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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
花咲く乙女の舞

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試行錯誤する花(5)

「端的に言やミスマッチだ」

「外から見るとそう見えるな」

 少年二人の意見は明確だ。


 フラワーダンスのメンバーはなにを言われているのかわからない様子。ラヴィアーナも通のジアーノに視線を送って尋ねるがわからないというジェスチャー。エナミも理解できずに次の台詞をを待っている。


「あたしのほうがあんたの相手をすべきだった?」

「違えよ」

 一言に否定する。

「理解はできんだぜ。ビビとサリは付き合いが古いからよ。息も合うし相手がなに考えてるか確認するまでもねえってな」

「そうだったんだ。僕は事情は知らなかったんだけどさ」

「え、それが変なこと?」


 少女は呆然として尋ねる。まったく思い当たる節がない感じだった。


「あ、もしかして?」

 エナミが一番に気づいた。

「なになに?」

「リィが速くなりすぎた?」

「おう、最近のことでもねえはずだけどな」

 正解を言い当てたらしい。

「射線を邪魔してしまうから」

「あちきが悪いのかに?」

「そうじゃねえよ」


 ミュッセル曰くユーリィのスタイルは以前より変わっていない。経験を積むほどにパイロットスキルが向上して機動速度が上がろうとも基本は同じ。


「ミンは純粋な狙撃手タイプだろ? 移動して撃つ。敵に合わせてまた移動。そんで撃つ。それじゃ操縦が上手くなったリィに追いつけねえんだ」

 少年の指摘は続く。

「狙撃手としては優秀なんだぜ。『狭隘の魔手』って呼ばれるくれえ障害物(スティープル)配置を読むのも早え。でもな、動く味方には通用しねえ」

「ごめん、リィ。私も感じてた」

「ミンが悪いんじゃないに!」

 仲間同士で庇い合う。

「サリは違うだろうが。お前は三次元的な狙撃をするだろ? 地べたで動きまわるリィにも対応して狙点を変えることもできる。そうじゃねえか?」

「そう……だけど」

「な、ミスマッチだろ?」


 皆が理解はする。しかし空気は悪くなった。ペアというのは重要で、そう簡単にスワップできるものではないとジアーノに教わる。


「あたしとサリは不可分なの。それでやってきたんだもの」

 ビビアンは譲らない。

「いいのかよ。上を目指してえんじゃねえのか? みんなで勝利を喜ぶより、仲良し遊びのほうが大事だって言うんじゃねえよな?」

「……く」

「こう考えてはどうだい?」

 空気を変えるようにグレオヌスが提案する。

「サリはビビの戦術を最もわかっている理解者だ。それなら走りがちのリィを制して全体の効率化を図るのがチームを強くすると」

「ほんとだわ……」

「つらいし、最初は慣れないかもしれないけどリターンは非常に大きいと思うな」


 フラワーダンスメンバーはお互い様子見の姿勢。誰かが決断するのを待っている。そして、こういうときに決断するのがリーダーの役目である。


「やってみましょう。エナっていうコマンダーを得た今、あたしたちも変わるべきときなのかもしれない」

 はっきりと言った。

「え、私の役目も決定なの?」

「あら、嫌だった?」

「い、嫌じゃないけど、みんなが賛成しないと」

 少女は戸惑っている。

「反対の人」

「……誰もいねえな」

「じゃあ、試してみましょう。即興でどこまでいけるかわからないけど」


 チームリンク内の交信優先度を変更していく。即席ペアであればこそ情報交換を密にしなければ成り立たない。


「じゃあ3ターン目、エントリ」

「配置変えます。ウルはそのまま。リィとサリでグレイを。ビビとミンはミュウに」

「ファイト!」


 今回はそれぞれのペアの実効性を測るためのターンなのでツインブレイカーズは最初から分かれていった。各々のペアが追撃していく。かなり慎重な入りとなる。

 しかし、いきなり空気が変わったのが素人のラヴィアーナにも察せられた。攻めあぐねているのがわかる。フラワーダンスではなく二人のほうが。


「出足潰しにきやがる。ミン、いやビビか」

「あんたの手の内はわかってんのよ。簡単に前に出さない」

「右回り、よろ」


 ヴァンダラムが接近を掛けようとするとビームが足元をえぐる。直撃狙いなら弾いて前に出る少年も止まる。気配を察したビビアンが射線を開けて狙撃を誘導しているのだ。


「突っ込みが深い。面倒だな」

「押す」

「食らうにー!」


 狼頭の少年もトップ二人に翻弄される。これまでなら捌ききれていたものが失敗している。上空からのビーム狙撃を躱しながらになっているからだ。


「機能している。即席でここまで?」

「かなりいい感じだね。練習重ねればもっとスムースになりそうだ」


 驚くエナミにジアーノも高評価を下す。誘導された両ペアはツインブレイカーズを完全に分断してしまい、膠着状態で予約時間いっぱいを使い訓練を終了する。


「いけるとは思ったが一発目でここまでやるかよ」

「難しい相手になったな。入りを工夫しないと勝てそうにない」

「手応え、すごくなかった?」


 少女たちも興奮してなんと表現すべきか戸惑っている様子だ。無言で余韻を味わっている。


「これならいけそう……」

 リーダーが口火を切る。

「うん、すっごくやりやすい」

「いけるにー!」

「それとさ、僕からも一つ提案があるんだけど……」

 グレオヌスの提案にエナミやフラワーダンスメンバーが驚愕する。


 ラヴィアーナも彼らの視点の広さに心底驚いていた。

次回『碧星杯四回戦(1)』 「テストパイロットには無理でも、汚い大人は引き入れたいと思うものです」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 まぁ、確かに平面のボードゲームじゃないしね?
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