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だから綺麗に忘れてください

掲載日:2026/03/20

X(旧Twitter)で、ランダム指定された書き出しと終わりの言葉で物語を作るという遊びにチャレンジしました。

お題は下記のとおりです。


---------

志茂塚ゆりさんには「時間は止まってくれない」で始まり、「だから綺麗に忘れてください」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字)以上でお願いします。

 時間は止まってくれない。


 もう何年もほったらかしのSNSのアルバムに眠る、桜の木の下で撮った写真には、仲良く並んだふたりの姿が保存されているけれども、記憶の中の互いの姿はどうだろうか。

 あの頃とまったく同じまま残されているだろうか。同じ純度を保っているだろうか。


 たとえば、進路相談が終わるのを待っててくれたとき、帰りのコンビニで雪見大福を買ったよね。分けっこしたときのことを覚えてる?

 ふたりとも口の周りを粉だらけにしてさ、楊枝が一本しかないから、店員さんにスプーンをもらって、落っことしそうになりながら食べたでしょ。

 そのとき、あなたは「あいすまんじゅうもおいしいよね」って言って、そこから好きなアイス談義で盛り上がった。

 でも私は、「なんで今、それを言っちゃうんだろう」って、悲しくなったんだ。だって、あいすまんじゅうじゃ分けられないじゃん。どうしてふたりで食べてるときにそれを言うの?

 そんなことは、当然、言わないし言えない。落胆を見せないようにして、楽しそうな自分を演出してた。そういう私の寂しさは、この写真の中に映りこんではいないと思う。

 写真の中の私は、ピカピカの笑顔であなたと並んでる。


 だって、三年間ずっと一緒だったじゃん私たち。ずっと楽しいだけなはずがないじゃん。なにか我慢してくれてたんだよね。

 そういうのを、ぐっと押し殺したり隠したりしながら過ごしてきたから、私たちは仲良しだったんだよね。

 お互いに、言葉にできない何かを飲み込んで、写真の中でニコニコ笑ってる。


 あれから随分経ったけど、この写真だけを見ていたら、すっごく楽しい三年間だったなって思うの。それこそ、飲み込んできたモヤモヤを忘れそうになるくらい。

 でも、それって良いことなんだろうか。誠実なんだろうか。

 大好きだから、寂しくなった。期待したから、裏切られた。あのころのモヤモヤは、「あなたといて楽しい気持ち」の裏返しだったんだなって、今は思う。

 そういう細部は、時間が経つにつれて抜け落ちていく。いつか、雪見大福もあいすまんじゅうも忘れていく。

 そして美化された上っ面だけが残るなら、写真の中の楽しそうな私たちの笑顔が、すごく薄っぺらに見えてしまう。

 あのころの気持ちが、陳腐な思い出へと薄まるくらいなら、私はこの写真を、もう何年も誰もアクセスしていない、ほったらかしのアカウントのデータを削除するよ。


 もしもあなたも私と同じなら、あのころの私たちの記憶を大切に思ってくれるなら――だから綺麗に忘れてください。


(了)

即興をお読みくださりありがとうございました。

以前にも似たようなお題ものにチャレンジしたことがありましたので、挙げさせていただきます。


「優しい嘘なら許されますか」

https://ncode.syosetu.com/n3788fl/

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― 新着の感想 ―
おー! こう来ましたかぁ! ちょっぴり切なく、でも写真に写りきってない思い出たちが、モヤモヤして気持ちが不一致だったからこそ鮮明なのかもというリアルさもあり…。 お題で書く物語、とっても楽しませていた…
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