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奈津子が言う学校にいる探偵という話はこうだ。
-放課後の図書室の向かって右奥の席にそこそこの確率でいる-
「…」
「それでね…」
「まって」
話を続けようとするの奈津子を止めた。
「なに?」
「なによ、その、そこそこの確率って」
そういうのって必ずいるとかではないのか?
例えば、何時に行けば必ず会えるとか。
「やだなぁかなえったら、ドラマとかの話じゃないんだから、必ずいるなんて都合いいわけないじゃない」
「……」
…まぁ、そうなのだが。
「話戻すよ それで、その人にお願いすれば、引き受けてくれるんだって」
「その人って、どんな感じの人なの?
特徴は?」
「えっとね~、大人びた感じの顔らしいよ」
「ふーん」
「あとね、体つきはいいんだって」
「ゴツいってこと?」
「細マッチョか、ごりマッチョでいえば、
ごり」
そんな体格の人が図書館の隅っこにいるのか。
……あまり想像できない。
「とにかく、その先輩連れて、行ってみようよ、今日!」
「今日?」
またえらく急である。
「こういうのは早いほうがいいよ! かなえだってこの事件早く解決したいでしょ?」
「そりゃあ…まぁ、そうだけど…」
確かに行動するなら早いほうがいい。
あんな暗い先輩をこれ以上見るのも辛かった。
「じゃあ、決まり! 放課後ね!」
「う、うん」
食事を終えた二人は教室に戻るため、食堂を出た。
前を歩く奈津子はすっかりその気のようだが、かなえには一つ問題があった。
はたして、片桐がその胡散臭い話にのってくれるかどうかなのだ。
かなえだってまだ半信半疑なのだ。
今の状態の片桐にこの話を持ち出していいのか心配だった。
たぶん奈津子はそんなことを考えてはなさそうである。
かなえはどうやって片桐に、この話を振ろうか考えながら、奈津子の後を追った。