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序章 バスティ現る

考証とか適当だったから相当無理がある展開だと思います

二〇一三年八月十六日、航空自衛隊新田原基地の管制が、太平洋上に不審な飛行物体を確認した。それは超音速で日本列島へ侵攻していた。


警戒待機所には九人の男が居た。男達はスクランブルを気にしながらも、それぞれの方法でくつろいでいた。時刻は午後四時、午後の倦怠感が漂っていた。その九人のうちの一人が新谷二尉である。彼は、佐藤二尉とともにF-4EJ改に乗り込むパイロットであり、新谷が前部座席で操縦を担当し、佐藤が後部座席で補助を担当することになっている。彼は備え付けのソファーに深く腰掛けて、体を休めていた。身につけている対Gスーツの締め付けを出来るだけ弱めようと、立ち上がろうとしたとき、部屋のホットラインが鳴った。その音の発信源を部屋にいた全員が注視した。

「スクランブル!」

注目の中で素早くホットラインをとった連絡担当官が受話器を耳から離して叫んだ。それと同時にアラームが鳴り始め、部屋に緊張が張り詰めた。新谷は素早く立ち上がり、佐藤に早く行くように促したが、既にドアの方に向かっていた。


 通常スクランブルは二機一組で行われる。その為、部屋からは四人の男達が走り出た。二機のF-4EJ改が待機している滑走路へ到着し、四人は自身が乗るそれぞれの戦闘機に駆け寄って行った。新谷が近づいたとき既にF-4EJ改には整備員が付いており、いそいそと調整を行っていた。

 駆け寄った新谷は整備員に声を掛け、機体に乗り込んだ。ヘルメットを被り、前面の計器を確認。キャノピーを閉め、周囲に人が残っていないのを確認し地上の人員の誘導に従い機体を発進させた。

「マット、飛ぶぞ」

新谷が後席の佐藤へ伝えた。マットというのは佐藤二尉のTACネームである。TACネームというのは所謂渾名であり、正式なものではない。

「了解、マイマイ」

マイマイというのは、新谷二尉のTACネームである。

 管制の指示を受けながら滑走路に出たF-4EJ改は、ジェットエンジンに火をつけ、加速を続け離陸した。

「こちらジェイソン2、離陸した」

新谷は離陸を報告した。後は好きなように飛ぶだけである。


 基地を発って十五分ほど経った頃、二機は太平洋上を飛んでいた。天候は晴れであったが、所々に雲がかかっており夕日の出入りが激しかった。

「目標見えるか」

新谷が佐藤に問いかけた。後席に乗っている佐藤は操縦をすることはなく、主にレーダー等の操作が担当である。

「見えない。レーダーに反応はあるが、何故だろう」

「レーダーでは四キロ先か。速度を落として探す。分かったか、スピード」

「了解」

新谷は隣を飛んでいる操縦士の多田野三尉に伝えた。多田野のTACネームは、スピードという。

 二機は、速度を落とし周囲を警戒した。時間が経てば目標の姿が目視出来るはずだった。しかし、見えなかった。その代わり、佐藤が別のものを発見した。

「おい、あそこ。波がたってるぞ」

「あそこじゃわからない。言ってくれ」

「すまん、マイマイ。右斜め前だ」

「了解。発見した。確かに変だ」

新谷が確認した海面には、一直線上を起点とした波がたっていた。それに、一直線は新谷達の方に近づくようにだんだん伸びている様だった。それは飛行物体が低空飛行をしている時のような波であったが、空中には肝心の飛行物体が無かった。無かったが、新谷と佐藤にはどうにも気に掛かった。

「全く姿が見えん。が、とりあえず呼びかけだけしてみる」

新谷は、姿の見えない目標に対して無線で呼びかけることにした。

「了解」

 新谷は、チャンネルを緊急回路にして、領空に接近している旨を言った。相手が不明である為、できる限りの多言語で言わなければならなかった。新谷は英語は多少出来るが、他は全く出来ないので、持ってきた「文句の外国語対応表」を参照した。言葉が姿の見えない何かに届いているかは不明だったが、成果がでるまで続けるしかなかった。

 二分程続け、そろそろ止めようかと思い始めた頃、返信があった。その頃には一直線は二人の乗る機体に確実に近づいており、機体に掛かる風の具合から、新谷には目標の存在を確信できた。

「誰なの?話しかけて来てるのは」

答えたのは若い声であった。おびえていて、まるで親に叱られた子供の様であった。

「日本語か。気が楽だ。我は航空自衛隊である。貴機は日本領空に接近しつつある。速やかに針路を変更せよ」

「いや、日本人なんですけど」

先ほどとは全く声音が変わり無表情になった言葉に、そうだった、と新谷は気付いたが、自分の間違いを詫びることなく会話を進めた。

「なんでもいいが先ず姿を見せてくれ」

その言葉の後、それは姿を現した。

 それは巨大な人型ロボットだった。八十メートルはあろうかという程巨大で、白を基調とした色彩とデザインは見栄えがよかったが、兵器としての格好良さは感じさせなかった。

「すげえやこりゃ」

多田野がそう独白した。それは無線には乗らなかったが、その場にいる三人と同じ感想だった。ただ、目標に見とれていたのは、未熟の証である。新谷は次にすべき行動を考えていたし、佐藤は管制と通信をとっていた。

 新谷は自身の機を目標と同じ進行方向に変え、多田野の機にもそうするように指示した。そうすることで先ず話をきこうと考えたのだ。

「それは何か」

新谷が少年に問いかけた。様々なことを考えたが、新谷にはこれが一番気になったのであった。

「これは見ての通りだよ。ロボット。名前はバスティ。僕の物さ」

「ああ、そうか。では何故こんなところにいる」

「富士山に怪獣がでる。だからそれを倒しに行く。これは僕の使命だ。天命だ。いや運命か。どちらにしろ決まったことなんだ」

その言葉を聞き新谷は絶句した。操縦桿を離す程では無かったが。

「お話のところ悪いが、基地までそいつをエスコートしろとお達しが来たぞ」

佐藤が伝えた。少年の話に驚いて思考が止まっていた新谷は頭を振り、対応しようとした。しかし、

「それは出来ない」

と、少年の発言で遮られた。

「僕にはやることがあるんだ。邪魔しないでくれよ」

「誰だよおまえ」

佐藤が多少いらつき気味に言った。これまでの経緯を知らないのだ。

「僕の名前か?僕は有栖川敬悟。覚えておくと良い。じゃあね」

それだけ言って、有栖川と名乗った少年は加速し、今度は理解の出来る、即ち圧倒的な速度で目に見えなくなる距離まで飛ぶという方法で姿を消した。佐藤はいろいろと不満をこぼしたが、新谷は、加速によって発生した風から機体の水平を保つことに手一杯で、それに反応する余裕は無かった。

 ただ、機体が安定した後に

「ロボットのこととその操縦士、あと富士山に怪獣が出るって言ってたことを報告してくれ」

と力なく言っただけだった。

 

「しかし本当に誰だったんだ」

帰宅後、寮の新谷の部屋に佐藤がやってきていた。佐藤の言では理由は特になく、来たかったから来た。ということだったが、新谷には違うように思われた。

 

 結局、怪獣の件は警戒しておくということになったが、心配だったのだろう。しかし今はそれよりも、新谷には眠気の方が重要だった。時刻は午前一時で、もう寝たかった。その為、

「気にしても仕方が無いんだから、早く寝よう。もう帰ってくれ」

と提案した。


 深夜、場所は富士山である。そこに二つの巨大な物体が対峙していた。一方は有栖川敬悟の乗るバスティである。もう一方は、大きな、怪獣。黒いボディに光る鋭い目、口は歯が飛び出し、腕は異常に太く長く、足は短い。尻尾もある。誰が見ても怪獣という様な風貌であった。

「君は僕に倒されるんだ。分かった?」

有栖川は、伝わるわけでもなしに、独語をした。彼は十五歳である。未だ精神の成熟していない時期に強い力を手に入れ、このような口調、精神構造になったのだった。

「行くよ!」

有栖川は飛び出した。足下の木々がなぎ倒されていくが、気にもとめずただ怪獣を殴った。拳は怪獣の胸に当たり、怪獣は後ろに倒れた。有栖川は、それに馬乗りになり怪獣の顔を殴り始めた。一発目は左頬に当たり、二発目は怪獣が一発目に反発して顔を真正面に向けた瞬間であり、人間の鼻のある部分に当たった。当たると、怪獣は大きく鳴き声をあげ、それ以後は力が抜けたように素直にバスティのパンチを受け止めた。

「これで終わりかい?呆気ないなあ」

有栖川は、殴る手を止めて言った。マウントポジションは解いていない。怪獣の顔は体液で濡れ、腫れていたが、眼光は依然として鋭かった。

「もう終わりにするよ」

そう呟き、両手の拳を合わせ、力を溜め始めた。有栖川の必殺のエネルギー攻撃である。技としては周囲にあふれているエネルギーをバスティ内に溜め、それを放出するという単純なものであったが、単純であるが故に、強力であった。

 力を極限まで溜め、大きな可視エネルギーがバスティを覆った時、背面に大きな衝撃を受けた。怪獣の尻尾である。

 尻尾に押され、バスティは、吹っ飛ばされ、森林にうつぶせにぶつかった。衝撃で有栖川は暫く立ち上がることが出来なかった。その間に、怪獣は立ち上がり有栖川の方へ歩き出した。

 倒れているバスティの頭部を掴み、持ち上げた。右手で自身の胸のあたりまで持ち上げ、更に左手で足首を掴み、天高く掲げた。

 怪獣は月へ向かって雄叫びを上げ、バスティを引きちぎろうと両腕に力を込めた。バスティの各所からミシミシ、と金属が悲鳴を上げ始めていた。

 十秒程経ち、有栖川は目を見開き怪獣の顔を睨んだ。

「舐めるなよぉぉ!」

有栖川の絶叫と共にバスティの足首からカッターが出現し、回転を始めた。

 回転が始まると、怪獣は悲鳴を上げた。左手の肉が削がれていたのだ。怪獣は痛みに耐えかね、左手どころか右手までも放し、後ずさった。

 空中に放たれたバスティは、有栖川の操縦により、再びうつぶせで倒れることは回避した。しかし、先程のカッターの回転が傷つけたのは怪獣だけでは無かった。窮地を救ったカッターはバスティ自身の足首も深く傷つけており、歩行は不可能であった。立ち上がることも覚束なく、何度も転倒してやっと立ち上がることが出来るという具合であった。

 怪獣は左手を押さえ、立ちすくんでいた。しかし、時間が経てばバスティへ攻撃を仕掛けてくるのは確実であった。

「足が動かなくたって!」

有栖川は叫んだ。叫ぶことによって体の末端までを集中させているのだ。

 バスティの右腕が上がった。その際、大きな金属の擦れる音がした。それが怪獣には厭な音であったらしく、バスティを歪んだ顔で睨んだ。その目の先には、変形していく腕があった。

 バスティの右腕では、手が奥に引っ込み、開いた穴から大きな銃口が姿を現した。又、袖からは細い管が五つ現出した。

 五本の細い管からは青いレーザーが射出され、ある一点で交わり、一本の太いレーザーとなり夜空に伸びていった。

 有栖川は、バスティの腕の角度を調整し、太いレーザーを、怪獣の体へおさめた。

 そして、銃口が連続して弾丸を射出した。弾丸はレーザーを貫き怪獣の体へ向かった。レーザーには接

しているものにエネルギーを付与する性質がある為、たっぷりとその恩恵を受けた弾丸は、怪獣の体に深く刺さり、内部で爆発した。

 爆発は怪獣の内臓を傷つけ、衝撃のたびに傷穴から血を噴き出させた。弾丸を受け続けている怪獣は悶えており、後数十秒攻撃を続ければ、昇天もするであろうと、予想された。

 しかし、怪獣は奇声をあげていた大きな口を、歯を食いしばって閉じた。そしてまた口を先程よりも大きく開き、火炎を吐き出した。

 初め、炎はだらしなく地面にたれており、森に火をつけたのみであったが、怪獣の目が白くなるほどに、その射程を伸ばした。

 炎を吐き出し続けている怪獣は、そのままで雄叫びをもう一度あげた。その時、一瞬であったが、炎がバスティに届いた。バスティの体で現在最も突き出た部分は右腕である。因って、炎は右腕を包んだ。

 炎に包まれた腕は、瞬時に装甲が溶けた。

 空気に晒される様になった後も、バスティの右腕は赤く発光しており、銃口は溶け出した金属が冷やされたことにより塞がっていた。

「くそぅ。くそぅ。どうすれば」

有栖川はそう嘆くしかない。必殺のエネルギー攻撃は再び撃つにはまだ時間が必要だったし、まともに動くことも出来ない。怪獣は炎をボトボトと零しているだけであったが、もう一度雄叫びをあげられると太刀打ちの仕様が無かった。

 有栖川が嘆いているその時、怪獣の体が爆発した。初めの爆発に続いて、二回目三回目と何回も何回も怪獣が爆発した。

「な、何だ?」

有栖川は周囲を見回した。しかし、周りが暗い為何も見つけられ無かった。先程の爆発は何だったのか疑問に思っていたとき、一つの無線が入った。

「よう、久し振りだな」

その声は、有栖川が夕方に聞いた声であった。有栖川は、それで漸く状況を理解した。先程の爆発はミサイルであると。

「じゃあ、それじゃあ、自衛隊が僕を掩護してくれたってこと?」

「まあ、その通りだ。よかったな。俺は睡眠を邪魔されて迷惑だったがな」

それを聞き、有栖川は心から安心することが出来た。

「まあ、感謝するよ。ありがとう」


「こちらジェイソン2、目標の撃破を確認」

ミサイルを放ち、怪獣を倒した新谷は管制に報告をし、その後、帰路についた。有栖川の後処理は地上の部隊が行うことになっており、関わることでは無かった。それに、非常に眠たかった。


 

 翌朝、新谷以下先日のスクランブルに出た四人がブリーフィングルームに集められていた。全員、眠気がとれておらず、気怠い雰囲気が漂っていた。

 そこに、一人の男が入ってきた。彼は、新谷達の所属する第三〇一飛行隊の隊長である。それまでだらけていた新谷達は、彼の姿を見て立ち上がろうとしたが、彼はそれを遮った。

「君たちは疲れているだろう。まあ、気楽にきいてくれ。今日話すことは、君たちの異動先についてだ」

その言葉を聞いて、部屋にいた全員が動揺した。

「いや、わるいことでは無いよ。昨日君たちが見つけたロボットは自衛隊が管理することになったんだ。有栖川君の許可も取っている。そこで、新しい部隊を設立することにした。で、隊員には誰が最適か、となったときに、君たちの名前が挙がったんだよ。了解してくれるね?」

基本的に、異動を拒否するなら退職するしか無い。なので、答えは一つしか無かった。

「了解!」

全員が快く答えたのをみて、隊長は笑顔で部屋を出て行った。


最後まで読んでいただいて有り難うございます。

続きは未定です。すいません。

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