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アジサイ笑って、走って逃げた  作者: お休み中
第四章 ふわり、はらり
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「柳司の指紋が検出されただと?」三崎は大きく目を見開いて言った。

「はい。確かです」夕張はゆっくり頷いた。

 現在、深夜十二時。もう事情聴取は終わっていたが、まだ念の為、関係者は館に残っていた。柳家の人間は、特に支障はなかったが、メイドや執事は、基本的に全員通いである。(高頻度で泊まってはいるが)よって、捜査本部は、そろそろ関係者を解放するかどうかの判断に迫られていた。それを協議している最中、この情報が飛び込んで来た。ちなみに、警察は、三崎の予想によると、まだまだなん日間か、この人数のまま、この館に常駐する事になるだろう。

 ここは現在、客間の一室の、元取調室、現捜査本部であった。客間の幾つかの部屋を、仮設の本部として、柳家からお借りしたのである。

 三崎は腕組みをしながら言った。

「夕張、もう一度最初から、説明してくれないか」

「バラバラ殺人事件の、一人目の被害者の衣服。そして、三人目の被害者の衣服からです」夕張は手帳を食い入る様に見て言った。「被害者が着ていたセーラー服のスカート、ブラウス等から検出されました。今までその指紋は検出されていたのですが、今回の事件で、柳司の指紋を部屋から採取し、それを照合したところ、以上の検査結果が発見されました」

「三人目の被害者の指紋は?」

「これも衣服からです。彼女の着ていたスカート、また、キャミソールから検出されました」

「二人目の被害者は?」

「検出されていません。なにしろ、首だけですから。どこからも指紋は取れませんでした。今もやっていますが、皮膚からは、難しいでしょう」

「一人目と、三人目の、殺人犯は、柳司でほぼ決定か」三崎は冷静な表情で言った。「ただ、万が一、柳司が犯人じゃないにしろ、共犯か、絶対になにかしらの事情は知っているとみて、まず間違いないな」

「三崎さん、えーと、関係者はどうします? そろそろ、時間も時間です」

「その前に、星座さんにお伺いを立ててみよう。この情報で、なにか進展するかもしれない」三崎は、扉の取っ手を握りながら言った。

「やったあ、彼女にまた会えるんですねっ」

「星座さんは、今どこにいる?」

「えーと、近くの焼き肉屋さんだそうです」

「えっ? こんな時間に?」

「はい」夕張はにっこり微笑む。「どうやら、朝からなにも食べていなかったらしくて」

「よくあれを見た夜に、焼き肉食えるな」三崎は小さな声で呟いた。

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