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アジサイ笑って、走って逃げた  作者: お休み中
第四章 ふわり、はらり
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 樫木は、茶話矢とともに、白いバンに乗っていた。

 現在、深夜十二時。丁度、日付が入れ替わる時間である。

 二人は、事件の深い部分に関係ないという事もあり、早くに帰宅の許可が出た。星座は、捜査で気になる事があるらしく、未だ櫻蘭館に残っていた。途中で樫木は、星座本人から、星座の職業が探偵だという事を聞いた。これには、相当驚いた。というか、未だに、半信半疑である。「なんで教えてくれなかったんですか?」と、樫木が星座に聞いたところ、「いえ、聞かれなかったので」と、微笑み返されてしまった。いやいやいや。そういう問題なのだろうか。この衝撃事実は、茶話矢も知らなかった。

 星座が、探偵というのは、正直、非常に疑わしい事この上ないのだが、警察の捜査に協力しているところを見ると、どうやら本当に探偵という事が分かる。本当に、そんな職業が身の周りに実在するのか。ミステリー作家を志す樫木は、実は、探偵と会ったのは、これが初めてだったので、そんな感慨を思った。

 樫木は助手席から、窓の外を眺める。当たり前だが、外は真っ暗闇だ。電信柱が、まるで距離を測っているかの様に、規則正しく並んでいる。今、このバンは、国道を通っているのだが、窓から、車はちらほらとしか、見えない。珍しい。樫木は、体勢を戻し、前を向く。車のトランク部分が、対向車との距離を教えてくれる。普段、空がある部分には、様々な会社の看板があった。芸能人の、大きい顔がある。芸能人は、本当に大変な職業だろうな、と、樫木は思った。

「やっと帰れるね」茶話矢は、目を擦りながら樫木に言った。「もうさ、私、くたくたのよれよれだよ。あーあ、眠いし、疲れた」

「しっかし、凄い館でしたね」樫木は運転席にいる茶話矢の方向を向いた。「まるで、映画のセットでしたよ」

「セットより、お金かかってたかもね」茶話矢は欠伸をした。

「でも、本当怖いですよね」樫木は低い声で言う。「殺人犯が、この近所に、必ず一人以上は、いるって、事ですもんね。今までの犯人、みんな同じやつなんでしょうか?」

「どうだろうねえ。でも、こんな事するやつなんて、そんなにいないんじゃない?」茶話矢は、ハンドルを握っていない左手で、肩を揉みながら喋る。「いや、もう私も、落ち着いたから、大丈夫なんだけど、あれは凄かったよ。うん。その辺の、ホラー映画なんて、目じゃなかったね」  

「うーん、気になるな」

「樫木くん、お腹空かない?」茶話矢は樫木の肩を叩いた。「ちょっとさ、ごめん、もう襲いから、焼き肉はちょっと中止にしよっ。その代わりと言っちゃなんだけど、回転寿司奢ったげるよ」

「えっ? いいんですかっ?」樫木の表情は、スイッチを入れたかの様に明るくなった。勿論、寿司を奢ってもらえるからではない。

「つーか、ごめんよう。ちゃんとしたとこじゃなくてさ」茶話矢は微笑む。「その代わり、お腹いっぱい食べていいよ。うん、遠慮は無用さね」

「こ、心して食べますっ」樫木は力強く答えた。

 茶話矢はくすくす可笑しそうに口元を押さえた。「樫木くん、そんなに回転寿司好きなのかい? 意外だなあ。でも良かったよ。茶話矢は嬉しいぞ。ひょっとして、樫木くんは、お寿司とか、大好物だったりするのかい?」

「はい、大好きです!」

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