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アジサイ笑って、走って逃げた  作者: お休み中
第六章 ぬめり、きらり、どきり
38/40

「おいっ、鉄板を発見したぞっ!」

 夕張の隣の穴の方角から、その声は聞こえた。

 夕張は、すぐ梯子を登り、隣の穴の中へ、飛び降りた。

 その足下には、鉄板と、扉の様なものがあった。

 周りには、数人の捜査員。

 沈黙。

 夕張は、周りの捜査員を見渡し、

 頷いた。

「行くぞ」

 夕張は、扉を開けて、中を見た。

 中は、明るかった。地面も思ったより近い。

 三メートルくらい。

 躊躇なく飛び降りる。

 着地。

 中は、

 その部屋の中は、

 死臭しかしなかった。

 目の前には、首がない死体。

 絶対に、

 あの、首の持ち主だ。

「ここを頼む」

 夕張は走り出した。

 奥へ奥へと進む。

 道は途中で別れていた。丁度、漢字の木の字を逆さまにした様。

 今、自分は、その、中心地、線と線とが交わっているポイントにいる。

 直感で進む。。

 自分を信じればいい。

 幾つか、修羅場は抜けてきた。

 俺の上司は、鬼の三崎警部だ。

 なにも、怖い事はない。

「こっちだ!」

 走る。

 走る。

 道には、なにも置いていない。

 洞窟。

 この表現がピッタリだ。他の部屋を横目で伺う。

 殆どものは置いていない。

 倉庫だったのか、はたまた、防空壕の様なものだったのか。

 夕張は、雑念を振り払う。

 奥へ行けば行く程、

 明かりが暗くなっていく。

 どのくらい走ったのだろうか?

 暗い。

 暗闇。

 恐怖。

 雑念を振り払う。

 目の前に、

 一つの光が、

 見えた。

 丁度、スポットライトの様だった。

 上から、梯子が落ちていた。

 よく見ると、捜査員がなん人かいる。

 捜査員達は、一瞬、夕張に驚く。

 だが、全員黙って上を指さすだけだった。

 上?

 一体上になにがあるっていうんだ?

 夕張は、

 一瞬の躊躇もなく、梯子を駆け登った。


     ◆  


「つまり、バトンだったのです。一番目の走者は、司。二番目も司。三番目の走者は、鉄太朗。四人目と五人目は麒麟。殺人というバトンを、彼らは回しあったのです。バトンは、確かに、失敗なく渡せました。そして、彼らは逃げたのです。走って、逃げたのです」星座は、再度繰り返した。「走って逃げたのです。凶器というバトンを持って」

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