今日と言う日の生き方として
決断したあの日からもう半年も経った。
いきなり蹴っ躓いたあたしたちだけど。
今もこうして元気にやっている。
順風満帆とはいかないけどね。
「おねーちゃん、準備できた?」
「ええ」
狭い宿の一室。
準備を整えたあたしが振り返るとおねーちゃんのほうも同時に準備完了みたいだ。
ここはアイリーンから約2週間ほどのところにある宿場町だ。
あたしたちは冒険者としてここに居る。
「イエンさんもう待ってるかな?」
「かもしれないわね」
忘れ物が無い事を確認して部屋から出る。
二階から階下の酒場へ降りると、質素な服に身を包んだ一人の男の人がこちらを見上げた。
年齢は17歳。
バールの神官で信仰の旅をしている。
と言っても特に目的地の無い旅で、20歳になる頃にはバールに戻り、司祭となる子らしい。
いわばエリート……なのかな。
あたしたち姉妹がこの人と旅をしているのは一番最初にでくわした事件で知り合った魔法使いの女の子の紹介だ。
女の子二人にいくら司祭候補だからって男を紹介するのかと思ったけど
「ああ、安心してください。
私は女性には興味がありませんから」
と笑顔で言われてドン引きしつつも納得したものだ。
顔は良いのに、どこで道を誤ったんだろう……
いや、むしろ顔がいいからかな?
「マリッサ?」
「あ、うん、ごめん」
ちょっと考え事に嵌りすぎたらしい。
「アレイアさん、マリッサさん、おはようございます。
「おはようございます」
「おっはよ」
礼節正しい姿はいつもながら『神官』って感じだけど。
「今日には着くんだよね」
「ええ、ここから数時間歩いた所だそうです。
ゴブリンとは言え、数が多いと思いますので気をつけていきましょう」
あたしたちがここに居る理由はゴブリン退治だ。
なんでもこの宿場町近くの村がゴブリンの被害に遭っているらしい。
そんな初心者冒険者にうってつけの仕事なんだけど、あたしたちが受けるまでは放置されていたそうだ。
というのも、新人冒険者の数が激減しているのが大きな理由らしい。
盗賊団は青の軍が、大規模なモンスターの群れは傭兵団が悉く駆逐して回ったせいで、単純な退治の仕事は殆どなくなってしまったし、街道の治安が良すぎるために商人も過度の護衛を不要としてしまった。
そんな経緯から、初心者冒険者が育つ土壌がなくなってしまい、中級から上級の冒険者達には報酬が安すぎて見向きもされない依頼がほったらかしにされていたらしい。
更に悪い事に、なまじ冒険者ギルドなんて物が出来てしまった弊害が重なった。
冒険者に適切な任務を与えることを目的とする組織らしいんだけど、そこに所属する仲介人という制度が大きな問題となった。
仲介人は冒険者ギルドの仕事を精査し、報酬の調整をして適切な冒険者に話を振る事を目的としているんだげど、当然新米冒険者は見向きもされない。
全員がそうではないと言っても、任務失敗なんてことになったら仲介人の能力が疑われてしまうから、安全かつ信頼できる冒険者を選ぶのは当然なのだろう。
でも、そうすると報酬額が問題になる。
本来受けるべき冒険者よりも1つ2つ格が上の冒険者が受けるわけだから、報酬の適正額も上がってしまうのだ。
そのために泣く泣く依頼を取り下げたり、最初に依頼した金額でじっと待つしかなくなるわけで……
こうして郊外のそれほど報酬が高くない依頼は書類の底に埋もれてしまい、被害が増大し続けているらしい。
ついでに仲介人も無料奉仕でないし、ギルドだって同じだ。
そこには仲介料の二重取りも発生しているというのが専らの噂。
だからよほど懇意の仲介人が居ない限り、冒険者は冒険者ギルドを毛嫌いし、懇意の冒険者の宿で依頼を受ける方針を採り続けているらしい。
なんていうか、呆れるしかない。
この依頼もそういう経緯で誰も受けてくれず、再度依頼に来た関係者が泊まった宿の人に泣き言を言い、そしてこっちに回って来たというわけ。
なんでも冒険者ギルドからは、
「報酬が安すぎて誰も受けてくれない。
もう少し報酬を引き上げてくれ」
なんて言われたらしい。
酷い話だ。
ちなみにあたし達が冒険者ギルドに行ってもめぼしい依頼は受けられない。
これもまた仲介人がキープしてしまうため、『はずれ』依頼しか残ってないのよね。
一回それで酷い目に遭った挙句「仲介人を使わないから」なんて嫌味を言われたのはしっかり覚えている。
「マリッサ」
「ふぇっ!?」
またボーっとしてたみたい。
色々疲れとか不平とか溜まってるのかなぁ。
とにかく気合を入れないと。
がんばるぞー
山道を歩く事には慣れていると考えていた昔を少しだけ思います。
私はずっと薬師をしていたため野山に入るのは日課でした。
険しい所にしか咲かない花もあり、他の人よりはよっぽど動けると過信していました。
ずっしりと肩に食い込む痛みを感じつつ体を前に進めます。
武器、鎧、キャンプ用具に保存食……
これだけの装備を担いで山やダンジョンに向かうのがこれほど大変とは思いもしませんでした。
肩に当たる部分を広く継ぎ足す事で負荷を分散させる等、様々な知恵が私を助けてくれています。
マリッサは────妹は忘れろと言うけれど。
私は今の私を支えてくれる知識を今も大事にして歩いています。
「おねーちゃん。
これ」
妹が指し示す場所にはいくらかの足跡が残っていました。
目を凝らして見ると、どうやら山の奥へと向かっているようです。
「巣に帰って行くと見てまず間違いないですかね」
イエンさんも同意見とすれば、これを追って行けば目的地につけるということですね。
「でも、結構数多くない?」
マリッサの言う通り、少なくとも10匹は居そうです。
依頼では多くて5~6匹との話だったのですが……
「増えた可能性もありますね。
ゴブリンやコボルトは一年足らずで成人になると聞いた事があります」
「虫みたいだね……」
「ゴブリンを1匹見たら30匹はいる。
は冒険者の常套句らしいですよ?」
それは違う生物ではないかと思いますが、同じくらい繁殖力が強いと言う事でしょう。
「さて、放置された結果難易度が上がってしまったようですね」
あまり笑えない事をさらりと言います。
落ち着いているのか、のんびりしているのか……
「どうする?」
「引き返しても文句は言われないと思いますが……おや?」
イエンさんの視線が少し先を向きます。
そちらに視線を向けると、野山の真ん中にピンクがありました。
「あれ?
ティアちゃんだ」
「ん?」
どう見てもTPOを間違えている装いの女の子もまたこちらに気付き、振り返ると
「おう、いつぞやのか」
ゆっくりとこちらに近づいていきます。
「奇遇じゃな。
このようなところに何ぞ用かえ?」
「ゴブリン退治だよ。
でも、妙に数が多そうでどうしようかって話してたところ」
マリッサの説明には「協力してくれないかな?」という感情が伺い見えますが、魔法使いが一人居るだけで全然違うことは私も良く知っています。
「ふむ。
まぁ手伝い程度なら構わんが……」
相変わらず年齢と口調が合っていないなぁと思いつつ、それが背伸びでなく妙に使い慣れている事を不思議に思いつつ、
「近づいてきてますね」
耳に届いた小さな音を警戒として伝えます。
「ほう。
よう聞こえるもんじゃ」
「慣れですね」
モンスターといわず、森で大型の動物に出くわしてしまえば逃げる事もままなりません。
作業していても周囲の音には敏感になっているというのは職業病に近い習性です。
私はクロスボウを用意して弦を巻き、マリッサはショートソードを腰から抜きます。
「マリッサ、気をつけてね」
「お姉ちゃんはいつもいつも。
あたしだってちゃんと練習してるんだから。
ねえ?
イエンさん?」
「突っ込みすぎるきらいがありますから、確かに気をつけるべきですね」
「そこは頷いていればいいところなのっ!」
教師役のイエンさんはにこりと笑うだけです。
彼の武器はメイスとラージシールド。
受け流して打ち込む戦法を得意としています。
ちょうど準備が終わった頃にがさりと近くの藪から1匹のゴブリンが顔を出します。
『ぎぃいいい!』
警戒と分る声。
その顔面に私は間髪居れず矢を放ちます。
『ぎょっ!?』
それは顔面こそはずしたものの、喉の下当たりを貫き、ゴブリンを藪の向こうに転がしました。
「おねーちゃんやるー!」
妹の喚声に引きずり出されるように4匹のゴブリンが藪から飛び出します。
「三匹はこちらが受け持つから、マリッサは一匹、おねがいするよ」
「……わかった!」
少しの逡巡は2:2にしないことへの不満でしょう。
しかし確かな戦闘訓練を受けて、しかも防御に秀でたイエンさんが多く受け持つのは正しいことです。
妹もそれを理解できるだけの経験は積んでいます。
私への指示が無いのは、私の仕事がその場に応じた物になるから。
まさか乱戦に矢を打ち込むわけには行きません。
しかし、当たらない矢でも意味があります。
イエンさんがまず前に飛び出し、ゴブリンの間で身を捻ります。
そうやって1と3に分かれるようにして、背を見せた1の方にマリッサが走りこみます。
私は落ち着いて狙いを定めると、3の方の一番後ろのゴブリンに矢を射掛けます。
狙いはやや外。
間違ってもイエンさんに当たらないように撃ったそれにゴブリンは驚き、注意を逸らします。
「たぁっ!」
その隙を見逃さず、メイスの強烈な一撃が1匹目のゴブリンの頭部を潰しました。
「ほう、大したものじゃな」
私の横に立つティアロットさんが少しだけ楽しそうに呟きました。
見た感じ何の魔法も使っているようではなく、観戦に回っているようです。
私は急いで次の矢を装填し、弦を巻きます。
イエンさんは上手くゴブリン2匹を自分の集団として取り込み、私の方にもマリッサのほうにも行かないようにしてくれています。
「たーーー!」
ぐっと前に出たマリッサの剣はゴブリンの腕を掠めるに終わりましたが、明確にゴブリンは怯んでいます。
私が装填した矢を近くの地面に付きたてると、ぎょっとしてこちらを見ます。
「さんきゅー!」
上手く懐に入れば妹の細腕でも充分な攻撃を生み出せる。
それを証明するようにマリッサの力強い一撃がゴブリンの胸を突いて転がします。
その間にイエンさんはもう1体を潰しており、最後の一体も逃げ腰になったところを踏み込まれ、頭を潰されました。
「楽勝~♪」
「マリッサ、怪我は無い?」
「ないない。
もぅ、おねーちゃん毎度おんなじなんだから!」
困った顔をしつつも直ぐに笑顔に変えて、
「ねね。イエンさん。
すごいでしょ!」
と自慢げです。
「面白いやり方じゃな」
結局何もしなかったティアロットさんですが、魔法使いは一日に使える魔法の回数が決まっているため、乱発はできないそうです。
必要が無いなら使わないのは当然。
そういう話を思い出します。
「最初はただおろおろしてたんです。
でもミスショットに相手が驚くのを見て、もしかしたらと思ったんです」
「神官の方はぬしが狙いやすいように矢のタイミングを見て動きを小さくしておるし、妹の方の動きはようわかっておるようじゃな」
「ずっと見てましたから」
イエンさんがそういう配慮をしてくれている事には気付いていました。
むしろ今の一回でそこまで見抜く方が私としては驚きです。
「イエンさんもお怪我はないですか?」
「ええ。
私だけ怪我をしたら、マリッサに今度は半分寄越せと言われますからね」
「そんな言い方しないよー!」
こうして見ると仲の良い兄妹のように見えます。
他の男の方だとこうはならなかったとも思います。
「しかし何も持っていない所を見ると見回りでしょうね。
見回りで5匹となると……ちょっと面白くない数かもしれません」
「見回りで?」
「はい。
襲撃なら総出が基本ですが、ある程度数が多くなると巣を守るために見回りや見張りを立て始めます。
正確な統計があるわけではありませんが、見回りで4~5匹出ているとなると、本当に30匹潜んでいる可能性もあります」
「もう一つ可能性があるのぅ」
ティアロットさんが試すような言い方をして、そのまま口を閉ざします。
それを継ぐように
「優良種……ホブゴブリン等の上位種が群れに加わっているか、ですね」
彼の言葉にティアロットさんは満足したように頷きます。
「然様。
その場合下手をすれば数はなお多い」
「……なお、ですか?」
恐らく今の数以上の敵が現れたとき、イエンさんが相手をできる数も限られますから、マリッサや私の方に敵が多く来る事になります。
「もしそうなら、領主様に説明をして軍を派遣していただいた方が良いのではないでしょうか?」
「ええ。
確かに私たちでは手に余りますが……」
視線はティアロットさんに向けられます。
「ふむ。
恐らく目的地はわしと同じじゃし、付近の者が困っておることもあるからの。
協力はするよ。
ただし」
彼女は少しだけ口の端を上げて言います。
「アレイア。
ぬしの指示に従おう」
「え?」
意味を理解できず、私は素っ頓狂な声を挙げます。
「イエンは前衛の支え、マリッサは自分のことで精一杯じゃろ?
後方で俯瞰するのはぬしの役目じゃて。
なれば状況にあわせてわしに指示をすらばよい」
「で、でも!」
「それが条件じゃ。
まぁ、領主の所に行くのも間違いでない選択肢じゃがな」
イエンさんは「困った人だ」と呟き、マリッサは「おねーちゃん、任せた」と気楽に言います。
「…… えっと、イエンさん」
「はい?」
「魔法の事、全然わからないんですが……」
むしろ魔法使いなんて彼女以外に見たことありません。
「どうして良いかさっぱり……」
「そうですね。
思ったままで良いのではないでしょうか?」
「え?」
きょとんとしてしまいます。
「例えば私がどうしようも無くなったと思えば、私を支援するようにお願いすればいい。
別に何の魔法をどういう風に使えと指示する事は望んでいないと思います」
「まぁ、魔法に精通しておっても、わしはコモンマジックは使えんから指示にならんしの」
言葉の意味が実は良く分かっていませんが、つまりは適宜手伝って欲しい事をお願いする、ということでいいのでしょうか。
「但し、使える魔法は10までじゃ。
それが魔法使いの限度じゃからな」
「……」
あとは私がどうするか、だけです。
恐らく無理ですと言っても皆は批難することはないでしょう。
ですが、
「では、お願いします」
「うむ」
やってみたいと思いました。
私は旅をします。
バール神が司るは野心。
それは求める心です。
人間は良くも悪くも求める者です。
求め、求め続けて文明を向上してきました。
アイリーンの正義
ルーンの知恵
セムリナの闘争
ドイルの豊穣
そのどれもは実だと私は考えます。
そしてバールはそれを得ようとする意志であると。
ただ与えられる事に充足してしまえば人は家畜と同じです。
故にバール神は告げられます。
求めよと。
私は修行の一環として、冒険者という道を選びました。
またの名をエクスプローラー────探求者の道を。
「見張りが居ますね」
茂みから遠くを見ると、岩肌に出た入り口らしきものの前にゴブリンが1匹立っています。
あまり真面目そうでなく、面倒そうにきょろきょろしている様は人間と同じだと感じます。
「どうしますか?」
アレイアさんの問いに私は考えます。
常套手段としては不意打ちで倒し、騒がれる前に順繰り倒していく事ですが……
「魔法でばーんってやってもらう?」
マリッサさんはこういう感じですね。
ムードメイカーとしては優秀だと思います。
「騒がれる前に倒したいですね。
アレイアさん、お願いできますか?」
「……はい」
自信なさげな顔をしますが、直ぐに決心したかのようにクロスボウを準備します。
やがて準備が終わると、慎重に狙いを定めました。
アレイアさんの腕前は結構なものだと思っています。
ただそれを自覚していない節があり、その点が不安材料と言えるでしょう。
「大丈夫です。
当たりますよ」
アレイアさんの首が僅かに動きます。
やがて、意を決したように放たれた一本の矢が─────
「……」
とすんと見事にゴブリンの眉間に突き刺さり一撃で絶命させます。
「やった、おねーちゃん!」
はしゃいで姉の腰に抱きつくマリッサを彼女は笑顔を少しだけ困ったように歪めて受け止めます。
「ぬしは良い神官になるよ」
少女が二人に聞こえない程度に囁きました。
やれやれ、お見通しですか。
バール神の固有魔法は幸運を掴み取る奇跡です。
私はお二人にこの魔法の存在を伝えていません。
私はいずれバールに帰り、司祭となる身。
それまでに彼女達を導く事も修行の一環と考えています。
過信は罪ですが、自信は必要です。
そのお手伝いのためにこの奇跡は使用すべきだと思っています。
「では手早く行きましょう。
気付かれるのも時間の問題です」
マリッサをたしなめて私は茂みから出ます。
露出した穴に入って直ぐに石造りの廊下に出ます。
「人工物?
ここって遺跡?」
「うむ。
イエール後期の遺跡じゃ」
「ティアちゃんの目的地もここだったの?」
「然様」
なるほど。
イエール時代のものであればそれなりの価値はあるでしょう。
「どういう場なのですか?」
「とある魔術師の研究所じゃな。
植物の研究を専門にしておって、現代の農業技術にも影響しておると聞く」
「へー」
マリッサは話半分と言った感じですね。
「凄い人」程度の認識でしょう。
「魔法生物とかが居る可能性は?」
「危険なのはおらんじゃろ。
そんな所に住むほどゴブリンが豪胆とは思わんの」
「確かにそうですね」
この人は本当に謎ですね。
遊戯に興じるような年なのにどれだけのことを頭の中に仕込んでいるのでしょうか。
「ふむ……」
ティアロットさんはふと立ち止まるときょろきょろと周囲を見ます。
「ここではちと響くか。
少し時間をおくれ」
「え?」
少し急ぎ目に外に出るのを「何処行くの!?」とマリッサが追いかける。
ティアロットさんは遺跡の外から数歩脇に逸れるとめまぐるしい速度で小さな唇が動き出す。
それは彼女独特の呪文詠唱。
断絶の陣 不可侵なるは 天意の衣 《神鎧》
魔力の白翼よ 我が身に宿れ 《天翼》
我が干渉は 万物を支配する 《浮舟》
そして
『ぐぅぅうううるううぅううぅううおおおおおおおおおおお!!』
「な、何?!
どうしたの!?」
それは可憐な少女から出たとは思えない、低く獰猛な音色。
周囲の生命が凍りついたように息を潜めたのがひしひしと感じられます。
その響きはまるで────
「ふむ。
まぁ、遺跡に入るときのおまじないじゃ。
こうもせんと怖くての」
「でも、なんか凄い声出してたよ?」
「気にするでない。
さて、行こうかの」
目を白黒させて問うマリッサに彼女はすまし顔のまま応じました。
しかし細められた瞳────その奥に見える奇妙な虹彩に私は気付いています。
まるで蛇のようなそれ。
そして先ほどの響き。
「聡いのぅ。
まぁ口にせんほうが良い事もある」
「……貴方は人間ですか?」
口を滑らせるかのように、私は問うていました。
頭を掠めた予感。
それが正しければもしかして
「さぁのぅ。
少なくとも竜種ではないよ」
アルカイックスマイルを浮かべて少女の姿は滑るように遺跡に戻っていきます。
「竜種ではない、ですか」
やはりあれは竜の魔法。
世界のいたるところで禁忌とされた竜の技術。
「本当に、何者なんでしょうかね」
きっと答えてはくれないでしょう。
とにかく今はゴブリン退治です。
「ランタンに明かりつける?」
戻るなりマリッサが問いかけてきます。
「……そうですね。
点けない方がリスクは大きいでしょう」
明かりでばれるリスクよりも見えない状態で不意打ちを受ける方が厳しいですし。
程なくランタンが用意され、アレイアさんが手にします。
アレイアさんはクロスボウを背に戻しています。
流石に狭い通路で先ほどの戦法は採れませんしね。
通路を暫く進むと、戸の開いた部屋が見えてきます。
「どうする?」
潜めた声の問いかけに少しだけ考えて
「順に潰していくしかありませんね。
後ろを取られてもまずいですから」
足音を殺しても他の三人はともかく私はチェーンメイルを仕込んでいます。
こんな静かな遺跡ではおのずとばれてしまいます。
「では、いきます」
それでもなるべく音を殺して歩き、扉を開きます。
ぎょっとしてこちらを振り向くゴブリンの数はおおよそ10。
「……」
正直しまったと思うも、未だに武器を持っていないならば早々傷つく事は無いと判断を改めます。
「行きます!」
前に出ると驚いたゴブリンがニ、三匹尻餅をつきました。
無慈悲な虐殺かもしれませんが、彼らの略奪行為もまた人間にとって看過できない事態。
勢いよくメイスを振りぬき2匹のゴブリンを沈黙させます。
「戸を閉めて」
振り返らずに指示をします。
アレイアさんはしっかりと応じ、戸が閉まる音が小さく耳に届きました。
これで音の漏れを多少は防げます。
「マリッサ、左」
「見えてるよっ!」
飛び掛ってきたゴブリンを迎撃して弾き飛ばすのを見て彼女の後ろを守れる位置へ移動。
ついでに一匹飛ばします。
「って、おねえちゃん!?」
視線の端に後ろに向かって走るゴブリンが2匹映り込みました。
「ふむ」
そこに立ちふさがったのは、驚いた事にティアロットさんです。
彼女は処刑鎌にも似たそれをくるりと回転させると、その切っ先で上手くゴブリンの足を払い、さらにくるりと回して懐に入り込もうとしたゴブリンの首を薙ぎ払います。
「あ、ありがとうございます」
「まぁ、このくらいはの」
……体術とかできたんですね。
流石にあの体でそこまでやれるとは思いませんでした。
本当に謎な人です。
しかしあくまでも引っ掛けた程度。
転んだゴブリンは慌てて起き上がります。
「ええと、ティアロットさん?」
「ん?
なんじゃ?」
「大丈夫ですか?」
「まぁ、ゴブリンくらいならのぅ」
あれだけフリルやらリボンやらがついた服ですが、動きを阻害している様子はありません。
体全体を捻って遠心力を生み、重心が乗った一点を確実に打ち払っています。
達人級の技でありながら妙な違和感をひしひしと感じるのは─────
「見ていない?」
彼女の動きと視線が別に動いて居る事に気付きました。
インパクトの一瞬、彼女の目は別の場所をせわしなく見て動いているのです。
その証拠に─────
『ぐぎょっ』
回りこんだ三匹目がティアロットさんの背後から飛び掛った瞬間。
承知していたかのように彼女の脇から斜め上に杖の柄が伸び、ゴブリンの腹に深く突き刺さります。
傍目から見れば、ゴブリンが勝手に柄に突っ込んだようにも見える、奇妙な光景が展開していました。
「い、イエンさん。
マリッサを!」
「っ!」
不覚。
集中力を乱すなとはいつもマリッサに言っている事なのに。
私は盾で一匹を打ち払うと孤立しそうになっていたマリッサに背をあわせる形に戻します。
飛び掛ろうとしたゴブリンはたたらを踏んだ形になり、そこを逃さず打ち据えます。
「すみません、マリッサ」
「んーん。
イエンさんの気持ちわかるし!」
ならば、彼女も成長しているということでしょう。
調子を戻した私達はものの五分でゴブリンを殲滅する事に成功しました。
わしの始まりは2つある。
一つは遥かな昔。
自分の運命が欲しくて、その渇望に一歩を踏み出した時。
もう一つはティアロットとして目を覚まし、現代という異郷に足を踏み出した時。
昔は少し走っただけで息をあげ、大したこともできんかったのに、随分とたくましくなったものじゃな。
こうしてどこの誰とも知らん、一度か二度かしか会ったことのない連中と道中を共にしておるとは、かつてのスティアロウは予想すらしておらんかった。
だから、思う。
かつて数多の血を大地に流して得ようとしたものと。
今こうして不器用にも体を動かして得ようとしているもの。
どちらが貴いのじゃろうか。
しばらく空っぽの部屋が続き、ついには最奥の部屋までやってきた。
これが遺跡荒らしで来たのならずいぶんと気落ちしたに違いないのぅ。
ゴブリンたちは遺跡の中を好き勝手に荒らしており、中には遊び半分でばらばらにしたらしい古い羊皮紙もあった。
一瞥したが、読める文章からは雑記のようなものと推測できる。
学者であれば怒鳴り散らしそうな有様じゃが、こうして遺跡を巡る日々をやっておると良くあることとも思えた。
知識とはいずれ散逸するもの。
己の故郷が今という世界に口伝としか残っていないと同じように。
「この先が一番奥……のようですね」
姉の方が手の中の地図を見ながらそんなことを呟く。
部屋の配置から予想するに、間違っては居ないじゃろうな。
「ならば、いろいろ居そうですね」
わしは口の中で呪を紡ぎ、精霊の目を凝らす。
なるほど、生命の精霊や精神の精霊がごった煮のように渦巻いておるな。
「どうする?」
「…… 扉を開いて数が多ければ通路で戦いましょう。
マリッサ、わかってますね?」
「まっかせて」
とんと胸を叩いて笑顔で応じる。
ふむ、こういう光景は女神亭の面子では無理じゃな。
あやつらは基本的にスタンドプレーじゃし。
時折わしが同行する際には簡易的な指揮を取ることがあるが、他にそういうことができそうなのはシンとランスくらいか。
もっともランスの方はできてもやらんのじゃが。
「では、いきましょう」
全員がうなずき、わしも同じくうなずいておく。
わしへの指示はなしか。
まぁ無理に頼られすぎても困るしの。
戸が開かれる。
開けた視界の中でもざっと10匹は居るようじゃな。
そして問題なのは奥に居る大柄な3匹と、棍棒や短剣でなく杖らしき棒を持った2匹。
杖らしき物をもったゴブリンは身なりも他の蛮族じみた格好とは違い、ローブか何かを真似たような格好に飾りをしておる。
「魔法種……!」
イエンの言う通り、ゴブリンメイジかゴブリンシャーマンと呼ばれる上位種。
大柄なホブゴブリンよりも珍しく、タチの悪い存在。
「え?
ゴブリンが魔法使うの!?」
マリッサの動揺が引き金になったか、ゴブリンたちが一斉に襲い掛かってくる。
はじかれるようにイエンは盾を構えてマリッサの前へ。
がんがんがんと盾が棍棒を受け止める音が響いた。
「ティアロットさん。
魔法を使う方を撃てますか?」
姉の方も動揺をしておるが、判断は的確じゃな。
「良いよ」
さて《魔弾》が妥当じゃが、防御魔法のひとつもかかっておらん連中にはちと酷かの。
故に杖を突き出すように構えて言葉を放つ。
「意思持て舞え 魔竜の牙 貫け 《竜牙》」
杖の先に生まれるのは竜の牙を模した魔力弾。
別の名で言えば《スリーウェイ・マジックミサイル》
どんと放たれたそれは押し寄せるゴブリンの頭上を迂回し、後ろで魔術を使おうとしていたゴブリンの頭に襲い掛かる。
『ガ──────』
『ギ──────』
断末魔も許さず腹から上を消失させたゴブリンがぽんと鞠のように飛んで転がった。
「凄い……」
アレイアの言葉に苦笑が漏れる。
魔術師ギルドの規定では一応ソーサラー級に分類される故、これくらいは当たり前なのじゃが。
そんな事は彼女たちの知識にはない。
残りひとつをホブゴブリンに叩きつけ、わしは構えを解く。
「ほれ、呆けておる場合かえ」
「え、あ」
呆けているのはゴブリンも同じ。
我に返ったイエンがメイスを振るい、タイミングを合わせてマリッサが横合いから首筋を切り裂いていく。
後ろに続いて起きた混乱にゴブリンたちが浮き足立つ。
こうなれば数の優位は足の引っ張り合いに変貌する。
マリッサは危なっかしいものの、イエンが的確に補佐し、一匹ずつ確実に落としていく。
『GAAAAAAA!!』
びりびりと震える大気。
残った二匹のホブゴブリンの咆哮に前衛で慌てふためくゴブリンたちがびくりとした。
道を空けるように撤退したところにどしどしと突貫してくる。
その迫力たるやすさまじいもので。
例えるならば雄牛が目を真っ赤にして突撃してくるようなものか。
「てぃ、ティアロットさん!」
「不要です!」
マリッサに下がるように指示を飛ばし、イエンが腰を低く構える。
「うむ。
強い力に頼るのは正しいが、わしはいつもおらんのじゃ。
ぬしはぬしの仲間の実力を信じるのが仕事じゃろ」
笑みを零して見守る。
次の瞬間、どんと激しい激突音が遺跡の中に響き渡る。
すさまじい勢いの突撃を受けた音でない。
受け流してその体を通路と部屋の境目。
戸の角へ誘導して叩き付けた音だ。
『GA……』
その体重と渾身の加速が自らの顔面と胸に叩きつけられてはたまらない。
ホブゴブリンはもんどりうって昏倒した。
これでホブゴブリンは残り1体。
主戦力を瞬く間に失ったゴブリンの混乱は凄まじい。
しかし逃げ場がこの通路しかない以上、どうしようもなく闇雲に突撃してはイエンに迎撃された。
半分以上数を減らしたところで、出あぐねいていたホブゴブリンが痺れをきらしたらしい。
ずんずんと近づいてくる。
「イエンさん!」
「問題ありません」
並みの戦士でもまともにホブゴブリンとやりあうのは骨が折れる。
その筋力やタフネスは人間の非でない。
先ほどは自爆を誘導させたが、一撃の重さは容赦なくこちらからの打撃も致命傷に至りにくい。
『GAAAAAAA!!!!』
振り下ろされた棍棒を見事に受け流し、無防備な側頭部にメイスが打ち込まれる。
それで終わりじゃな。
いかに強靭なタフネスをもっておっても体の造りは人間のそれに近い。
頭部への打撃は例え骨を砕くことが適わなくとも、脳を激しく揺らしておる。
効かないとばかりに動こうとしたホブゴブリンは勢いあまって後ろに倒れ、そして立ち上がろうとして失敗する。
その無様な光景が決定的だった。
ゴブリンたちは武器を投げ捨てて部屋の隅に逃げ込んでしまう。
「さすがっ♪」
マリッサの嬉しそうな声にイエンは若干の笑みを漏らしつつも「まだ終わりじゃないですよ」と嗜めた。
「……でも、もう戦意はないようですが」
「……とはいえ、それは私たちが居る間だけです。
すぐに忘れて略奪行為に戻ることでしょう」
この懊悩はまっとうな精神を持つ冒険者ならば必ず一度は相対する。
降伏しても許すわけにはいかない。
それは己の手で虐殺をしなければならないという意味となる。
それがゴブリンなどの人間に近い形状の種になれば心の痛みは果てしない。
アレイアの顔を見てマリッサも顔をしかめていた。
わしは口出しをする気はなかった。
冒険者として不要かもしれんが、その優しさは尊いものであろうから。
「マリッサ、背後の警戒をお願いします。
私が処理します」
「……ダメだよ。
降伏を認めないってわかったら一気に攻撃してくるもん」
「……そうですね」
「だったら!」
アレイアが声を張り上げる。
「近づいたら囲まれます。
だから、私が撃ちます」
それが正解であろう。
その声がどんなに震えていても。
戦意無き者への攻撃。
わしはそれを静かに見守った。
あたしたちは旅をする。
いつまでかはわからない。
きっと死ぬまでなんて無理だから、そうだなぁ……素敵な人を見つけるまでとか?
でも、見つけてもおねーちゃんが心配だからきっと一人別れるなんてできないし、おねーちゃんも同じ事を考えてる気がする。
……違うか。
おねーちゃんは今でもあの人の事を想ってる。
誘拐と人身売買はアイリンの法では死罪だ。
だから多分あの人はもうこの世には居ない。
けれどもそれが確認できないから、おねーちゃんは今でも痛そうな顔をして、あの人を想っている。
あたしの冒険は。
もしかするとおねーちゃんがその心の痛みを忘れるくらい、素敵な人を見つけるまで続けるのかもしれないなぁ。
あたしたちは感謝されつつ村を後にした。
周辺の村を合わせれば被害は凄まじいものだったらしく、隣の村からもわざわざ感謝を言いに来た人も居た。
ティアちゃんは遺跡で少し調べたいことがあるって別れたけど、またひょっこり現れるんだろうなと思ってる。
彼女のことを話すと「おお、小さな賢者様が」と顔を綻ばせていた。
なんでも村にひょっこり現れては子供達に文字や簡単な算数を教えてたり、村の問題に意見をくれるのだそうだ。
ほんと何者なんだろ。
「リトル・ファルスアレンとバールでは呼ばれていますね」
アイリーンに向かう道中、イエンさんは思い出すように言った。
「ふぁるすあれん?
聞いたことがあるような……」
「西で起きた反乱の……確か独立した国の名前だったと思います」
おねーちゃんの言葉にぽんと手を打つ。
確かそんな名前だった。
嘘の独立だったとかで、何でそんなことしたかはさっぱりわからないけど。
「じゃあ、貴族か何かなの?」
「わかりません。
私もただの神官ですし、司祭様に急に呼び出されて会ったのがはじめてなんです。
そして貴女方を紹介されたという流れでして」
「あはは……お守り押し付けられてごめんなさい」
「いえ。
当時はともあれ、今は良いめぐり合わせだと思っていますよ」
にこりと微笑まれる。
うーん、いい笑顔だ。
これで男の方が好きだなんて言わなければなぁ。
「ただ、司祭様も彼女に敬意を表していましたから、それなりの身分の方かもしれません」
「ほんと、謎な子だよね」
お人形さんみたいなのに言葉遣いは老婆。
知識は豊富で凄い魔法使い。
なんか違う世界の住人だよね。
「あの……イエンさん」
少し間が空いたところでおねーちゃんがおずおずと声をあげる。
「はい?」
「ティアロットさんが使っていた動き、私にもできるでしょうか?」
棒術というか、杖術? 細っこい腕でくるんくるん回しただけの杖がゴブリンをすっ転ばしてた光景が思い出される。
「……ちょっとやそっとじゃ難しいと思いますし、付け焼刃は危険ですよ?」
「そんなに難しいんです」
あたしが口を挟むとイエンさんは少し考えるようにして
「相手の動きを予想した上で、的確にタイミングを合わせないと無理です。
一瞬でもずれれば相手が転ぶどころか、自分が棒を取り落とすでしょう」
そんなに高度な技なのとあたしがは目を丸くする。
「体術の基礎に相手の姿勢を『崩す』という行為があります。
動物は体全体を使って重心を保つため、少し無理な姿勢でも倒れることがないのですが、逆に言えば重心を保てなくなればあっさりと転んでしまうということです」
難しくてちんぷんかんぷんだ。
おねーちゃんも理解してる風に見えない。
それを見て取ったイエンさんは「片足で立ってみてください」とあたしに言う。
「え、こう?」
片足立ちすると少しふらつく。
「この状態で肩を押すとどうなります?」
「そりゃぁ、こけるよ」
当たり前だとあたしは言い返す。
「はい。
でも二本足で立っていてもあっさり転ばせることはできるんです」
片足立ちをやめたあたしの右肩をイエンさんは強く右に押す。
あたしはとっさに左に押し返すようにしてこけないように────
「きゃっ!?」
「おっと」
自分が力を向けたほうに急に引っ張られてつんのめるのをイエンさんが支えてくれた。
まぁ、こかそうとしたのもイエンさんだけど。
「いまのが『崩し』です。
マリッサさんが「押されたから倒れないようにする」ために入れた力を利用して弱い力で相手を転ばせるころができます」
「でも、ティアロットさんは別に相手を押したりは……」
「ゴブリンは前へと自分の体を押し出していました。
体は前へ。
そして重心は次の一歩を踏む足へと移動していたんです。
それが地面を踏みしめる一瞬前に軽く横に足を払うと」
「あー、それはすっ転ぶね」
「はい。
その力の流れを読んで、決定的な一点だけを突いていたんです。
達人クラスの技ですよ。
正直……」
少し含むような言い方。
あたしはあのときの違和感を思い出す。
「でも、あの子ゴブリン見てなかった気が」
「よく気づきましたね。
多分ティアロットさんのは武術ではありません。
何かしらの方法で事前に重心のありかを知って、杖を配置したのでしょう。
どちらかというと『罠』に近い行動なんです」
絵空事にしか聞こえないけど、事実起きたことだ。
………ほんと、無茶苦茶な子だね。
「じゃあ無理なんでしょうか?」
「いえ、基礎はやはり棒術でしょう。
彼女は技量の無さを何らかの手段で補っていただけです。
決して過信して使わないと約束していただけるならば基礎の手ほどきくらいはできますよ」
「じゃあおねーちゃんもあたしと一緒に訓練だね」
「まぁ、マリッサよりは安心できますしね」
「あ、ひどい!
あたしはちゃんと言いつけ守ってるもん!」
二人して笑う。
酷いなぁもう。
ふんとそっぽを向いて少しだけ早足になる。
ごめんと言いながら追ってくる足音を聞きながらあたしはどこまでも青い空を見た。
あたしたちは英雄とかそんな存在とはかけ離れた、冒険者としても駆け出しの存在だけど。
明日がいい日になるように、そう願いながら踏み出す一歩一歩は絶対に悪い道じゃない。
あたしはそう信じている。
今日という日の生き方として、明日を信じるための生き方として。
あたしはしっかりと地面を踏みしめる。