星空
「ねぇ、何してるの?」
「星を見てるんだよ」
「お母さんとお父さんが星を見たらお星様になっちゃうって言ってたよ?」
「こんな世界ならいっそ、その方がいいよ」
「?」
「君はまだ知らなくて良いことさ」
懐かしい記憶。
かつて僕には兄がいた
両親から聞いた話だが兄は本当に星になってしまったらしい
良くテレビにも流れている「星見症候群」によって
その星見症候群は今の医術でも手につけられない奇病だと言っていた
そんな僕も、星見症候群に囚われてしまった
もともと天体観測が好きだった僕は、この星見症候群によって死んでしまっても良いと思った
だって、死んでしまったら自分が大好きな星になれるんだから
でも両親は兄の事からか、僕を特別施設に預けた
そこはどうやら星見症候群の子供たちだけを預かっている施設らしく、場所は高台にある
とても星が良く見える
施設の部屋から星空を見ていると兄がなぜあんなにも星を見ていたのか。その気持ちがわかったような気がした
この施設の窓は星見症候群の子が空を見てしまうからセンサーを付けているらしい
僕も前まではそうだったけど、最近はお医者さんは何も言ってこなくなった
まじまじと星空を眺めているとコンコンっとドアをノックする音が聞こえ振り向く
この時間だ。きっとお医者さんだろう
最近は視力や体調などをよく検査しにくる
どうぞーと言うとお医者さんが入ってきた
いつもどおり視力検査をし、体調を確認する
どうやら僕の視力はかなり落ちているらしい
通りで最近は星が見にくいわけだ。
と納得する
視力以外には異常が無かったという事でお医者さんは部屋を出て行った
帰り際、アカネお姉さんが飴玉をくれた
先生にはナイショね。
と言われアカネお姉さんは微笑んだ
僕もうん。と微笑んだ
貰った飴を口に含みカラコロと鳴らす
なんだか今夜はいつも異常に月の光が眩しく感じられた
あぁ、綺麗だ
星空を見続けていたら急に眠くなりウトウトし始める
もういっそ眠ってしまおう
また、明日星を見よう。
また…明日━━━━━━




