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戦力増強

 ベッドに横たわっている男は薄い唇と細い目をしていた。その目は、開いているのか閉じているのかよくわからない。

「けけけ。今回ばかりはお前さんも大変そうだな、ロズィス」

 白衣のポケットに両手を突っ込み、ベッド脇に立った人物が話しかけてきた。眼鏡のレンズが光を反射し、まるでサングラスでもしているかのように目が隠れている。

「これはこれは、じきじきに治療していただけたようで。感謝しますよ、エラクレオ・クスタ博士」

 身体を横たえたままで顔を真っ直ぐに白衣の男——クスタに向けると、ロズィスが答えた。今起きたばかりとは思えない、はっきりとした声音だった。

「なに、私がしたことといえばお前さんをそのベッドに寝かせた程度。ほとんど自動的に回復していたよ。戦闘をモニターしていたが、Sクラスの攻撃魔法を喰らっておきながら一日でけろっと回復するとはね。さすが、人間をやめただけのことはあるな。けけっ」

 クスタはベッドに背を向け窓際に歩いて行く。ロズィスの視界に彼の全身が入った。相変わらず病的に青白い顔色をしているが、声と動作は活力に満ちている。

「肉体的な意味では人間をやめたつもりはありませんよ。心の方は一般的な人間とは少し違うようですが、これは生まれつきですので」

「ほほう、自覚があるとは驚きだ」

 大仰に手を広げて見せたクスタだったが、声は平静なままだ。

「君のことだから、次期主力商品は自分で試すものだと思っていたのだが、まさか生身のままで戦場に赴くとは」

「さすがにあれほどの戦場になるとは予想外でした。それと、博士の仰る次期商品はまだ試作段階。使用者の生命力を大幅に削りますからね。私自身、長生きする気など毛頭ありませんが、手がけた仕事を見届ける程度の余命は欲しいですから。先日スタブスターに仕掛けて勝手に散った、ゴラゾの手下のような連中がたくさんいればいいのですが」

 クスタがブラインドを開いた。ブラインドに逆字でペイントされていた『ルーフ商会』の文字が読めなくなり、窓があらわになったが、天気が悪いわけでもないのに陽光が差し込むことはなく、夜になっていることが知れる。

 窓に映る眼鏡の奥で、博士の瞳が妖しく光った。

 ロズィスへと振り向いた彼の目は、再びレンズの反射で見えなくなる。

「その試作品とやら、〈マギ・ブースター〉だったか。お前さんの本音としては、すぐにでもデモンストレーションして、商業ベースに乗せたいんだろう? 駒なら掃いて捨てるほどいるのではないかね。ケチな犯罪組織をいくつも吸収したのはそのためだと思っていたのだがね」

「だからこそ、ですよ。ケチな組織の連中ほど、自らの扱いには敏感ですから。使い捨てにされたと感じたら、失うものが少ないチンピラどもは徒党を組んで反旗を翻しますのでね。一度くらいは甘い汁の一滴も舐めさせてやらないと」

「ふん。裏切りの火種という意味では、自分の持ち駒を見殺しにされたゴラゾこそ要注意だと思うのだがな。何か手を打っておく必要はないのかね」

 それには答えず、ロズィスは口の両端を吊り上げて見せた。ただそれだけで、何らかの意図がクスタには伝わったようだ。

「なるほど。あやつには失うものがある、ということか」

「そうでなければ、あんな愚直な男が監視機構を裏切るわけがありますまい」

「典型的な悪人だよ、お前さんは。まあ、私に言われたくはあるまいが」

「ふふふ。あなたに善悪の意識がおありとは存じませんでしたよ」

 その時、クスタの携帯が着信音を奏でた。

「おっと、失礼」

「どうぞ」

「私だ。おお、ユージスか。なに、ズッキー……? 君の名は私には発音しづらいのだ、好きに呼ばせたまえ」

 しばらく電話相手と遣り取りをする博士に背を向け、ベッドから降りたロズィスはコーヒーを淹れた。その動作からは戦闘によるダメージなどほとんど窺えない。

 カップを二つ手にしたロズィスがその片方を手渡すのとほぼ同時に、クスタの通話は終了した。

「嬉しそうですね。良い知らせですか」

「お前さんにとっては試練かな。サワヌマ中尉は闇魔法そのものを使ったわけではないらしい」

 自らのカップを口に運ぼうとしたロズィスの手が止まる。

「……ほう?」

「彼はYAMI(ヤミ)コードを使えるそうだ。まだユージスが監視機構にいた頃、彼に教えたそうだよ」

 片眉を吊り上げるロズィスに構わず、クスタは喋り続ける。

「ただ、教えた内容は概念だけであって、具体的なYAMI(ヤミ)コードのSmap(エスマップ)テーブルについては文献その他の形で記録されてはいないとのことだ。それを一体どうやって再現し、いつ自分のSEデバイスにインストールしたのか。ユージスも首を捻っていたよ」

「ヤミ……、何ですって?」

「知らなかったのかね。闇魔法を、呪いのフィードバックなしで使える〈マギ・コード〉だよ」

 ロズィスの表情から薄笑いが消えた。腕組みをし、前回の戦闘において観察した限りの様子を思い出す。

「SEへのジャミングは確かに成功していたはずですが」

 黒い霧の影響範囲内では、ユッチの腕時計型デバイスが動作していなかったことは間違いない。

 クスタは眼鏡の位置を直しつつ、「見た目はそうなのだがね」と告げる。

「光ったり音を出したりすることはなくとも、YAMI(ヤミ)コードをエンコードする機能は生きていたのだろうね」

「すると、彼らには今後SEジャマーが効かなくなるということですか……」

 コーヒーを啜ったクスタは、眼鏡を外してレンズを拭きながらにやりと笑った。

「それが、そうでもないようだ。YAMI(ヤミ)コードにマッピングされた魔法種と、ZIS(ズィス)コードのそれとではかなりの差異がある——と言えば、優秀な魔法士でもあるお前さんにはわかるだろう」


 クスタはあえて説明を省いたが、ZIS(ズィス)コードやYAMI(ヤミ)コードというのは〈マギ・コード〉と呼ばれるコード体系の種類を指す。

 古来、魔法を発現させるには、長い呪文を詠唱したり、魔法陣(マギ・グラム)を描いた紙を用意したり、動物の血や骨を用意したりといった手間のかかる手続きが必要不可欠であり、術者によって魔法の成功率もまちまちだった。

 そういった手続きを、わずか一文、ものによっては単語一つを叫ぶだけで済むように短縮化した技術の成果が〈マギ・コード〉なのだ。

 本来ZIS(ズィス)コードによって機能するSEデバイスでYAMI(ヤミ)コードの魔法を使うには、SE内部でエミュレーションコードを走らせる必要がある。かつ、使える魔法は双方のコード体系においてよく似た事象改変効果を発現するものに限られる。

 それだけではない。大抵の魔法士は得意分野の偏りがある。

 せっかくエミュレートしたはいいが、魔法士によってはYAMI(ヤミ)コードのコード領域内にマッピングされた魔法を、ただの一つも使えず終いという可能性もあるのだ。


「戦闘を眺めていて感じたが、サワヌマ中尉の率いるチームはなかなか器用な連中が揃っている。彼は今頃、メンバー全員のSEデバイスにYAMI(ヤミ)コードをインストールしていることだろう。しかし」

 言葉を切り、コーヒーを飲み干す。

「よほど優秀なエンジニアがエミュレーションコードを書かない限り、SEを介した魔法発動のタイムラグは大きなものとなる。スピードの出ない魔法など、いくら威力があろうとお前さんにとっては大した脅威にならんだろう」

「ふむ。しかし、中尉のスピードはいささかも落ちていたようには感じませんでしたが」

「知っている。戦闘をモニターしていたからね。スピードを維持するために、何らかの裏技を使っていたのだろう。残念ながら、離れたところから見ていただけの私では見当もつかないね」

「博士でも、ですか」

「うん。ただね、消耗が激しいみたいだったよ。お前さんはSクラスの集中砲火を浴びてたから気付かなかっただろうけれどもね。手許の時計で二分半から三分といったところか。そのあたりで膝をついていたようだ」

 マギ・アウト直前だったという証拠だ。ロズィスの頬が吊り上がる。

「たとえ奴らにどんな優秀な技術者がついていようと、そう簡単に克服できる弱点ではあるまい。こちらはこちらでSEジャマーの改善作業を進めている最中だ。量産するにはまだまだ時間が要るが、そこは勘弁してくれ。次の作戦までには必要な個数を言ってくれれば間に合わすよ」

「期待して待ってます。しかし、もう一つ懸念が。Sクラスのお嬢さんはジャミングのレンジ外から攻撃してきます。正直、今回生還できたのは悪運が強かったからとしか」

「致し方ない。ユージスの奴に借りを作るのは面白くないが、奴が開発中の〈マギ・プロテクタ〉のプロトタイプを譲り受けるとするか。実戦で得られたデータを提供すると言えば喜んで譲ってくれることだろう。とくに」

 外していた眼鏡を再びかけると、ロズィスを真っ直ぐに見据える。

「〈マギ・プロテクタ〉の被験者(テスター)を〈呪いの霧〉ロズィスが買って出た、と言ってやればなおさら、な」

「そういうことなら、この身体を張ってデータ収集に協力させていただきましょう。しかし、ユージス、でしたか。あの男は優秀です。私ごときで釣れますかね」

「けけけけ。謙遜する悪党など聞いたことがない。お前さん以上の適任者がいるなら連れてくるがいいさ」

 クスタはごくわずかながら、瞳の力を強くした。

「ところで、第二班の連中は強敵かね」

「実際に手合わせするまでは、Sクラスだけ気を付けていれば余裕だと思っていたのですがね。正直、サワヌマ中尉があそこまで得体の知れない魔法士だとは思いませんでしたよ。どうやら楽をさせてはもらえないようです」

 クスタは「がんばれよ」と気軽に呟き、手をひらひらさせた。

 苦笑して頷いて見せた後、ロズィスの細い目には刃の輝きが宿るのだった。


 * * * * *


 日本に来てからひと月ほど経つ。十一月も間もなく二週目に突入する。随分日が短くなったとは言え、西日が射し込むリビングは電気をつけるまでもない明るさだ。

 ユッチ班は散発的に——とは言えリエイル各地の平均頻度を考えると異常に多い——現れるIMを退治し続け、チーム全体でのIM撃退数はこのひと月ですでに二桁に達している。

 しかし、あれ以来ロズィスが姿を見せることはなく、敵の尻尾を掴むことができずにいた。


 今、部屋にいるのはユッチひとり。彼はノートパソコンで誰かと会話している。相手の顔を見ながらのビデオチャットだ。

「おはようございます、ミスター・ウィルソン」

 通話の相手はイギリス人で、グラスゴー在住の男性。時差を考えると向こうは早朝のはずだ。

『ボブと呼んでください。娘がお世話になっております、サワヌマ中尉』

「オーケイ。私のことはユッチと呼んでください、ボブ」

『実はユッチ、あれ(・・)のことですが、皆さんの言うことをきちんと聞いていますか。生意気を言ったり、お荷物になったりしていませんか』

 パソコンの画面に映っているのは明るいブラウンの髪をした北欧系中年男性だ。しかし、彼の口からは流暢な日本語が紡がれている。我が子を『あれ』と呼ぶあたり、かなり深く日本文化を理解している様子である。彼は眼鏡をかけているが、レンズの奥の青い瞳といい整った顔立ちといい、ユッチ班最年少の部下との血の繋がりが感じられる。ただ、彼の学者然とした落ち着きと柔らかい物腰は件の部下にはないものだ。

 ボブはソフトウェア開発を得意とするフリーランスのエンジニアである。SEデバイスの機能向上や新たな魔法士支援ツールを開発するにあたり広く人材を集めていたツェダーラ社は彼に注目し、そのウデを買った。彼の参加により、それまで精度の低かったSEデバイスの音声認識機能が飛躍的に向上したという。


 ——あのフィリスの父親が、まさかSEデバイスのエンジニアだとはね。


 画面を分割してボブの経歴を読んでいたユッチは驚きを隠しきれず、軽く見開いた目を画面に向けてしまっていた。

 リエイル側にも監視機構の協力者がいる。こちら側に在住のまま、SEデバイスの技術者として勤務していることは、特に驚くことではない。だがユッチの脳内において、例の最年少の部下が持つイメージと結びつかないのだ。

 軽く溜息を吐いてしまう。何せ、彼女ときたら自分のデバイスのごく基礎的なメンテナンスさえ一切しようとしないのだ。

 親の良いところってなかなか遺伝しないものだよな……などと思ってしまうユッチではあるが、口に出しては当たり障りのない応えを返す。

「とんでもない。娘さん——フィリスは我がチームのエースですよ」

 もちろん、Sクラスの魔法士がチームのエースであることは嘘でも誇張でもない。

 ふと、ユッチは笑顔を消してボブを見つめる。

「とはいえ年齢が年齢だ。ご心配はごもっとも。私としても彼女については任務よりも学生としての社会的立場を優先させたいと考えています。イギリスと日本じゃ遠く離れていますからね。御尊父はもとより、御母堂も気が気でないでしょう。お望みなら、私から彼女に帰国するよう『命令』することもできますが」

 そう、自分たち第二遊撃班のメンバーとは違い、彼女には歴としたイギリス国籍がある。この世界(リエイル)こそが彼女の居場所なのだ。

『正直言って、かなり心配でした』

「……でした?」

 語尾が過去形なのを気にしたユッチだが、相手はイギリス人。いくら流暢に日本語を扱うとは言え間違えずに話せるとは限らない。しかし、ユッチの疑問を正確に理解したボブは『ええ、過去形ですよ』と言うと微笑んだ。

『妻は、……あれの母親はすでに他界しました。優秀な看護師だったんですが、六年前に交通事故で』

「知りませんでした、すみません」

『謝ることではありませんよ』

 年齢から逆算し、ユッチは思わず目を伏せる。

 ユッチが読んだ資料にはボブ本人の経歴だけが書かれており、妻子の情報は書かれていない。

 自分の過去と共通する境遇。

 ——そうか、フィリスの奴も俺と同じ年齢で母親を……。

 つい物思いにふけりそうになり、ユッチは軽く首を振って自制した。今はボブと会話中なのだ。

「しかし、父ひとり子ひとりならなおさらご心配でしょう」

 言外に、なぜ過去形なのかと問うたつもりのユッチだが、ボブはそれには答えず別のことを告げてくる。

『妻は生前、特に言葉で娘に何かを言い聞かせたわけではありません。でも、娘は妻の思いを受け継いだのでしょう。誰かの役に立ちたいという思いが人一倍強くて』

 ふと遠くを見る目をしたボブは、穏やかな声のまま続ける。

『妻は日本人だったんですよ』

「……ほう」

『日本はあれの母親が育った地、第二の故郷のようなものです。もっとも、日本訪問はこれが初めてですが』

 ボブは柔らかく微笑んで見せた。

『電話してみてよかった。あなたのような方が上官なら、私が心配することなど何もないと確信できます。帰国させるなどと言わず、娘をどうぞよろしくお願いします』

「…………責任重大ですな」

 ボブの邪気のない笑顔に息苦しいほどのプレッシャーを感じたユッチは、作り笑顔の頰に汗が流れるのを自覚した。

『ああもちろん、任務のリスクは承知しておりますよ。しかし、あれが自分で選んだ道ですから』

「フィリスの実績は私の部下全員の実績を上回ります。こちらとしても彼女がいれば心強いのは確かですよ。普段から英国騎士のような立ち居振る舞いで、どちらが上官かわからなくなるほどの頼もしさですし。でも、彼女ひとりに頼ることのないよう気をつけます」

『娘を指導してくださった魔法士さんは赤い長髪の女性でしてね。とても勇ましい方で、あれとしては心酔してしまったようです。古風な日本語を話すのは、彼女の影響かもしれません』

 四年前から一年間にわたり、任務でイギリスに赴任していたのはギファール側の魔法士だ。

 フィリスはその魔法士に師事してSクラスとしての実力を開花させるに至ったという。彼女はまだ十四歳という年齢にもかかわらず、IMを百体以上退治した戦闘経験を持つ。

 ちなみに、ミュウは約三十体のIMを退治している。主な任務が通信・後方支援のツッキーは約十体。

 フィリスの実働期間は彼女ら二人より一年ほど長い。SとBでは魔力クラスに大きな開きがあるのも確かだ。それを考慮に入れてもフィリスが残した数字は凄まじい。彼女の戦闘魔法士としての才能は非凡の一語に尽きる。

「……っと。ボブ、いまとても気になることを仰ったような。赤毛の長髪ですって?」

『おや、ご存知なかったのですか。現在の第一遊撃班長、ランパータ・キュラムス少尉が娘の先生だったのですよ』

 ユッチの脳裏に古風で仰々しい日本語や、腰に手を当て胸を張った騎士然とした態度の部下の姿が浮かぶ。そしてその姿が、凜々しい遊撃班第一班長のそれと重なる。

 今よりずっと堅物だった当時のランパータ。彼女の教えを受けた生徒——。

「なるほどねぇ。似てるわけだ。あいつが日本語を話すなら、こんな感じだろうと思って教え込んだからなぁ。それを、フィリスが真似をして……って、俺のせいだったのか」

 思わず目を閉じ腕を組んで、深々と頷くユッチ。

「ところで、フィリスはもうあと数分で帰ってくる頃合いだと思います。せっかくのご連絡ですから、お話しになりますよね」

『いいえ、ユッチ。あなたと話せてよかった。これから人に会いますので、残念ですがそろそろ失礼しま——』

「あっ、たった今帰って来ましたよ」

 ドア越しに複数の足音を聞いたユッチは玄関を振り向くと、ドアが開くのを待った。体重が軽いとわかる足音がふたつ。おそらく下校途中のフィリスがツッキーと合流したのだろう。

 やがてドアが開き、小柄な少女が銀髪ツインテールを揺らしつつ姿を見せる。

「ユッチ殿。ただいま帰還いたしました」

「やあフィリス、おかえり。今ちょうど御尊父から電話……がっ!?」

 フィリスの背後に立つ人物に視線を合わせた途端、ユッチの声が裏返った。

「久しぶりだな、ユッチ。元気そうでなにより。随分変わった挨拶だが、それが日本式なのか?」

 ハスキーながら張りのある声、日本語だ。

「ふむ。靴を脱いで上がるのか。新鮮だな」

 燃えるように赤いストレートロングが目にまぶしい。カットソーの上にカーディガンというコーディネートが長身に映える。彼女はフィリスに倣い、ジーンズを穿いた膝を折って靴を玄関で揃えてからリビングに上がり込んできた。

「ランパータ!? 第一班の任務はどうし——」

「お父さん!?」

 興奮したフィリスに押し退けられたユッチは、床に転がった姿勢でランパータを見上げる格好になった。

「ユニークな師弟関係を築いているようだな、お前たちは」

 腕組みをして見下ろすランパータを背に、フィリスは画面の向こうの相手と親子の会話を弾ませていた。

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