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できると思って、やっぱり赤ちゃん  作者: 臥亜


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7/11

スーパー赤ちゃん、YouTuberになる

事件は、パパの一言から始まった。

「これ、バズるんじゃない?」

 ママがゆっくり振り向く。

「なにが?」

 パパはスマホを構えている。

 その先にいるのは――

 ハル(1歳)、オムツ姿。

 ヨーグルトまみれ。

 顔面ほぼ白。

「見てこの顔!天才的!」

 ハル、スプーンを持つ。

 そして。

 なぜか自分の頭に塗る。

 べちゃ。

 パパ、爆笑。

「ほら!今の今の!」

 ママ。

「拭いてから言って」

 ◇

 夜。

 パパは真顔で編集していた。

「タイトルどうする?」

 ママは洗濯をたたみながら言う。

「やらないって選択肢は?」

「ない」

 即答。

 そして投稿された動画。

【1歳、ヨーグルトを理解していない】

 再生数:12。

 翌朝。

 再生数:14。

「増えてる!」

 誤差だ。

 ◇

 その日の夕方。

 事件が起きる。

 ハルが突然、カメラを見て言った。

「ぱぱ」

 完璧なカメラ目線。

 間。

 そしてニヤリ。

 パパ、固まる。

「今の撮れた?」

 撮れている。

 投稿。

【1歳、完全に分かってる顔】

 翌朝。

 再生数:8,200。

「え?」

 パパ震える。

「え?」

 ママも見る。

「え?」

 コメント欄。

“このニヤリやばい”

“将来有望”

“うちの子もこれやる”

 パパの目が輝く。

「来た」

 来てない。

 ◇

 三日後。

 フォロワー3,000。

 パパが言う。

「企画考えよう」

 ホワイトボード登場。

・ドッキリ

・検証

・泣き声ASMR(ママ却下)

 ハルは床で積み木を食べている。

 ◇

 撮影開始。

「はいハル〜今日はパパが消えまーす!」

 パパ、テーブルの下へ。

 ハル、無視。

 積み木をなめる。

 パパ、テーブル下でささやく。

「いないよ〜?」

 ハル、積み木を投げる。

 撮影終了。

 再生数:97。

 コメント。

“前のほうが自然で好き”

 パパ、沈む。

「演出が強いのか…」

 ◇

 その夜。

 ハルが転ぶ。

「ばっ」

 すぐ泣く。

 ママが抱き上げる。

 パパ、カメラを構える。

 ママ、止める。

「やめて」

 静かに。

「これは撮らなくていい」

 パパ、止まる。

 ハルは泣きながらママに顔をうずめる。

 カメラ越しじゃない。

 ただの家族の時間。

 パパはスマホを下ろす。

 少し黙る。

 そして言う。

「さっきの動画さ」

「うん」

「バズったの、ハルがすごいんじゃなくて」

 間。

「俺らが、ただ笑ってたからだな」

 ママ、ふっと笑う。

「うん」

 ◇

 翌日。

 パパは投稿した。

【今日は投稿なし。家族会議中】

 コメント欄。

“無理しないで”

“家族優先で”

“それがいちばん素敵”

 パパ、うなずく。

「このコメントの方が泣ける」

 ハルは何も知らずに言う。

「ぱぱ」

 パパは抱き上げる。

 カメラは回っていない。

 それでも。

 今がいちばん、バズっている気がした。

 ◇

 僕は一歳。

 カメラがあってもなくても、

 泣くし、笑う。

 世界はたまに光るけど、

 抱っこはいつも同じ。

 スーパースターにはなれなくてもいい。

 ちゃんと赤ちゃんでいられれば。

 それで十分。

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