プロローグ
――――痛い、身体中に痛みが走る。
激戦を繰り広げたであろう荒れ果てた地の真ん中に少年が一人、仰向けになって倒れている。辺りには誰もいない。戦いで起きた爆発の黒い煙が灰色の空へ昇っていく。
「っ、……ちくしょう。……がはっ」
少年は立ち上がろうとするが痛みに耐えきれず血反吐を吐きながら倒れてしまう。だが、少年は再び両手を地面につけた。
「……ぁ…あきらめ……られ…っかよ…」
口の中に鉄の味が広がる。手足が震える。ここで意識を失えば、もう何もかもが終わるような気がする。そんなことを思いながら、少年は必死に立ち上がろうとする。すると薄れゆく意識の中で誰かの叫ぶ声が聞こえるような気がした。
…ゆ……ん……ゆ…さん………雄さん!!
――聞こえる、間違いない。遠くで、遥か遠くで、別の世界で俺の名前を呼んでいる。それは幼さを残すような少女の声で、とても泣きじゃくっていて何度も繰り返して俺の名前を呼ぶ。
少年は少女の声に反応するかのように手足を動かし、一生懸命起き上がろうとする。
「……分かっ……てる………絶対……に…見捨てねぇよ!」
少年は決意をしたかのように身体中の痛みに耐えながらようやく立ち上がり、空を見上げた。灰色の空を少年は何かを見据えるかのように立ち尽くす。
「約束、……したもんな。」
すると、少年の右腕にある紋章が金色の光を纏って輝き始めた。それは、少女が少年に残した契約の紋章だった。金色の光はやがて炎へと変わり、少年の身体を包み込んだ。
「………待ってろよ、ティナ。お前を……」
必ず、救ける――。
強い意志を秘めて、少年は向かう。少女の元へと――。




