第1話
作品説明に書いたことを置いておきます。
不真面目でアホだが強力な魔法を使う、天才魔法使いシュナ。修学旅行にて、魔王フェナと対峙します。異なる種族、2人の関係性はどうなっていくのか───?というお話です。
恋人になるまではそこそこかかる予定です。
転生要素は後々出てきます。
聖アルカディア魔法学園。男女共学の、15歳〜18歳の人が通う三年制の学園。煉瓦造りの建物で、清潔感のある広い学園である。特に中庭が広くて、品種改良された美しい薔薇が季節問わず咲いている。
そこに通う天才魔法使いが1人。シュナである。彼女は綺麗な銀髪と、群青色の瞳を持つ可愛らしい女の子だ。
彼女は生粋の天才だ。才能に溢れた、最強の魔法使いの生徒だった。
彼女は今3年生をしている。そして、本日は修学旅行であった。
「楽しみだね、シュナちゃん!」
「うん!次はどこ行くの?」
「雑貨屋さんだよ!もー、ちゃんとしおり見なよ!」
「へへへー」
この子は友達のエラーラだ。優しくて成績優秀なお友達。
シュナはしおりも読まないし、教科書も予定表も見ない。だが全部学校に置いておいているので、忘れ物はあまりしない。シュナはエラーラのロッカーも借りている。自分の分では足りないので。
授業中は中庭でピクニックしてるか、少し歩いて学園の外の花畑の中で寝ているか、机に突っ伏して寝ているか、人や猫、犬などの動物と遊んでいたりする。彼女は動物と仲がいい。
課題はエラーラに見してもらっていて、テストはカンニングしている。
それらのことをまるで悪いとも思っていないし、謝りもしない。まるで反省しないのだ。強く叱ってもこれなので、仕様のない。
彼女はやれば出来るのだ。バカではあるが、勉強はやれば十分できる。のにやらない。不真面目にも程があった。
だから、学園に通い始めてからは、クラスで浮きっぱなしだった。まともに勉強しないのに、実技では誰よりも強い魔法を使う。それは尊敬の対象にも、嫉妬の対象にもなった。
シュナ自身も、なぜそんな事ができるのか分からなかった。ただ感覚的に、本能的に強い魔法を撃てるのだ。
生徒達は、杖と呪文を用いて魔法を使うのが基本だ。
「インケンデ!!(燃えよ!!)」
鉄でできた薄い的から35cm程の火が上がる。普通級の火の魔法だ。ちなみに人間の魔法は、低級、普通級、最上級、超越級の順に強くなる。
「おぉ〜」
立派な火に拍手が上がる。生徒にしては上出来だ。
シュナもそれに倣い、杖を用いて魔法を使う。確かに、杖を使った方が魔法は使いやすい。杖はイメージの具現化を手伝うからだ。
「次!シュナさん!!」
「はーい!何が好きー?チョコミント〜!よりも〜…インケンデ!!」
シュナはふざけながら鉄板を燃え上がらせた。最近流行りのアイスクリームの曲のやつである。
悠に2mは超える大きな炎が上がった。
「こら!ふざけない!!」
「へへ〜」
ふざけてはいたが、その炎は誰よりも大きかった。周りの生徒は、
(あんなだけど魔法は強いんだよな…凄いなー…)
と思っていた。
「シュナちゃん!凄い、流石だね!!」
「でしょでしょ〜!!」
「でもふざけちゃダメだよ。本番で失敗しちゃうかもしれないし!」
「エラーラは偉いな〜。偉ーラってこと?あはは!」
「もー、真面目に言ってるんだよー?」
エラーラはいつも、シュナを褒めながら注意してくれる。優しいのだ。シュナが少しでも注意に耳を傾けてくれるようにしてくれている。
人間の用いる魔法においては、イメージ、杖、呪文、他集中力などの条件が魔法の発現において重要になる。中でも特に詠唱が大事だ。なぜなら、人間にとって詠唱は体のマナを適切な魔法に変換して出力する為の道具だからだ。
だが、シュナは呪文を正直覚えていない。前の人の呪文を真似しながら、イメージのみで撃っている。シュナは本当は無詠唱でも魔法を撃てるが、その事実は隠している。異端だと分かっているからだ。
実技の評価はS。苦手な分野もあるが、実技はSが多かった。
閑話休題。
一同は薬品や小物を売っている雑貨屋さんに行った。魔法を用いて作った、不思議な物が沢山売っているお店である。
「わ〜、古風なお店だね!古いお店なのかな?」
「そうかもね!」
シュナはそこで、鈴蘭の見た目の光る魔法具を見つける。
「あ、かわいー!エラーラ、これ可愛くない?」
「あ!かわいい!シュナちゃんに似合いそうだね」
「うん!これ買ってくるよ」
シュナはそれを買った。
そして、近くの川辺でそれを振り回していた。店のすぐ脇に、小さな浅い川が流れているのだ。
これの魔法具は振ると空中がキラリと光って、鈴蘭の色が発光しながら変わる。
ブンブン!!
「キャー!楽し〜♡」
調子に乗って振り回すから、こんな子供みたいなことも起こす。
「あっ!!」
ガシャン。
川辺に落とした。魔法具から割れでた強力な薬品で、川がみるみる汚染される。
シュナは焦った。こんな事が起きたとバレたら先生に怒られてしまう。
「じょ、浄化しなきゃ!!」
バシュ!バシュ!バシュ!
シュナの手から伸びた浄化魔法が、川を浄化する。普通級の浄化魔法だ。しかし、ただでさえ出力の強いそれを、執拗に何度も、何度もかけた。
シュナは知らない。川に撃つ浄化魔法は、普通級のやつを5回までにしないといけないことを。それ以上撃つと、微生物が死滅し過ぎて生態系が壊れるのだ。最悪、生物の中の常在菌も死滅してしまって生き物が全て死ぬ。
川は透き通り、底が見えた。まるで水なんてないみたいだ。少し遠くで、死んだ魚がぷかりと浮いていた。生態系をぶっ壊したことにも気が付かず、シュナは一安心する。
「シュナさーん、そろそろ集合時間ですよ!」
先生がシュナの元までやってくる。
「ん?なんですか、この川は…?干上がっている…訳ではありませんね。これはまさか、シュナさん、浄化魔法をかけましたか!?」
「は、はい。」
「何回撃ったのです!?まさか、5回以上撃ってないでしょうね!?」
「え、20回くらい撃ちました…普通級のやつ…」
「貴方!!!!お馬鹿!!!生態系が死滅すると授業で教えたでしょう!!!」
「ひ、ひぇ〜すみません…」
「仕方ありませんね…今度、近くの川から水を移すのを手伝ってください。そうしたら菌が戻りますから」
「はぁい…」
トホホ…と思いながら集合場所に行く。エラーラもそこにいた。
「シュナちゃん、また何かしちゃったの?」
「うん、川に浄化魔法打ちすぎちゃって…。」
「あぁ、ちゃんと授業受けないからー。ちゃんと受けないとダメだよ!」
「うーん、やだよーエラーラ〜!!授業受けるくらいなら遊んでたいもん。課題はエラーラがいるからなんとかなるしね!」
「もー。仕方ないなぁ。そうだ、シュナちゃん!シュナちゃんにペンダント買ったよ!」
「え!ほんと!ありがとう!私何も買ってないや。ごめんね。また今度お返しするね!」
「うん!どうぞ」
箱の中に入っていたのは、直径1.5cm程のサファイアのペンダント。なにやら魔力を感じる。
「なんか魔法が込められてるよね?」
「うん!誠実な関係を築く為の魅力がアップするんだって!シュナちゃんにこれからもいい出会いがありますようにと思って!それに、シュナちゃんの瞳の色に似てるから!」
「そうなんだ!ありがとう!嬉しい!今着けるね」
着けると、なんだか良い友達とかが出来そうな気持ちになってきた。シュナはこういうおまじない的なのとか、占いなどに影響されやすい。
「次はどこいくの?」
「自然公園の幻獣に会いに行くんだよ!だから、しおり見なよ!」
「はーい」
そっと聞き流した。
「そういえば、エラーラ。魔王って知ってる?」
「?うん、知ってるよ。魔族最強の王様でしょ?名前を言ったらいけないんだよね?呪いで居場所がバレるから!」
「うん。それで私、この間禁書見てる時にね、その名前を見たの。」
「え、まさか、シュナちゃん────────」
エラーラが焦って制止する前に、シュナはその名を口にした。
「フェナ・ドルエフ。って名前なんだって!」
シュナは怖いもの知らずだった。ハッキリとその名前を口にする。
エラーラの顔が青ざめる。
「シュナちゃん、言ったらいけないんだって────────」
途端、生徒達の足元に大きな赤い魔法陣が現れる。
バシュ!!
転移魔法が発動した。
「キャー!!!」
一同は、気づいたら知らない白い城の近くの、芝生の上にいた。
「ま、魔物だ!!」
そこには、2.5m程の骸骨の魔物が沢山居た。生徒達と先生は応戦するが、中々強くて苦戦する。
「ま、魔王に招かれたんだ…!!シュナちゃん、どうしてくれるの!?え、シュナちゃんどこ!?あ、あんなとこに!!」
エラーラは焦ってシュナを問い詰めようとしたが、シュナは既に遠くにいた。
シュナは魔王城の近くにいるとわかった途端、興奮しながらそこに向かって全速力で走り出したのだ。
ここに招かれるということは、この骸骨達を倒せないような奴は御免だということだろう。いいだろう、受けて立とうではないか。とシュナは思った。
骸骨が剣をシュナに振り下ろす。
シュナは杖を振る。
すると、
ドン!!
ベキャッ
空から大岩が降ってきて、骸骨を押し潰した。無詠唱魔法だ。しかも、既存の魔法には分類されないオリジナルの魔法。シュナはイメージを魔法にするから、既存の枠組みに収まらない魔法をも行使するのだ。
また他の骸骨も襲ってくる。
シュナはまた杖を振る。
今度は、地面から槍が生えてきて、骸骨を貫き砕いた。
シュナは楽しそうな顔をしている。もう魔王城は目の前だ。
「こんな雑魚に手間かけてる場合じゃないんだよね。なんたって私は今、人生で一番面白いものの目の前にいるんだから!!」
シュナは空を飛びながら高速で進んでいた。
門の前に来た。ピタリと止まる。門番は3mの骸骨。ハンマーを持っている。
相対する。シュナは杖を顔の前に斜めに構えた。
「こないならこっちから行くよ」
大して待ってもいないが、シュナは杖を振った。
ビュン!!
杖から鎌鼬のような鋭い風が飛び、骸骨の胴を真っ二つにした。
骸骨は立っていられず崩れた。ハンマーが大きな音を立てて落ちる。
瞬殺である。
シュナは門に手をかけた。
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