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アジサイ笑って、走って逃げた  作者: お休み中
第二章 ばらばらばらばらばら
6/40

 警察は、五分程で到着した。人数は二人。どうやら、聞くところによると、二人は交番勤務の様だ。

 その十分後に、パトカーが、三台到着した。それからまた少しして、数台。ぞろぞろと警察官が出てくる。樫木は、この様な光景は、小説やドラマではよく見ていたが、今まで警察は夜自転車で走っている時止められた時に接触した経験がなかった為、少し興奮を覚えた。だが、それは、同年代の人間と比べれば、微々たるものだっただろう。樫木は、なかなか感情を表に出さない。茶話矢と話す時だけは例外だが、それでも少ないだろう。生首を見ても、さほどの驚きはなかった。何故なら、人間も動物の一種だからだ。毎日自分達が食べているものも、生首だったり、体だったりする。それの、珍しいバージョンの様なものだと、生首を見た時、彼は冷静に分析した。茶話矢は、頻りに気持悪い気持ち悪いと漏らしていたが、そちらの方が、人間としてはデフォルトな反応だろう。自分は、いつからこんな人間になったのだろうか? 壊れたブリキ人形。狂った腕時計。白黒のデジタルカメラ。ひょっとして、自分の祖先は、そういった機械の類かもしれない。と、どうでもいい事を樫木は考えた。

()(さき)と申します」

 三崎は、そう言うと、警察手帳を取り出し、樫木と茶話矢に見せた。「いやあ、さぞかし驚かれた事だと思います。なんと申し上げたらいいのか」三崎は神妙な面持ちで言った。

 樫木と茶話矢は、ベンチから少し離れた場所にいた。つまり、店から少し離れた事になる。今は、二人とも、店の方向を向いている。三崎が生首を背にし、こちらを向いている。右手には、民家があり中の住民がなに事かと顔を出していた。その他にもパトカーが来てから、数人野次馬が来た。だが、テープやパトカーや人の波で制止している。よって、野次馬は茶話矢花屋店の近くにはいない。

「申し訳ないんですが」三崎は頭を下げる。「いつになるかは分かりませんが、しばらく店先を封鎖する事になると思います。おそらく、明日の朝には検査が終わると思うのですが」

「ああもう、気にせず捜査しちゃって下さい」茶話矢は右手にハンカチを持ち、口に当てていた。「そちらの方が気が楽です」

「恐れ入ります」三崎は、そう言うと、警察手帳とは別の黒い手帳を取り出した。「申し訳ないのですが、思い出す事にもなるでしょうし、あまりお話されたくはないと存じ上げますが、なに分、この様な事件ですので。はい」三崎は難しい顔をしながら言う。「遺体を発見した時の状況を、ただ今お聞きしてもよろしいですか?」

 茶話矢は黙って頷いた。

「先に申し上げておきますと、警察はなん度も、同じ事を聞かなければいけなくて」三崎は苦笑した。「ですので、どうか気を悪くなさらないで下さい」

 三崎は、少し横幅の広い、中年の男性だった。顎が少し出ている。髪は短く借り上げられている。背は少し低い。百六十五センチ程だろうか。ただ、少し筋肉質の様だ。顔は、お弁当箱の様にカクカクしている。どちらかというと、工事現場にいそうな人だな、と樫木は思った。

「あちらの坂から、生首が落ちてきたそうですね」三崎は頭を掻く。

「はい、そうです」

「最初見た時、なんだと思われましたか?」

「サッカーボールが落ちてきたものとばかり」茶話矢は続ける。「ここら辺は、子供が多いので、よくあるんです」

 その後も、三崎の質問に対し、茶話矢は詳細を話した。生首が落ちてきたスピードや、周りに誰かいなかったか、女性の顔に見覚えがなかったか、最近嫌がらせはなかったか、その他、時間、通路についた血は最初からあったか等、様々聞かれた。樫木はあまり聞かれなかった。君もそうかい? と尋ねられただけだ。高校の制服を着ているからだろうか。

「やはり、女性には見覚えがないですか」

「ええ」茶話矢は口をへの字に曲げる。

「あのー、よろしければでいいんですが、お二人は何故ここに?」

「近所のお友達です」茶話矢は後ろにいる樫木に掌を向ける。「今日はたまたま遊びに来てくれていたんです」

「よくある事ですか?」

「最近は、しょっちゅうですね」

「うーん」三崎は唸る。「あ、いえ、事件の事を考えていまして。犯人は、あなた達二人に、これを見せたかったんですかねえ? 何故わざわざ坂を転がしたのでしょうなあ?」

「あのー、刑事さん」樫木は右手を挙げる。

「なんだい?」三崎は微笑む。

「質問があるんですけど、いいですか?」

「ああいいよ」

「血はどこからついていたんですか? 目撃者はいたんですか?」 

「坂の、中頃、と言った方がいいかな」三崎は坂を見ながら首を傾げる。坂の上は、十人程の捜査官と、ライトで照らされている穴つきのコンクリート、そして一本の赤い線があった。「どうやら、犯人はそこから転がした様だね」

「血の跡がそこから始まっていたんですね」

「目撃者は」三崎はペンを持っている左手を口に当てる。「今のところいない。まあ、生首を持ち歩いていた分けではないんだろうけど、とにかく、その時間帯に、外に出ている付近住民はいなかった様だ。でも、ニュースを見て目撃者が出てくるかもしれないな。マスコミも、もうそろそろ来る頃合いだからね。この近くで、この前事件があったし」

「不思議ですね」樫木は、坂を見ながら呟いた。

「私には全部不思議だけど」茶話矢は項垂れた。

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