第3話 お菓子を持って魔王城へ!①
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今ののほほんとした話からは考えられないくらい壮大な話を想定しているので、楽しみにしていてください。
家に帰ったシュナは、パパにそれはそれは怒られた。ゲンコツこそ落ちなかったが、雷は落ちた。
「遅い!!門限を過ぎてるぞ!!」
ピシャーン!!!と風船が割れたような大声で叱られる。
「ご、ごめんなさい…」
財布しか入っていない、しかしぬいぐるみの沢山付いた学校指定のトランクを持ったシュナは、気まずそうに視線を逸らす。筆記用具すら持っていないのだから、学校へのやる気のなさが伺える。
白色で目の青いネコとウサギとコウモリ、白いふわふわしてるだけのハートのキーホルダーなどが揺れる。
流石のシュナもパパ、リギドゥス・エクレティアには逆らえなかった。リギドゥスは、厳しいが心配や好意は素直に伝える男だ。柱時計のような男だった。髪はシュナと同じ銀髪で、眼は鮮やかな緑色をしている。
「まぁまぁパパ、無事に帰ってきたんだし、いいじゃありませんか」
「プラキダさんは寛容が過ぎる!シュナ、心配したんだぞ!!!先生からも、魔王城に突っ走ってから帰って来ないと聞いて…!」
「うん、色々あってね。聞いて!魔王と仲良くなったの。魔法を教えてもらうんだ!」
シュナは両親と仲が良い。
怒られたことなんて気にしないで、雑談に移った。
「あら〜、そうなの?素敵ねぇ。シュナは学校で真面目に授業を受けないから、助かるわぁ。そのまま家庭教師になってくれないかしら」
プラキダ・エクレティアは、それは良いことだと頬に手を当てて言った。シュナの呑気さはプラキダ譲りだ。まるで春の陽気のようで、干したての布団のような女だ。黄金色の髪と、シュナと同じ青色の目をしている。
「魔王と仲良く!?やめなさいシュナ!!魔王は冷徹無慈悲で、全てを計画に収める策略家だ!利用されてお終いだぞ!!」
「えぇ〜、そうなの?でも関わってみないと分かんないじゃん!」
「被害を被ってからでは遅いという話だ!!」
「ふ〜ん。ま、大丈夫だよ!あ、ママ!今日の晩御飯なに?」
「ハンバーグよ〜」
「ママの作るハンバーグ大好き!!」
「父さんも好きだ!!!」
「あらあら〜」
穏やかな家庭だった。平和を絵に描いたような。
シュナはご飯をよく食べて、お風呂でほかほかになって、すやすやよく眠った。
ただ、最近は少し暑い。夏の日本程は暑くならないが、真夏には最高気温は35°Cくらいまでいく。だからシュナは麻のパジャマからお腹を出して、アチアチ…と思いながら寝ていた。
シュナが住んでいる国はシュニトラスという。そこの首都シュニトラスに、シュナは住んでいる。
シュニトラスは、夏は乾燥して気温が高くなる。海に面した崖で、柑橘類や、オリーブ、ワインなどが特産品だ。
地球でいうルネサンス様式の建物が多くて、独特な華麗な雰囲気を醸し出している。
次の日。
学校のある日だったが、シュナは朝だけ学校に行って出席だけ取ってもらった。午前中は中庭の薔薇の下でお昼寝した。その後、学食でお昼ご飯を食べた。午後になってからは、気ままにシュニトラスを歩いている。
大通りを歩くと、お菓子屋さんがある。
「フェナにお菓子買ってあげよ〜」
焼きマシュマロのような甘い匂いのするお菓子屋さんに入った。
ショーウィンドウにはお菓子を持ったピエロのオモチャがいて、口についている風船ガムのモチーフが、膨らんだり萎んだりしている。その正面には、カラフルなキャンディが並べられていた。屋根下には、三角のガーランドが垂れ下がっている。
ドアを開けると、ドアベルがなった。店員さんの来店を告げる高い裏声が響く。
「いらっしゃいませ〜!!」
「何買おうかな〜」
売っているのは、グミ、クッキー、ガム、キャンディー、フィナンシェ、マカロン、マシュマロ、バウムクーヘン、パイ、チョコレート、などなど。様々な種類の美味しいお菓子を扱っている。
只のお菓子だけじゃなく、魔法の効果のある不思議なお菓子もある。
「うーん。…君に決めた!すみませーん、普通のマカロン3つと、こっちのマカロン3つ下さい!」
「はい、お味はどれになさいますか?」
「普通のはバニラとチョコとキャラメルで、こっちのはイチゴを3つお願いします!」
「はい、お待たせいたしました!お買い上げありがとうございます!」
「はーい、ありがとうございまーす!」
シュナはマカロンを持って、外に出た。
「じゃ、唱えちゃうよ〜!」
シュナはマカロンの入った箱を高く掲げる。
「フェナ・ドルエフ〜!!」
周りの人がなんだ?と見るのを気にせず、箱を掲げ続ける。すると、足元に赤い魔法陣が浮かんで、シュナは転移した。
先日の、いちごモチーフの可愛らしい空間に転移した。フェナが机の隣に立っている。
「ようこそいらっしゃいました、シュナ。お待ちしておりましたよ」
「うん!お邪魔します!フェナ!マカロン持ってきたよ!」
「おや、ありがとうございます。では、魔法の練習をした後お茶にしましょう」
「はーい!」
マカロンは冷蔵庫(魔法石仕掛け)の中に入れておき、2人は練習場に行った。石畳のある程度広さのある空間で、的がある。
「貴方は僕達魔族と同じ魔法の使い方ができるので、無言でも魔法が使えますね。ですが、今回はまず、呪文ありで、形から入ります。その方がその魔法を行使する感覚が掴みやすいので。その後、無言で魔法が使えるように練習します」
「うん!魔族は呪文使わないけど、どう練習してるの?」
「魔族も呪文から入りますよ。詠唱とは、魔族にとってはイメージを具体的にする為の手段で、人間にとって体のマナを適切な魔法に変換して出力する為の道具です。だから魔族は詠唱がなくても魔法が使えて、人間は詠唱がないと魔法が使えません」
「へー!そうなんだ!」
「昔は人間と仲が良かったので、人間と魔族は同じ呪文を使います。今は不仲ですが…」
「ね!もっと私達みたいに仲良くすればいいのにさ」
「……そうですね」
フェナは特に表情を変えず、そう小さく呟いた。
「今日は、貴方が初対面の時に失敗した、精神攻撃に対する防衛術を教えましょう。」
「お願いします!」
シュナはニコ!と笑って、杖を掲げた。
「まず、イメージですが。自分の意識に"接続"、"非接続"のスイッチがあると考えます。精神的な干渉を感じたら、物理的な電気を切るように自分の精神と外界とを"非接続"に切り替えるのです。相手との精神的な回路を完全に遮断するイメージです」
「ふむふむ」
今でいえば、WiFiと5Gを切ってネットからの攻撃を止めるようなイメージだ。
「自分の精神がどこにあるのかも意識しましょう。例えば、脳、心臓、お腹など。スイッチがどこにあるのか分からないと押せないように、精神がどこにあるのかイメージが固まっていないと防御できません」
「うんうん」
「呪文は、守心。意味は、精神を守護せよ、です。では、やってみましょう。僕が精神汚染の魔法をかけますので、防御してください。」
「はい!」
「行きますよ。幻視!」
フェナは杖を振るい、幻覚を見せる魔法をかけた。ちなみに幻覚の内容は、上級者ならばかける側が決めることができる。フェナは決められる側である。
シュナはとりあえず、脳の辺りに精神があるようにイメージした。そして、バチッと接続の電源をオフにするイメージをしてみた。
そして、呪文を唱える。
「守心!!」
しかし、シュナの視界には恐ろしい顔をした悪魔が見えてしまった。
「きゃー!!なんか悪魔が見える!!」
「ダメでしたか」
フェナは幻視を止めた。
「うーん、なんかダメだった……」
「ふむ。精神のある場所のイメージがダメなのでしょうか。……少し失礼しますよ」
フェナはシュナに近づき、シュナの顎をクッと上げた。
突然の事にシュナは驚く。
「??」
シュナは僅かに首を傾げて、パチパチ瞬きする。その顔の可愛らしさと言ったら、目が青い子猫のようである。
フェナは徐に、シュナの唇に唇を近づける。
「!?!?」
シュナはドキドキして、心臓の辺りがガーッと熱くなった。顔も真っ赤になって、しかし、視線は魅惑的なフェナから外す事ができない。ホワイトリリーの匂い、唇の艷めき。頬に落ちたまつ毛の影の輪郭がくっきりと目に映る。
しかし。2人の唇が接触することはなかった。
接触する直前で、フェナはそっと離れてしまったのだ。
「……はい。どこに感情の昂りを感じましたか?お腹?頭?心臓??」
「はっ!?えっ!?そういうこと!?」
「えぇ。貴方の感情の昂りがどこに表れるかを確かめるにはこれが一番手っ取り早いと思いましたので」
「わ、わ、私のドキドキ返してよ!!!」
シュナは両手をグーにしてブンブン振った。フェナはくすくす笑っている。
「ふふふ。ドキドキさせてしまいましたね。失礼しました」
「もー……。えーっと、心臓?かな」
「なるほど。ではそこを中心に、魔法をシャットアウトするイメージを持ってください。出来ますか?」
「やってみる!」
「えぇ。では、行きますよ。幻視!」
「守心!」
シュナは心臓を中心に、外界との接続を切るイメージをした。
孤島にポツンと立っているような、暗闇の中で自分だけ光っているような感覚。
幻覚は────────見えない。
「成功した!!!」
「ふふ、おめでとうございます。上手にできましたね」
「うん!やった〜!!」
シュナは両手を上げて喜んだ。
「では、ティータイムにしましょうか」
「うん!その後は一緒にお昼寝しよ!」
「お昼寝……ですか。えぇ、構いませんよ」
「あ、もしかしてお昼寝あんまり好きじゃない?」
「あまり仮眠は取らないタイプですね」
「えー!お昼寝気持ちいいよ!気持ちがふわふわ〜ってして、ふにゃふにゃ〜ってなるの!」
「ふふ、そうですか。では僕も、お昼寝をしてみましょうかね」
そう言いながら2人は、イチゴの部屋に戻ってきた。




