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その男は、奈津子の聞いた噂通り体格はガッシリとしており制服の上からでもそれはわかった。
「あの人なのかな?」
小さな声で奈津子が聞いてきた。
「わかんない、でも特徴は一致してるよ」
かなえも小さな声で返した。
「…あの人が、探偵なの?」
片桐は少し驚いたように聞いてきた。
「知り合いなんですか?」
かなえが聞いた。
「えぇ…、クラスメイトの鞍馬 孝士くん」
では、探偵というのは三年生だったのか。
「とにかく、行ってみようよ」
三人は奈津子を先頭に近づいていった。
近づいていくと、鞍馬という男の外見が徐々にわかってきた。
髪の毛はサッパリとしていて短く、大人びたという特徴も合っている、というか少し老け顔だ、高校生には見えなかった。
成人ですと言っても十分通じるだろう。
学割とかは口で言っただけでは利かなそうである。
探偵の可能性のある男まであと五メートルといったところで、奈津子は急に振り返りかなえと向き合う形をとった。
「なに? どうしたの?」
かなえは聞いた。
すると奈津子は
「かなえ、先行って」
「えっ」
それまで先頭をきって歩いていた奈津子がかなえの後ろへと回った。
「なんでよ、探偵の話持ちかけてきたの奈津子でしょ。奈津子が行ってよ」
かなえは奈津子の後ろへと回った。
「だって思ったより恐そうなんだもん…」
小さな声で言った奈津子はかなえの後ろへと回る。
確かに奈津子の言うとおり鞍馬という男にはちょっとした威圧感があった。
「そんなの、持ち前の明るさでカバーしなさいよ」
奈津子の後ろにかなえは回る。
そこから奈津子とかなえはお互いの後ろへと回る。
回る 回る 回る。
各々が後ろへと回るので、二人と鞍馬の距離は十メートルは離れた。
いつしか先頭に立っているのは、そんな二人を困ったような顔で見ている、片桐であった。
片桐の顔を見て二人も覚悟を決めた。
「じゃあ、私が行く」
かなえはそう言って鞍馬へと近づいていった。
奈津子と片桐はかなえの三歩後ろの距離をあけ、ついていった。
そして
「あのっ、あなたがこの学校の探偵さんですか?」
かなえは尋ねた。
すると鞍馬はゆっくりと顔をあげ
かなえの方へと向けた。
少し驚き、一瞬不思議そうな顔をしたが
しばらくかなえの顔を見て
「……私は探偵なんてそんな大それたものではないのですが…おそらく貴女たちが探しているのは私だと思います。」
と、言った。
…どうやら当たりのようだ。
だがそんなことよりもかなえは思うことがあった。
それは、本当にいたんだ、ということではなく。
これで先輩を助けられるかもしれない、ということでもなく。
鞍馬という男が意外にも丁寧な口調だったという驚きだったというのと
あとは
(声 渋っ)