前編
「アトモスフェール」の続編になります。
願わくば、こちらから読んでいただく事を……
「それにしても、まいったね。こりゃ・・・」
天井裏から出てきた黒歴史満載のノートを、畑の片隅で灰にして、母屋に帰る途中で奇妙な処に迷い込んだのだけど……
コムロックを使って… ああ、こいつはスマホくらいの大きさの汎用端末だ。こいつで通路の先にある扉を開けたら、通り抜けた先は、エアロック兼用の小部屋でした。
このあたりは、全部同じような造りになっているはず。それこそネジ一本に至るまで同じ部品を使っているし、部品の配置も全く同じにしてある。
『栄光ある失敗』と称された宇宙船事故は子供のころにテレビで見ていたんだ。
グラマンとノース・アメリカンはライバル企業だったし、横のつながりが良かったとは言えなかったから、部品の互換性があれば、こんな苦労は無かっただろうなぁ。
これなら、何かあっても簡単に対処できるだろうし。
いろいろウンチクかたむけたけど、建前はここまで。
ぶっちゃけイラストとか描くのが面倒だったからだよ。
だから、基本的な構造はどれも同じなんだ。えっへん。
イラストや図面は描いたけど、その中を歩き回れるとは思ってなかったなぁ。
とりあえず探検、探検、と。
ふむふむ、こいつは惑星間空間にある小型の宇宙ステーションじゃないか。
アステロイドベルトの内側にいくつだったかな…… 忘れた。
鼻歌まじりで、歩き回っていたら…… あっさりと捕った。
まさか人間そっくりのアンドロイドに後ろから銃を突きつけられたのには、びっくりの一言だったよ。若いころに武道とかサバゲーを嗜んでいた関係で、人の気配には敏感な方だったんだが。
機械には勝てなかったか。
まあいい。
事情聴取に対して、適当に受け答えしていたら、ストレスその他で、精神的にヤバい事になりかかっていたと勘違いしてくれたので、それに乗ってみるのも面白いかもしれないなぁ。
そうそう、俺は国連宇宙軍の将校だったようだ。
それもフィラデルフィア効果とか何とかいうものの影響で、行方不明になっていた人物の一人らしい。そんな事件は知らんが、何かあったんだろう。
管理コンピューターに言わせれば『あまりにも様子がおかしいので身柄を保護する事にしました』だとさ。
管理コンピューター、もとい、人工知性体だったな、この世界では。
こいつは、意外と世話好きだと思う……
『そろそろお食事の時間ですけど、ラウンジでいいですね』
「ん。頼む」
『今日の献立はカレーライスです』
「たまには腹いっぱい食べたいもんだが?」
『駄目です。基本的に高タンパク高カロリーの食事ですよ。ぶり返しますよ? 糖尿病とか高血圧とか、いろいろと』
「人工知性体にもアシモフ・コードは適用されてるn『私の名前は、デイジーちゃんですからね? わかってくれないと、もう二度とカレーライス作ってあげませんからね』 ……わかった」
『わかってくれて良かったです』
ほかにも医学検査で、要治療項目としてピックアップされたものの治療が始まった。
まあ、これは軍隊ならば仕方がない、というか普通の流れかな。
いざという時に体が動かなかったでは仕事にならん。
それよりも、行方不明者がいきなり姿を現しても問題にならないんだろうかね。
まあいい。
最新の事情が手に入ったし、治療の結果、腰痛や糖尿病、抜いたはずの歯まで全部元通りになったし。
小学生になる孫がいるくらいだから、俺はそれなりの年齢だし、そういう年齢になれば、なったなりに故障個所も出てくるわけだ。
だがもう、髪型に不自由することもない。伊賀煎餅やたくあんだって楽勝だ。
伊賀煎餅というのは、知らんか。
まあ、その… あれだ。
加賀の金剛棒なんかもそうだが、かた焼きという奴で、伊賀のものは日本一の硬さを誇る郷土食… ってところかな。
説明書には、食べ方と歯を折らないようにという注意書きが付いてたもんだ。
でもお茶でふやかして食べるというのは、煎餅の食べ方としてはどうかと思うよ。
そうでもしなければ食べられない硬さというのも、どうかとは思うけれどね。
まあいい。
何はともあれ健康に勝る宝はないよ、うん。
結婚して、子宝を授かり、孫までいる身だ。あとは孫たちの成人式… は無理だろうから、なぁ。あとは大病を患わなければそれでよし、と思ってたよ。
彼岸のあたりのうららかな日に、縁側でひなたぼっこをしながら眠るように… というあたりが理想だなあ、うん。
「ま、目が覚めたら病室、ってトコだろうからな」
無意識のうちに口について出た言葉に、ふと安心してしまった俺がいる。
ああそうか。これは夢なのかもしれないな。
立ち上がろうとしたときに、ちょいと足元がふらついたような気がする。
日射病かなんか、ってところか。
……と、自分を慰めるのも何回目かな。いい加減に現実を受け入れよう。
後編は、明日アップの予定です。