雄人は戦闘体勢に入り、少女から目を離さないでいた。


「"闇の法律の世界"!!」


「!?」


ティナの時と同様に、雄人も少女の能力"闇の法律の世界"に引き込まれてしまった。


「…こいつはティナがやられた技、いや、能力か!?」


「来なよお兄ちゃん、殺してあげるから!!」


少女は雄人に攻撃を仕掛けてこさせようと挑発する。雄人はその挑発にのってしまった。


「殺れるもんなら殺ってみろ!"金色の炎"!!」


両手に炎を纏い、雄人は少女に向かっていく。

そして黒い影の剣が出現して雄人の両手を突き刺した。

纏っていた炎も消えてしまい、雄人は激しい痛みの感覚に襲われていた。


「ぐぁっ!!!…っっっんだこれ!?」


「アハッ!やった~!!お兄ちゃんも引っ掛かったぁ!!」


「く…そぉ!」


少女はぴょんぴょんと跳ねて喜び、雄人は両手の痛みに耐えきれず膝まずいてしまった。


「"闇の法律の世界"は、私に攻撃をしようする相手に幻覚を見せて、精神的な痛みを与えるんだ~!だから、今お兄ちゃんが味わってるのは本物の痛み、つまり物理的な痛みじゃないんだよー!ティナもお兄ちゃんと同じように引っ掛かってくれて、私は嬉しいな!」


「へぇ~…なるほどなぁ!…っ!!」


雄人は強がってはいるものの、痛みという感覚を感じているはずだ。


「人間なのにまだ意識保っているなんてすごいね~!…でも、いつまでもつかな~?」


少女は両手を広げて無数の黒い影の剣を空中に創り出した。


「さっきティナに当てられなかった分、お兄ちゃんが全部受け止めてね!」


「………」


この絶望の状況で雄人は下を向いたまま黙っている。


「無視は嫌だよお兄ちゃん、ちゃんと悲鳴で返事してよ!!」


少女は雄人に目掛けて無数の黒い影の剣を発射させた。

すると雄人は顔を上げ、黒い影の剣に突っ込んでいく。


「!…もしかしてあまりの痛さに血迷っちゃった?自ら精神を壊しにくるなんて!」


少女は動揺したが、すぐに平静になり、迎え撃つ体勢に入る。

雄人は足を止めず、少女に向かって走って行き、黒い影の剣が雄人の体中に突き刺さった。

その光景を目の当たりにして少女は思わず目をそらした。



「…ホントバカだねお兄ちゃん。自分から死ににくるなんて。」


雄人の方に視線を戻すと、少女は驚愕した。

体のあちこちに黒い影の剣が刺さっているにもかかわらず、雄人はまだ少女の方に向かって走ってきていた。


「嘘!?…何でまだ向かってきてるの!?」


「……」


雄人は無言のまま走って距離を詰めていく。

少女は焦りと恐怖を感じて、黒い影の剣を急いで創り出し、雄人に発射する。しかし、何本刺しても雄人は足を止めない。


「何で!何で何で何で何で何で!!」


そして、雄人は少女の目の前まで来て、右手を大きく振り上げた。瞬間、右手に黒い影の剣が追加で突き刺さったが雄人は何も感じていないように少女には見えた。少女は雄人の行動に反応してつい自分の頭を両手で押さえ、目を瞑ってしまう。


「ひっ!!……………?…あぅ!?」


攻撃が来ると少女は思っていたが、何も来ない。恐る恐る目を開けると、額にコツンと、凸ピンをくらった。


「お前のネタばらしのおかげで助かったぜ」


少女は額を押さえながら涙目で雄人を見た。

"闇の法律の世界"は解除され、元の空間に戻り、雄人は少女に話し始めた。


「安心しろ、本気で殺そうと思ってないやつを殺すつもりはさらさらねーから」


「何言ってるの?私は…お兄ちゃんもティナもみんな殺すよ!」


「いや、今のお前じゃ無理だな」


雄人は確信したかのように少女に言った。


「何で、…何でそんなことが言えるの?私の能力を見破ったっていうの?」


「まあ、お前がペラペラ喋ってくれたしな。お前の能力の発動条件は、五秒くらい相手の目を見なきゃいけない、そんなとこか」


「………っ」


少女は図星をつかれたかのような表情を浮かべた。

更に雄人は話し続けた。


「それにこの能力の弱点すぐに分かったぞ」


「!!……言ってみてよ」


「お前の能力の弱点は、目、つまり視覚だ。あの空間から出せる攻撃は全て本物じゃなくて幻覚。だったら目を閉じて刺さっていない事にすればいい、刺さっているのが見えちまうから恐いし痛いんだよ。」


「(そんな弱点があったなんて)……でも、おかしいよ。最初の黒い剣を二本とも両手に突き刺さって、その痛みをなかった事にしたっていうの?…人間のお兄ちゃんにそんな事出来るわけないじゃん!」


「そこんところは何とか気合いでのりきった」


「理由がアバウトすぎる!?」


さっきまで敵同士だった二人が今は普通に話している。


「なんか殺す気も失せちゃった。今回は見逃してあげるよ」


「それはこっちの台詞だ、まだ能力も使ってないのにお前に勝ったんだぜ?」


「うっ!うるさい!子供相手に大人げないよお兄ちゃん!」


「いきなり殺しにかかって来ておいて子供も大人も関係なくねーか?つかお前魔物だろーが!」


「…それもそうか、じゃ、私帰るねー」


「…っておい!最後に一つ聞かせろ!」


雄人は帰ろうとしている少女を引き止めた。


「…なぁにお兄ちゃん?」


「お前、ティナの何なんだ?あいつの事、どう思ってるんだよ」


すると少女は冷たい目付きに変わり、態度も豹変し雄人に言った。


「……ティナは全部忘れてるんだ、私の事も、自分の罪も。私はそれが許せない。やっと見つけたんだ。絶対に殺すから」


「………」


雄人は言葉を失った。それは少女の態度が豹変したことでも、殺意を身にしみて感じたことでもない。雄人には少女が辛そうに見えてしまった。


「…私からも一つ良い?」


「……ん?なんだ?」


「名前、聞かせてよ……お兄ちゃんの」




「ああ、俺は朱夜雄人」


「……私はクロナ、雄人お兄ちゃんもティナと一緒に殺してあげるからね!」


「笑顔でとんでもねえこと言ってんじゃねーよ」


少女こと、クロナは最後に一言告げて、闇となって消えた。

そして、雄人はティナの事で少し気がかりなことができた。





「…(考えても仕方ねえ)あいつが起きたら聞いてみるか」









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