体力テスト
次の日、学校に行くと霧峰くんがとても申し訳無さそうに謝ってきた
許すも許さないもないけど⋯
「明日は体力テストか~もう聞くだけでテンション下がるなぁ~」
スポーツもあまり得意では無いらしい恋はぼやきながら自分の前の人の椅子に逆向きに座りの背もたれにダラーっとした格好で項垂れた
「私は嬉しいけど!授業潰れるしぃ~」
明は恋とは打って変わって嬉々としてはしゃいでいる
こういう時の明は特に好きだな〜ほんとに可愛い
「うぐぐ⋯まぁ、その点に付いては同意見だけどね!!やっぱり授業潰れるのはめっちゃ嬉しいし‼︎よっしゃー‼︎」
悩んだ挙句やはり授業が潰れると言うことを考えるとそちらの方が勝ったようだ
「さすが天然バカコンビだな!」
フッと鼻で笑いながら、すかさず優がツッコミを入れる
内心わたしも思っていた事なので口から出てしまったのかと思ったのだが杞憂に終わった
『ひっどーい!!』
それに対して2人はハモって文句を言った
息ぴったりだなほんと
「こらこら優くんそんなこと言ったらダメよ!」
多少呆れながらもいつも通り庇ってくれる
そんな奈穂ちぃを見て大人だなと私は思うのだ
「奈穂ちぃ~!やっぱり奈穂ちぃは心の救いだ〜‼︎」
そう言って明は奈穂の腕に抱きつこうとしたが次の返答にピタリと動きが止まってしまう
「奈穂お前も実際バカだと思ってるだろうが!!」
やれやれと言わんばかりに首を横に振りながら同意を求める
心の底から呆れているようだが実際、優も勉強出来るかと言われたらそこまでと言った感じで普通だ
まぁ、私からして見ればだが⋯
「まぁ、否定は出来ないけど・・・」
話を急に振られて困った様に返答している
奈穂ちぃに感しては完璧だと思う
頭も良いし、スポーツも出来る
そしてなにより同い年なのにそうは見えない安心感というか包容力を持ち合わせている
「まさかの奈穂の裏切り!!私は信じてたのに〜」
恋が冗談混じりに言うも何かを求めるかのように一斉に明と恋が私の方を見て来た
「よしよし。この世に完璧な人はいないんだから!!落ち込まないの!なっ」
私がその言葉を発した瞬間教室全体が一気に静まり返った気がしたがすぐガヤガヤと元に戻ったので気のせいにしておこう
「それよりによって怜が言う!?」
流石に恋もその点に関しては異議がある様だったが気づいてないふりをしてなんとか話を躱したのだった
「怜~!大好きっ!!」
だが明はお構い無しに私にギュッと抱きついてきた
なので私も対抗するように明をギュッと抱きしめ返した
やっぱりこうされると落ち着くなと顔には出さないが内心ではそう思った
「そう言えばうちのクラスに空席あったじゃん」
何の脈絡も無しに恋が話題を変えてきた
「うん」
まぁ良いかと思い明を解放して恋の言ったことに対して肯定した
その横で何故か明は膨れっ面で残念そうな顔をしていたのだが
「明後日から戻って来るらしいよ!鈴羽先生情報!!」
嬉しそうに恋は親指をグッとたててウインクしてきた
「へ~。そうなんだ。楽しみだね!」
嬉しそうに明は返した
知り合いなんだろうか、戻って来ると言う事はそれしか無いだろうが
「そうね!」
恋は1度頷き満面の笑みを浮かべた
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〈50m走のテストをしてない人は速やかに受けて下さい。〉
体育委員長からの放送がスピーカーを通して学園内全体に流れる
そう今日はスポーツテストの日だ
1日かけて全校生徒が、シャトルランを除いた全種目と、視力検査と聴力検査、身体測定をするので丸一日授業が潰れるのだ
だけど大抵の人が午前中迄には終わるので他のクラスの人としゃべったり他クラスに遊びに行ったりとほぼ休み時間に近いと言える
そんなこんなで私たちは身体測定から順にこなして行っている
勿論、優は他の男子と別行動をしている
「次はどこ行こっか!?」
明は多少はしゃぎつつ次々に種目をこなして行く
「もうどこでもいいから早く休憩したい」
恋は逆に駄々をこねているがサッサと終わらせたいのは皆と同じらしい
そのやり取りを私と奈穂ちぃとお姉ちゃんは苦笑混じりに見ている
「よし!じゃあ次は体育館行こうか!それで最後に50mに行こうか」
二人だけじゃ話が進まないと思ったのか、奈穂ちぃが仲裁に入っていった
「そうね」
どうやらお姉ちゃんも見兼ねていたらしい苦いかおをしながら頷いた
「そうと決まればさっそく行こうか」
私は素早く行動に移して奈穂ちぃの後に続いた
「待って~待ってってば〜!」
ふたりは慌てて後に着いてきたがいつもの事だからだれも特に気にしない
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「後は50mだけね」
伸びをしながらお姉ちゃんは言ったが少し陰りが見えた気がした
「うん」
先ほどとは、うって変わって低いトーンで明が頷く
「どうした?」
理由は解りきっているがあえて私は分からないふりをして聞く
「なんでもない」
だが何でもないの一言だけ
まぁ、予想通りの応えだ
「ならいいんだけど!」
わたしはというと一言添えて気付かないふりをする
そして私と明の順番になった。明はこちらをチラチラ見ているが相変わらず気付かないふりを続行する
「位置に付いて、よ~い、どんっ!!」
私と明はみるみるうちに差を開いて行く
ついには明とも差が開いた。そしてそのままゴール
「凄いっ!!陽向兄妹は、運動神経抜群と聞いていはいたけど、ここまでとは!!」
見ていた誰かが感嘆の言葉を漏らした
周りがガヤガヤしている
「うん!!」
そんな会話をよそに私達は余った時間に何をするか考えていた
「━━━ちゃん。怜ちゃん!!」
誰かに名前を呼ばれてる事に気付きハッとした
「どうした?」
実を言うとボッーとしていたのだが、わたしは何も無かったようにしれっと返答した
「いやいや。どうしたってのはこっちのセリフなんだけど」
そう言って困った様に一緒に走っていた人が言う
「あぁ。ごめん違う事を考えていた」
訳を説明して話したら素直に納得してくれたので安心してホッと息をつく
「ならいいんだけど!」
そう言ってうんうんと頷きながら応えた
「それで、えっと…なんで名前を知って・・・」
疑問に思った事を質問すると当たり前と言わんばかりに驚いた顔をした
「決まってるよ!新入生代表だったしそれに陽向家の人は有名だし!」
ん?
有名なのか⁉︎
わたし初耳なんだが‼︎
「そうなんだ!?」
ヘェ〜‼︎知らなかった
わたしはその言葉に驚きを隠せなかった
「そうそう!私の名前は隼田七華だ。よろしく」
ショートカットの黒髪でまんまボーイッシュ系だ
本人の前ではいわないが、男の子と間違われてもおかしく無いだろう
「あぁ!よろしく」
手を出して来たので軽く握手をした
そして、各自自己紹介をしていった
「じゃあ、私はこれで!」
嬉しそうに手を振りながら、七華は一言だけ言い残し去って行った
「なんかちょっとだけ怜ちゃんに雰囲気似てるね」
ボソリと呟いた奈穂ちぃを横目でみたら目が合いニコっと笑ってきた
「そうかぁ?」
自分では分からないが⋯
なんだろうか
「しゃべり方が同じだからじゃないかな?」
みんなそれだと言わんばかりに一斉に明を見た
集中砲火を浴びた明は何っと言った感じで驚いていたのだが…
「さてもうそろそろ教室に戻るか。」
話を一端区切りわたしは提案した
勿論みんな異議はなく教室に戻って行った