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アジサイ笑って、走って逃げた  作者: お休み中
第三章 ざわざわがやがや
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 柳深美は、ご機嫌だった。初めて会った男と、あんな嬉しい、あんなとびっきり嬉しい事があったのは、先程の屋上が初めてだったからだ。やっぱり、世の中、積極的な行動に限る。だから、今、庭園に行くのにも、彼女は自然にスキップしてしまっていた。でも、あれだけで終わる分けにはいかない。そう、自分は、今まで数人の男とつき合ってきた。だから、ここで終わっては、柳深美ではない。まだ、この樫木という男は、自分にメロメロという感じではないけれども、ただ、最早それも時間の問題だ。彼女は、そう確信した。

 足下は、白の壁の様な、石畳。深美と、樫木は今、この庭の中でも、最大級を誇る、大庭園へと向かっている。この他にも小さい庭園は、ある。(館の周りとか)ただ、今から行く大庭園は、その比ではない。深美は、花の博物館等、行った事はなかったが、ただ、それでも、絶対に負ける気はしなかった。まるで、お伽の国の様だ、と彼女は思う。いや、下手したら、お伽の国の上かもしれない。右手と左手には、カーテンの様な、鬱蒼と茂る木があった。おそらく、記憶喪失の人が、ここで意識が目覚めた時、絶対ここを庭だと思わないだろう。フフン、ちょっと得意気。

「ここ、駐車場の、反対側ですか?」樫木は、後ろを振り向きながら言った。

「もう、そんな事より私を見てよ」深美は樫木の両手を握って振り向かせる。「そうよ、反対側よ」

「という事は、庭園ですか?」樫木は、顔を少ししかめた。一見すると、嫌そうな顔だが、きっと、恥ずかしがっているだけに違いない。

「詳しく言うと、大庭園ね」深美は、左手は樫木の手を握ったまま、右手の人差し指を立てる。「もう、本当凄いんだから。世界中のお花があるんだから」

「いや、流石にそれは」

「男が細かい事気にしないの」深美は頬を膨らます。「それに、超綺麗よ。多分、いすみんは、あれを見たら、卒倒すると思うな」

「えーと、なんですか、その、モンスターの名前みたいなのは?」

「あだ名よ。あだ名。決まってるじゃない」

「いえ、それは分かります」

「さっき、いすみんは、名前私に教えてくれたでしょ?」

「ええ、教えました」

「やっぱり、あだ名で呼び合うと、恋人同士って感じがするわよねえ。あっ、同棲中のカップルと同じね。合い鍵もらうと、ああゆう時って、嬉しいものなのよ」

「はあ」

「あ、でも、私、同棲は、個人的にオススメできないわ。あれって、ピーク時は、楽しいけど、分かれる時、結構面倒なのよ。いや、結構じゃなくて、すっごくだわ。でも、毎日Hできるのは、楽しかった。うーん、でも、それはそれで、マンネリになるのよねえ」

「は、はあ」

「ねっ?」深美は樫木に微笑んだ。

「なんの、ねっ?、なんでしょう」

「ま、まさか、私にそれを言わせるのっ?」深美は右手を口に当てる。「もう、いすみんたらぁ」深美は、両手を鳥の様にバタつかせる。「キャー、キャー」

 樫木はその振動を感じながら淡々とした口調で言う。「櫻蘭館は、どの様な形状になってるんです?」

「形状って?」深美は、少し頬が赤く染まっていた。

「館の中の、見取り図、です。どれだけ部屋があるのかな、って思って。僕、ミステリーが好きなんで、館とか、興味があるんです」

「い、いすみんっ、私に興味を持ってくれてるのねっ?」深美は目を潤ませた。

「い、いや、だから。ミステリーにですね」

「だから、そんな関係ない事でも、聞いてくれるのね?」深美は、大きな声で叫んだ。「ああ、深美感激っ!」

「それ、秀樹の間違いじゃあ」

「あら?」深美は樫木を見る。「いすみんって、随分古い事知ってるわねえー」

「いや、お互いさまでは」

「では、この深美博士が、櫻蘭館をご説明しんぜよう。お主、心して聞く様に」

「深美さん、本当マイペースですね」

「ほら、そういう時は、ははーって言うものなのよ」

「ははーっ」

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