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できると思って、やっぱり赤ちゃん  作者: 臥亜


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12/12

誕生日


朝。


ハルは目を覚ました。


今日は特別な日らしい。


それは空気でわかる。


朝から家族がそわそわしている。


ママは台所でケーキを隠すようにしているし、

パパは風船をふくらませながら言っている。


「まだ見せるなよ」


ミオは腕を組んでいる。


「どうせすぐバレるよ」


ハルは考える。


バレる、とは何だろう。


とりあえず泣く。


「うぇぇぇん!」


パパが風船を持ったまま走ってくる。


「どうした!?」


ママが言う。


「何も起きてないよ」


ミオが言う。


「たぶん“かまって”」


正解である。



昼。


ケーキが登場する。


丸い。


白い。


いちごが乗っている。


ハルは立ち上がる。


「おおお!」


歓声。


しかし次の瞬間、


ハルは指を伸ばし――


ケーキに突っ込んだ。


べちゃ。


部屋が静まる。


ママの顔が止まる。


パパの口が開く。


ミオだけが言う。


「やると思った」


ハルは満足そうに手を見つめる。


甘い。


すばらしい。


パパが慌てる。


「写真!まだ撮ってない!」


ママ。


「先に止めて!」


ミオ。


「もう遅い」


ハルは第二撃を放つ。


べちゃ。


ケーキの山が崩れる。


誕生日ケーキ、崩壊。


沈黙。


そして――


ハルが笑う。


家族も笑う。


なぜか笑う。


ママが言う。


「まあ……二歳だしね」


パパが言う。


「伝説の誕生日ケーキだ」


ミオが言う。


「去年よりひどい」



ろうそくが二本、立てられる。


ケーキは少し修復された。


少しだけ。


ママが言う。


「ふー、だよ」


ハルは考える。


そして叫ぶ。


「ふー!!」


勢いが強すぎて、つばが飛ぶ。


ろうそくは消えない。


ミオが言う。


「もう一回」


ハル。


「ふーーー!!」


消えた。


拍手。


ハルは驚く。


泣きそうな顔をする。


そして笑う。


世界を動かした顔だ。



夜。


ケーキの甘い匂いがまだ残っている。


ハルは眠っている。


二歳になったばかりの顔で。


ミオはこっそり近づく。


小さく言う。


「おめでとう」


返事はない。


でも胸が上下している。


ちゃんとここにいる。


ミオは思う。


去年まで、ハルは世界の真ん中だった。


今も、たぶん少しそうだ。


でもそれは、


少しずつ変わっていく。


ハルは大きくなる。


抱っこは減る。


泣く回数も減る。


でも――


今だけは、まだ。



この家でいちばんえらいのは、たぶん一歳だった。


でも二歳になった今日、


少しだけえらくなくなった。


そのかわりに、


家族になった。


春が来る。


時間はやさしく残酷だ。


それでも今夜だけは、


四人分の寝息が


同じ速さで重なっている。


それで、十分だ。

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