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かなえの所属する美術部で部長を務めるのは、今回、展覧会に作品を出展することに選ばれた、片桐 綾日だ。
幼少の頃から、絵を描くことに秀でており、数々の賞を受賞した。
その功績や、絵の素晴らしさが讃えられ
大きな展覧会への絵の出展が目前に控えていた。
人当たりも良く、美術部の部員からも好かれており、絵を描く時の彼女はとても幸せそうな笑顔だと、部員の誰もが言っており、かなえもそんな彼女を尊敬していた。
そんな片桐の笑顔も今は消え、暗い顔をし、筆を持つこともしなくなった。
理由はもちろん、今回の脅迫文である。
そんな彼女からかなえは相談を受けたのだ。
先生に相談すればどうか?と、かなえも言ってみたが、片桐は首を振った。
脅迫ともなれば犯罪だ、警察だって介入してくるだろう。
自分の描いた絵を「脅迫を受けた」というように見られるのが、片桐には耐えられないようだった。
では、展覧会を諦めればいいのではないか?と、かなえは思ったが、口にはだせなかった。
理由は今回の展覧会はただの展覧会ではないのだ。
要は、ちょっとした場所で行うものとは、わけが違う。
規模が大きいのだ。
日本の有名な画家も出展する大きな展覧会である。
片桐にとっては大きなチャンスだ。
もし、これが有名な評論家の目にでもとまれば、一流の画家への道の大きな一歩となる。
彼女としても、それを不意にはしたくなかった。
一通り説明を聞いたところで奈津子は唸った。
「うーん、非常に由々しき問題だね」
「でしょ? 私も先輩の力になってあげたいけど、これに関しては…」
実際、かなりヘビーなのだ。これほどの相談を受けたのはもちろん初めてだった。
「…、よしっ」
しばらく考えていた奈津子が急に立ち上がった。
「どうしたの?」
「犯人を見つけるしかないっ」
「は?」
思わず、上ずった声がでてしまった。
この友人はなんと言った?
「そんなの、私達じゃむりだよ」
そう言うと
チッチッチッと奈津子は指を振った。
「探偵に頼むんだよ!」
「……」
口があんぐりと開きそうになるのをおさえ
「……探偵事務所にでも行くわけ?」
なんとか、言葉を出した。
すると、またチッチッチッと奈津子は指を振った、めんどくさいなこの女。
「頼むのは… この学校の探偵だよ!」
高らかに奈津子は言った。
入学式が終了し、自習時間がもうすぐ終わり、昼休みの鐘がなる頃だった。