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~出立~

 エルフの国への遠征を決意したヨセフカは、物資と人員を準備し、エルフの国へと出立する。その後、自身の目に映ることになる光景など想像だにしないまま............................

 エルフの国へと向かうことを決めた次の日、私は再びエランの元へと訪れ、向かう際の人選やルートについての会議を重ねた。会議の結果、私の護衛として付いてきてくれたマイク達6名に加えて、案内役としてジョンとジェイクたち2名の団員が同行することになった。その2人は、優れた実力を持つのに加えて、エルフの国に近い開拓予定地の調査へ頻繁に行ったことあるため選ばれた。

 その後、私たちはエルフの国へと向かう際の食料やその他物資の準備を進め、人選が決まったその日から2日後、物資の準備を終えた。準備を終えた次の日からは、屋敷から付いてきたマイク達とガルムの団員同士の顔合わせを行い、今回の遠征における具体的な目的や段取りについて皆に話した。


 「以上が今回の遠征における目的と段取りになるわ。分かっていると思うけど、今回の件は、国家に所属する者としては度を越した独断専行に当たるわ。だからこそ、今回の遠征への参加を強制するつもりはないわ。参加したくない者は、今からでも辞退しても大丈夫よ?」


 私は最後の確認のため皆に聞くが、不参加を表明する者はいなかった。皆の顔はやる気に満ちていて、言葉で言わずとも、絶対に着いていくという意志を強く感じた。会議を終えると、立ち合いに来ていたエランが傍へと近づいてきた。


 「ヨセフカ様、今回はなぜ、あの2名を同行者として選んだのです?案内役でしたら、更に実力が優れた者たちが下りましたのに..............」


 人選について話し合っていた時、エランはもっと多くの団員を同行させると言ってくれていた。だが、私の護衛に加えて同行するのは、案内役としての2,3人で十分であると私は断った。これは、数が多くても足手まといになるなどの理由ではない。今回の目的は”戦闘”ではなく、エルフの国へと到着すること。人数が多ければ、それだけ多くの物資と時間を費やすことになる。それに、今のガルムから多くの団員を引き抜くような行為は、市民にどんな影響を及ぼすか未知数でもあったため、今回は2人のみが同行することとなった。

 加えて、ジョンとジェイクを選んだ理由は、彼らの才能に興味を惹かれたためだ。この半年間、仕事に励む傍らで、マイクら護衛の皆との訓練を行っていた時のことだ。訓練の途中、ジョンとジェイクが訓練に参加させて欲しいと頼み込んできたのだ。試しに参加させたところ、優れた剣や弓の実力だけでなく、彼らは微弱で無意識ではあったが、既に魔力を扱えることが分かったのだ。

 

「あの二人が魔力をっ!?」


 エランにはまだ話していなかったこともあり、私からの発言に彼は驚いていた。この半年間、私は彼らと協力し、魔力を扱えるようになるための実験を行った。具体的には、私が彼らに魔力を流し、その感触を頼りにして自身の魔力を知覚させ、魔力を扱うための第一段階を踏ませるというものだ。これは、一般的な魔力使用訓練として定着している手法だが、私はこれに少しの改良を加えた。私は魔力を他者に流すだけでなく、相手の中に流れた魔力を操作することで、魔力を纏うことによる身体強化や物質強化を疑似的に体験させてみることにした。

 とはいっても、初めての試みがそう簡単に成功する訳もなく。流した魔力を操作する際の調整を誤ると、流された側に痛みを与えてしまうことが分かった。恐らくこれは、魔力への親和性に個人差があるためだろう。親和性が高い者であれば、一度に多くの魔力を体内に流され、操作されたとしても問題がなく、むしろ、流す魔力が多い分、疑似体験を行った時の感覚がその後も明確に体に残り、独力で魔力を扱えるようになるまでの期間が大幅に短くなることが分かった。

 その証拠に、マイクにジョン、ジェイクの3人は、まだギコちなくはあるが、戦闘に魔力を織り交ぜることが可能になっており、弓矢に魔力を込め、強力な矢を放つことが出来るようになっている。残りの5人に至っても、最低限の身体強化くらいは出来るようになった。


 「黙っていてごめんなさい、出来るのが私だけな上に、個人によって操作の調整が必要だから、間に合わせるには、今回の8人が限度だと思ったの」


 「まさか、そんな手法があったとは..............」


 驚くエランに私は続けた


 「今回の手法、魔剣の使用が可能になって、皆の魔力操作が向上すれば、私以外の人でも可能になるかもしれないわ。そうすれば、魔力を扱える者は飛躍的に増える筈よ」


 「ならば尚更、今回の遠征は成功させなくてはいけませんな」


 「その通りよ。エラン、少しの間だけ、ここの皆をお願いね?」


 「必ず役目を果たして見せます」


 彼がそう言うと、私はその場を後にし、宿舎へと戻った。そして、この遠征の重大さを噛みしめながら、私はゆっくりと目を閉じ、眠りについた

 次の日の朝、いつものように侍女たちによって身支度を整えてもらい、準備を終えた私は、侍女たちの”どうかご無事で”という言葉を背にしながら部屋を後にした。その後、東門砦まで移動した私は、エランを含めた多くの自警団員たちに見送られながら、馬で皆と共に出立した

 今回の遠征の目的地であるエルフの国へは、途中から森林地帯を通過することとなる。ジョンとジェイクの情報により、交易に使われていた街道が残ってはいるが、戦争の影響で長く整備されておらず、非常に荒れているとのことだったため、今回は遠征用の荷物を詰めた荷馬車を1台、残りの者は馬による移動という編成を選択した。


 出立してから1週間後の夜、私たちは、ヘスティア西部に広がる大森林地帯の手前まで歩を進め、野営をしていた。星空が煌めく中、私はスープに乾パンを浸し、柔らかくしてから口へと運ぶ。乾パンの味が質素であるせいか、スープの塩味の強さをより一層に感じる。一日動き通しであったこともあり、塩味の強いスープは自然と私の喉を通り、一日の労を労ってくれる。柔らかくなった乾パンを齧りながら、私は明日からのことについて思考を巡らせる。西部に広がる大森林地帯は、エルフやドワーフの国と私たちの国を隔てるかのように存在し、どちらの国へ行くにしても、必ずこの森林地帯を通ることになる。

 この森林地帯に生えている木々は背が高く、密集していることもあり、視界が悪い。整備が行き届いていないとはいえ、街道なしでの移動は厳しいものとなっていただろう。だが、この森には木々による通行の不便さのほかにも問題がある。それが”魔獣”の存在だ。

 ”魔獣”、それは”魔族”という言葉が存在する前からある言葉。最初は、高い知性を有し、軍隊として集団行動を行う魔獣たちと認識され、それがいつしか”魔族”と呼称されるようになった。

 ここまでで分かる通り、”魔獣”に高い知性は無い。せいぜいが熊や猪、狼などの野生動物がもつ程度のモノであり、脅威となるのは、その大きさと獰猛さだ。その大きな体躯から繰り出される攻撃は、容易に人間を引き裂く威力を持っている。

 本来、ドワーフやエルフの国へと通じる街道には、魔獣を退けるための特殊な”香”がたかれているが、整備されていないということは、その香もとっくに切れているだろう。つまり、魔獣との戦闘を視野に入れる必要があるということだ。


 「はぁ..............」


 ふと私がため息をついていると、隣へマイクがやってきた


 「ヨセフカ様がため息なんて珍しいですね?森の中にいる魔獣のことですか?」


 察しが良いのか、マイクはぴたりと私の抱える悩みを当ててみせた


 「察しがいいわね。香の効果が期待できない以上、エルフの国へ辿り着く間に魔獣たちと遭遇する確率は高いわ。出来るだけ戦闘は避けたいところなんだけどね..............」


 スープを啜りながら、私は星空を見上げた


 「ヨセフカ様、その件で1つ、お願いしたいことがあります?」


 「なぁに?」


 夜も更け始め、少し眠気が私を襲い始めたことで、私の返答が少しばかり緩む


 「森林地帯での魔獣たちとの戦闘の際は、手を出さず、ただ我々のことを見ていて欲しいんです」


 唐突なその発言に、先程まで迫っていた眠気が飛んで行く


 「本気なのっ!?」


 魔族と魔獣、どちらの方が脅威であるかを一概に語ることは難しい。だが、魔神や魔将といった例外を除き、純然たる戦闘能力だけを語るだけなら、魔獣の方が脅威だ。彼らは知性が低い反面、野生で研ぎ澄まされた感覚を持っている。そこには油断や慢心などはなく、獲物を一切の躊躇なく殺害し、自身の糧とすることが支配している。

 戦闘時の動きにも注意が必要だ。野性味が強い分、高度な戦術などはなく、その攻撃はどれも直線的だ。だが、その速度と破壊力は、中位から上位魔族に相当する程だ。皆、魔力を扱えるようになってきているとはいえ、それも完璧ではない。危険が大きすぎる。


 「ヨセフカ様、我々はあの襲撃の折、何もできませんでした。団員として避難民の保護は出来ましたが、あなたの護衛としてあなたを守ることは出来なかった」


 「それは............................」


 「分かっています。魔力すら扱えなかったあの時点..............いや、たとえ今の時点だったとしても、あの場であなたを守る立場になることは出来なかったでしょう」


 「前にも言ったはずよ?焦る必要はないの、一歩ずつ着実に成長していけば..............」 


 「その一歩とは、いつになったら訪れるのですか?」


 「..............」


 彼のその言葉に、私は言葉が詰まった


 「ヨセフカ様、我々は守る側に立っている人間です。あなたより遥かに弱かったとしても、我々が背負う役割は変わりません。誰かに守られることに慣れてしまう訳にはいかないんです」


 「ジョンとジェイクのことを気にしているの?」 


 「っ!?」


 一瞬、ばつが悪そうに下を向くと、彼はすぐに前を向き直り、再び語り始める


 「やはり、あなたに隠し事は出来ませんな」


 「もし良ければ、あなたがそこまで思い込む理由、教えてもらえない?今は、皆の英雄としてのヨセフカなんかじゃなく、一緒に戦う戦友として、あなたの力になりたいの」

 

 「あの襲撃の際、あの二人は魔族と戦おうとしたと聞きました。実際の所は、いざ戦おうとした瞬間、あなたが割って入り、相対していた魔族2体を秒殺したそうですが..............」


 「そういえば、あの二人との最初の邂逅はそんな感じだったわね」


 「多くの仲間が惨殺されるところを目の当たりにしながら、彼らは団員として、2体の魔族の前に立ったんです..............」


 私は、”あなたにだって..............”っと言いそうになった自分を瞬時に押し殺した。私は彼の神妙な表情から、今の彼が欲しているものは、他人からの励ましや肯定の言葉ではなく、自分で自分を納得させることだと感じたためだ


 「俺は実際に確かめたいんです。自身を簡単に惨殺できるような存在を目の前にしても、自身は逃げずに立ちふさがり、勇気をもって立ち向かえるのかを..............まぁ今回の場合、背後で守る存在は、可憐なお姫様ではなく、怪物級の実力を持った英雄ですけどね」


 最後の軽口に対して、ふと私が笑みをこぼすと、彼はもう一度、私へ頼みごとをした


 「ですから、どうか先ほどのことを認めては貰えないですか?」


 「駄目よ」


 「なっ!?」


 面食らったような表情の彼を横目に、私は話を続ける


 「前の馬車で見たと思うけど、私はいざという時、考えるよりも先に体が動いてしまう質なのよ。だからきっと、あなた達が死ぬようなピンチに陥ったら、瞬時にその元凶を殺しにかかるはずよ。そんな不自由な制約付きでも良いというのなら、別に良いわよ?」


 「自身より強い相手に対して、死ぬような窮地に立つことなく排除しろと?」


 難題を押し付けられたような口ぶりではあったものの、彼の表情はどこか笑っていた


 「ふふっ、当然でしょ?私を後ろに待ちぼうけさせてまで、自分の我儘を通そうとしているんだもの」 


 私も笑みを浮かべながらそう返す


 「いいでしょう、この半年の間、受け続けた訓練の成果をお見せしましょう」


 彼はそう言うと、皆が待つテントの方へと戻っていく。その直後、心なしかテントの方の賑わいが増したのを感じた。どうやら、このお願いは皆で決めたことのようだ。血気盛んとはよく言ったものだ

 次の日の朝、野営していた地点から出発し、遂に森林地帯へと足を踏み込んだ。やはりと言うべきか、木々の密集度合いは相当のモノであり、視界を狭められる上に、街道上以外で馬車を走らせることは不可能と来ている。この分だと、ルートは街道に沿ってが固定となるだろう。


 「森自体を遠くから見る機会は何度かありましたが、実際に入ってみると、ここまで視界を制限されるとは............................」


 隣で馬を走らせているジョンも含めた全員に対して、私は注意喚起を行った


 「見落としのないように慎重に進むわよ!特に、茂みや段差のある場所での待ち伏せには警戒して頂戴っ!」


 ”了解っ!!”


 出来る限りの速度を出し、一刻も速くもの密林を抜ける。だが、周りの警戒は怠らず、着実に前へと進んでいく。こちらを狙って近づいてくる分には、私の感覚で感知できるが、どこかで動かずに待ち伏せされている獣までは流石に厳しい。獣人の感覚によって、周りの音や空気の流れを注視してはいるが、森の中では、木々が風でなびく音、他の生物による自然音などもある。しかも、ここまでの密林ともなれば、その数は膨大だ。その中から、自分らに敵意を向けたものがあれば瞬時に判断しなくてはならない。そんな作業をこなしながら、どこかで待ち伏せする獣の息遣いまで見極めるのは流石に今の私にはできない。


 「この音っ!?」


 「どうしましたか!?」


 私の反応に誰よりも早く気付いたのはマイクだった


 「北西方向!おそらくは”ハウンド・ウルフ”!数は10から12程っ!来るわよっ!!」


 西側へと進む私たちに対して、後方へ迫る形で接近しつつある魔獣たちを振り切るべく、私は馬の速度を上げるように号令を出す。速度を上げて進み始めてから数秒後、後方から猟犬ような唸り声と鳴き声を発する集団が見えてきた。黒色の体毛と赤い瞳、その体毛は大きく逆立ち、非常に攻撃的な印象を受ける。

”ハウンド・ウルフ”、魔狼(まろう)とも呼ばれる彼らは、狼を3回りほど巨大化させた体格を持ち、鋭敏な嗅覚で獲物を発見し、強靭な牙で嚙み千切る。足も速く、馬の全速力に匹敵する脚力を持っている上に、基本的に群れで行動することから、その厄介さに拍車が掛かっている。


 後方に迫る10匹のハウンド・ウルフ、先に気付いて速度を上げたことで距離を放せはしたが、この1本道の街道ではいずれ追いつかれる。私が後方に下がって............................

 そう考えていると、後方へ追随するハウンド・ウルフの1匹に矢が突き刺さった。馬車の後方列を担当しているジェイクによるものだ。


 「よしっ!!」


 そう言うと、彼は再び矢を放ち、その矢も見事に命中させてみせた


 正直、これには驚いた。魔力を矢に込め、放てるようになったのは知っていたが、まさか、この速度の馬上から正確な射撃ができるとは思わなかった。いつの間に出来るようになったんだろうか?

 すると、後方を走っている残り3名の団員達を射撃を始めた。ジェイクほどの精度ではないが、その射撃によって、1匹また1匹と数が減っていく。この調子でいけば、追いつかれる前に殲滅できるだろう。

 後方を確認する中、前方から一つの殺気を感じ、魔剣に手を掛けるが、抜き放つよりも前に、矢が放たれる音が響いた。前を見た瞬間に飛び込んできたのは、頭を射抜かれ、死体となって横を通過するハウンド・ウルフの姿だった。ジョンによる射撃だ。


 「ありがとう、ジョン!」


 「ありがとうございます!」


 完全に前方へ向き直った私の視界の先には、更に一回り大きなハウンド・ウルフが突撃しつつある

姿とその進行方向の中心にいるマイクの姿だった。このまま進めば、あのハウンド・ウルフの最初の餌食になるのはマイクだろう。再び魔剣に手を掛けるが、私は昨日のことを思いだし、その手を離した。代わりに私は、背後から彼の背中を見守ることにした

 ハウンド・ウルフとの距離が縮まり、マイクは剣を抜き、まっすぐ正面を見据える。ハウンド・ウルフが飛ぼうとする刹那、マイクは馬を横へと操作し、剣を振るう。凄まじい速度で振るわれた剣の軌道上には、飛びかかってきたハウンド・ウルフの首がぴたりと重なる。次の瞬間、血しぶきと共に、首と胴体が泣き別れとなったハウンド・ウルフの死体が後方へと転がっていく。それと同時に、後方の殲滅も無事に終了し、戦闘は終幕した。


 「約束、守ってくれましたね?」


 マイクが笑顔で呟く


 「誇っていいわ。正直、こんな芸当が出来るとは思ってなかった。馬上での正確な射撃、ハウンド・ウルフの攻撃に合わせた剣戟、一体いつの間にあんなことが出来るようになったの?」


 「主にヨセフカ様が他の業務で居ない時です。魔力を使えるようになってから、本当に色々なことが出来るようになったんです!」


 ジョンも、まるで童心に帰ったかのような笑みでそう語った。まさか、私が居ない間にこんなことまで出来るようになっているとは............................魔力による戦闘がぎこちないという評価は撤回すべきね。これだけ出来るなら、十分に信用して戦闘を預けられる。それにしても、魔力を使用できるようになるだけでここまで化けるとは驚きだった

 

 ”皆、まだ若い段階で魔力使用者になれたからだね”


 頭の中でフィーが語り始める


 ”若いとそんなに違うものなの?”


 ”魔力による身体強化の度合いは、本人の肉体の魔力への適正によって変わるんだ。そして、若い段階から魔力に多く触れている方が、齢を取ってから魔力に触れ始めるよりも魔力への適性が上がるのさ。彼らは、20代のも満たない若さで魔力に本格的に触れることが出来た。これからの伸びしろには大いに期待して良いと思うよ?”


 ”ミスリルによる魔剣の安定化と若い世代での魔力使用者の増員、この両方が達成されれば..............”


 ”少なくとも、残党ばかりの今の状態なら、もう軍事面で不安を抱える必要はなくなるだろうね”


 ”本格的に希望が見えてきたわね”


 だが、世間というものは、そう都合のいいことばかりが続いてくれるものではない。何かが上手くいって有頂天になっている時ほど、それを嘲笑うようなことに見舞われるものだ


 「ヨセフカ様っ!!」


 私たちは、先程の戦闘が終了した地点から更に進んだ後、一度、馬を休ませるために休息を取っていた。その折、この先の街道の状態を確認するため、ジョンとジェイクの二人を斥候に出したのだが、その二人は血相を変えて戻ってきたのだ 


 「どうしたの!?」


 二人の尋常ではない姿に声を荒げる


 「正門です!エルフ国の正門です!」


 遂に目的地に到達したかと期待を膨らませるが、次にジョンから発せられた言葉に、私の心臓は摘まみ上げられるような感覚に襲われる


 「戦闘痕です!城門は酷く荒れていて、エルフは一人も見当たりませんでした!」


 「休息はここまでよ!至急、エルフ国内に突入するわよ!!」


 早急にその場を後にした私たちは、報告にあった正門まで到達した。その姿は酷いの一言であり、門は破壊され、所々に剣戟によって外壁が削れた痕も散見できる。だが、これだけの戦闘痕があるにも関わらず、血痕や死体は一つもない。


 「中へ進むわよ」 


 そう言って正門から中へと入ると、そこに広がっていたのは、荘厳とはかけ離れた、戦闘によって荒廃した無残な町の姿だった............................


 密林での一波乱がありながらも、無事にエルフの国へと到達したヨセフカ一行だったが、その視界に飛び込んできたものは、無残な廃墟だった。死体や血痕は無く、戦闘による破壊痕ばかりが目立つ不気味な廃墟。彼女らがこの場所で手に出来るモノはあるのだろうか?そして、この悲惨な有様をもたらした元凶は、彼女らをどうもてなすのだろうか?

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