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アジサイ笑って、走って逃げた  作者: お休み中
第六章 ぬめり、きらり、どきり
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 夕張は、絶句した。

 この死体は、幾つあるのだろうか?

 一、

 二、

 三、

 五、

 十、

 いや、

 三十程だろうか?

 死体は、まるでサーフボードの様に壁に立てかけられていた。

 正確には死体ではない。

 白骨。

 綺麗に並んでいる。

 夕張は、吐き気がしたが、

 大事な現場で吐く分けにはいかない。

 しかし、なんだこれは?

 顔。

 全部違う顔。

 少し視点を上へと移す。

 壁は、黒かった。

 赤みがかった、茶色といった方が近いか?

 明らかに、

 血だ。

 頭が、揺れる。

 揺れながら、思考する。

 足下には、血の水たまり。

 歩く度に、音がした。

 どのくらいの、人間の血が、この中に?

 白骨は、一体全部でなん人だ?

 意識が、朦朧としてきた。

「夕張さん」

 一緒に登ってきた捜査員から、肩を叩かれる。

「これを見て下さい」

 夕張は後ろを振り返った。

 それは、三メートル程の、ギロチンだった。

 ギザギザ。

 刃がギザギザしている。

 血。

 血がついていた。

 こちらは、比較的新しいものだ。

 刃は、鈍く光っている。

「ここ、死刑場だったんでしょうね」

「ん?」夕張は、なんとか聞き返した。

 気絶しない様に注意しながら。

「戦争当時だったから、必要だったんでしょう」横にいる捜査員は、顔をしかめながら話す。「ほら、それに、この館、変な噂あったでしょう? 人が行方不明になったとか、元は処刑場だったとか」

「ああ、そういえば、そうだったね」

「しかし、これは凄いですね。まともに息をするのも、難しい」

「血の池なんて、初めてみた」夕張は、片目を瞑った。「それに、幾ら、死体を見慣れたと言っても、白骨を、こんなにたくさん見た事は、なかったよ。ギロチン、も」

 彼は、そのまま、片目を瞑ったままで、ぼんやりとギロチンを見た。

 そこには、鈍い、曲がった、銀色の長方形があった。

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