肩越しに ―Who?―
参考は(少々脚色していますが)、母が同僚から聞いた体験談です
(体験者:根来那智)
事の始まりは、ある夜の草木も眠る丑三つ時。
私はベッドの中にいた。何となくうっすら意識が浮上して、うとうとしていたとき。
(……?)
ゆさゆさ。
突如布団越しに身体を揺さぶられた。此処は一人部屋だから私しか居ないはず。でも珍しいことじゃない。震源辺りを手で払って眠りについた。
今日の授業や休み時間は『何も』現れなかった。『何事』も起らなかった。要するに(たぶんつかの間の)平和だった。
そして放課後。学内パトロールも滞りなく終わり、私はトイレで化粧と髪留めの位置をなおしていた。すると。
ぽんぽん。
急に後ろから背中を叩かれる。正面の鏡には何も映っていない。……またか。
振り向かないで出て行く。こういうのは無視に限る。そのまま部屋へ戻った。
「おっかえりー」
友人のウィッカが来ていた。彼女は突然笑顔を引っ込め、きょとんとこちら見てくる。
……おかしいな、髪も化粧もさっき手直ししてきたばかりなんだけど。
「なあに?」
私の顔に、何かついてる?
「連れてきちゃったの? ついてきちゃったの?」
「は、」
いや、彼女は私の顔でなく、私の肩越しを見ていた。
私の肩を叩いた本人がついてきてしまったらしい……。