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アジサイ笑って、走って逃げた  作者: お休み中
第六章 ぬめり、きらり、どきり
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「まず、何故地下室があったのか、私が発想したかと言いますと」星座はコーヒーを一口飲んだ。まだ半分残っている。「櫻蘭館は、北の間、東の間、南の間、と方角で別れています。ご丁寧に、北西の間、北東の間まであります。そこで、思ったのです。もしかしたら、南の間、南西の間、南東の間があるのではないか、と。更に重ねるならば、この館は、戦争の襲撃から、官僚が身を隠す為に作られたそうですね。ならば、どこかに、シェルターの様なのがあると思ったのです。

 麒麟と鉄太朗は、そこに、司を監禁していました。一連の死体に、司の指紋がついていたのは、その監禁している司に、無理矢理触らせたのでしょう。また、これで、警察が、どこを捜しても、司を見つけられなかった理由が分かります。また、そこには、坂を転がされた遺体の胴体の部分、ヘルメット、黒い服、そして勿論、問題の凶器がある事でしょう」

「しかし、星座さん。そこは、地中なんメートルなんですか? もし、仮に、シェルターがあったとしても、軽々と、そんな場所行き来できないですよ。土の下なんですよね、その地下室は。だって、麒麟と鉄太朗は、そこで被害者を殺し、庭園や館の中に遺体を移動させて、わざわざ血をまいたんですよね? 凶器を隠す為や、アリバイ工作の為に。毎回、わざわざ土を掘り起こしていたんですか?」

「あのー、そもそも。少し話は戻るので恐縮なんですが」樫木が星座の顔を伺いながら言った。「なんで麒麟さんが犯人なんですか? 動機の事を無視すれば、深美さんや、世話係の人だって、犯行が可能だったと思うんですけど」

「そうですね、それでは、まず、樫木くんの質問からお答えしましょうか」星座は淡々と答えた。「この事件は、隠し部屋の事を知っている事が、第一条件です。また、その隠し部屋を巧妙に隠さなければいけない。その点で、一番麒麟が、確率が高いと、私は考えました。まあ、詳しくは、凶器から指紋が出てから、という事になります。確定は。ただ、まず間違いないでしょう。また、麒麟が犯人の可能性が高い理由の一つとして、世話係や、深美さんの人格では、まず今回の殺人はできないというものもあります。まあ、これは、最初のとっかりの様なものですけれども」

「なるほど」樫木はゆっくり頷いた。

「では、次に、三崎さんの質問ですね」星座は続ける。「実は、隠し部屋は、もう一つあるんです」

「えっ?」と三崎。口を大きく開いていた。虚を突かれた顔に近い。「花壇の下だけじゃないんですか?」

「ええ」星座はゆっくりと頷いた。「おそらく、そちらから、二人は出入りしていたのでしょうね」

「二つもか」三崎は項垂れた。「どちらも、見つからなかった分けか。あれだけ、探していたのに」

「戦争当時って、そんなに、隠し部屋が必要だった、時代、という事なんですかね」樫木は腕組みをしながら、小さく呟いた。

「あっ、そういえば」茶話矢が両手を、剣玉の様に、ポンと鳴らす。「全然関係ないかもしれないですけど、この館に来る前に、川や坂がいっぱいあったけど、あれって、ひょっとして、なにか関係あったりするの?」

「そうです」頷く星座。「この館、やけに庭全体が広く、森が多くて、おまけに川もあって、坂もあって、おかしいとは思いませんでしたか? おそらく、これも、アメリカ兵が攻めてきた時等を考慮して、作られたバリケードの様なものだったのでしょう。まあ、時間稼ぎ程度だったとは、思いますけど。また、地下室を作る為のカモフラージュだった、とも考えられます」

「その、バリケードと、もう一つの隠し部屋は、関係あるんですか?」と樫木。

「直接は関係ありません。しかし、戦争とは、関係あります」

「そちらの方は探さなくてもよいのですか?」三崎は言う。

「えっ? 先程、別働隊を向かわせる様に指示しませんでしたっけ?」

「ああ、そういえば、言っていましたね。やばい、夕張に言うのを忘れていたな」三崎は顔を強ばらせた。「おーい、年の為、花壇班に伝えておいてくれ。隠し部屋は、もう一個あるって。単に地中を掘っているだけじゃ、モチベーションが低下するかもしれん」

「星座さん、凶器って、一体なんなんです? それに、隠し部屋って一体どこにあるんです?」樫木が、もう我慢できない、といった口調で聞いた。「そろそろ、教えて下さいよ」

「うん、明らかに、星座ちゃん、その二つを避けながら話してるよね」茶話矢は頬を膨らました。

「ええ、そうですよ」三崎は賛同する。「この事件の核心は、その二つの所在と言っても、決して過言ではありません」

「まあ、諸々の事情で」星座はにっこり微笑んだ。「でも、その前に、一つだけ」

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