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茶話矢は、自分の車の中にいた。
明らかに、飲みすぎた。
絶対に、飲みすぎた。
いつ以来だろうか?
あれは、成人式だ。
あれ以来かも。
「茶話矢さん、大丈夫ですか?」樫木が、スポーツドリンクを買ってきてくれた。
「ああ、ごめん。ありがとう」茶話矢はプルタブを、押し上げようとする。「あ、開かないよー」
「もう、茶話矢さんはー」樫木は、プルタブを、カコン、と押し上げた。
「ええ、ええ、ありがとう」
「始発まで、あとなん分ですかねえ?」樫木は携帯のディスプレイを見た。「ちょっと、調べてみましょうか?」
「うん、ありがとう」
ああ、そうだ。タクシー乗るお金が、なかったんだ。というか、この辺タクシー通ってないんだっけ? どっちだったっけ? いや、電話すりゃあいい話だよな。
「今なん時?」
「三時です」
「眠い」
「寝ないで下さいよ」
「えー、なんでーっ」
「いや、まあ、その、色々と、まずいでしょう」
「なにがー?」
「ほら、とりあえず、それ飲んで下さい」
「意地悪ぅ」
「やっぱり、タクシー呼びましょうか」
「お金ない」
「いえ、まず、僕の家へ、行けば大丈夫です」
「いやだー」
ほえー。
くらくらする。
つーか、
うーんと、
さっき、なにを話していたんだろう。
覚えていない。
いや、覚えているけど、
えーと、
なんだっけ?
「私、先月誕生日だったんだー」
「それ、もう聞きましたよ」
「もう、この歳になるとね」茶話矢は目を瞑りながら言う。「嬉しくない」
「そんなもんですかねえ」
「私の好きな男のタイプはー」茶話矢は、スポーツドリンクを一口。「花の指輪を、誕生日に、くれる様な人」
「えっ? それ、ちょっと引きません?」
「そんな事ないよー」
「いや、キザすぎますって」
「眠いー」
「寝ちゃ駄目ですよ」
「ううーん」
茶話矢は、樫木の肩に、頭を置いた。
「もう駄目」




