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 人ばかりでなく、蝉すらも寝静まった夜。

「うう……うーん。うう~ん」

屋敷の中からはうめき声が聞こえている。鈴代が布団を越えて転がってきた輪廻に足蹴にされて、うなされている。けれど、どことなく嬉しそうなのは気のせいだろうか。

 もう深夜で、丑三つ時すらもとっくに過ぎているだろう。

「――ふう」

 社の上、月明りの中で楽浪はこっそりと笑った。

 苦笑だった。

甘斗には気づかれないよう、ずっと内心で苦笑いしていたのだ。

 口ではああ言っているが、あの少年は自分のいる場所から誰かがいなくなることを恐れている。まったく、いじらしいではないか。

その中に自分が含まれていると思うと、少しこそばゆい。長い――長い間、はぐれ者を続けてきたせいで、自分の刀は誰かを守るということが少なかった。

そういう意味では、命を懸けて守るべきものを持っている初東風がうらやましい。

いや――他の稲荷も全て、社という自分の領有する神域を持っている。昔の自分は、それすら持っていなかった。

「――っと」

 思い出に浸りかけていたのを止め、楽浪は顔を上げた。

満ちかけた月が空を上りきって久しい。あと数刻ほどで空が白んでくるだろう。そうすれば、朝の早い棒手振りが町中を歩き出す。

 今はまだ夜明けの晩、あと数刻ほどで新しい朝がやってくる。

「はてさて、今宵はどんな夜になることでしょうねぇ」


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