表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
スクールの選手たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/409

碧星杯二回戦(1)

「この事件で一躍有名になったミュウ選手ぅー! 私から言わせてもらえれば、どうして街を破壊しなかったのか、『紅の破壊者ぁー』!」

「するか、馬鹿野郎! たかが酔っ払いをとっちめるのに街壊してどうすんだ、ボケ! そんなことしたら俺はこの場にいられねえに決まってんだろ!」


 入場してすでに紹介を受けた今、いつものリングアナとミュッセルのアドリブ掛け合いコントが始まっている。グレオヌスは終わるまで第三者に徹することにしている。


(不謹慎だけどユーモアのレベルに抑えてある。上手いな、フレディ氏は)

 呑気に考えていた。


「そんな紙一重の悪魔が対するのはこのチーム!」

「誰が紙一重だ! ぶっ飛ばすぞ、てめぇ!」

(ノース)サイドからの入場はチーム『ウォーロジックぅー』! 奇しくも同じスクール生! それも軍務科のエリートの登場です! 強者を前にチーム『ツインブレイカーズ』はどう戦うのか! 注目の一戦です!」


 パオ・リシガン率いる(エース)クラスのチーム『ウォーロジック』は全員がアームドスキン『シュトロン』で入場してくる。古くプレーンなベース機体ながらも名機と評され、未だ実戦配備されているところもある。


(母が最初に手掛けたアームドスキン。ちょっと皮肉な感じはするな)

 彼の母ホールデン博士が開発に大きく関わった機体である。


 重力波(グラビティ)フィンタイプに改装されてはいるが管理局の配備では二世代、三世代前の機種になる。現在は『コムファンⅡ』か『ゼスタロン』が主力である。


「奴ら、スポンサーに部品製造メーカーが付いてる。だから、購入機体に開発したパーツを組み込んでテストさせられてんだ。機体を提供してもらう代わりにな」

 ミュッセルからそう説明を受けていた。


 少なくないタイプに類するチームだとマシュリからも聞いた。アームドスキンメーカーも数に限りがあり、契約しているパイロットのワークスチームも比例して多くはない。

 しかし下請けパーツメーカーとなると裾野は広がり数も多い。クロスファイトとという場が宣伝にも開発にも有用である以上、参入のメリットは高いそうだ。


(準ワークスチームってとこかな。競争も激しくて大変そうだ)


 メーカーに抱えられている契約パイロット枠は熾烈な争いになる。選手の中には将来の活動を見込んで売り込みに余念がない。

 パオたちは(G)(F)入隊が目標なので事情が異なるが、それでも専用にチューンされたアームドスキンを使えるか否かは勝敗に大きく関わるので必死だろう。


(だからって後輩にプレッシャーを掛けにくるのはいかがなものかと思うけどな)

 理解はできても共感はできない。

(パイロットスキルで勝負できなければ将来苦労するだけだろうに)


 彼らの言うランクの低い(・・・・・・)星間(G)平和維(P)持軍(F)にまわされるのは是が非でも避けたい将来らしい。また胸にモヤッとしたものが込みあげてくる。


(果たしてそうかな? 演習ばかりしている(G)(F)より、実戦経験豊かな星間(G)平和維(P)持軍(F)が劣っているといえるかな?)

 グレオヌスはそれを証明しにきた。


「目立って増長した後輩を指導するのも先輩の役目。その驕り、今日この場で打ち砕いてやろう」

「格好いいな、先輩方よぉ? 放課後に呼びだして負けろって迫ってきた奴と同一人物だとは思えねえぜ」

「き、貴様、我らに恥をかかせようとそんな嘘を!」


 暴露された相手は激昂している。自ら証明するような振る舞いに呆れを通り越して落胆する。もう少しクレバーでいられなければ実際の戦場では通用しない。


(G)(F)の質は思ったより下がっているかもしれないな)

 不安に感じてしまった。

(まあ、彼らは特殊な部類で、実際に入隊するのは志高い人ばかりだと思っていたほうが精神衛生的にいいか)


「据えかねてんだろ?」

 抗議の声をあげるパオを無視してミュッセルが言ってくる。

「怒ってはいないさ。色々と思うところがあるだけ」

「露払いしてやるぜ。奴と一騎打ちでいいだろ?」

「腹に据えかねているのは君のほうじゃないかい?」

 相棒は「違いねえ」と笑う。

「友達に手ぇ上げやがった野郎に一発ぶちかましてやりてえのはほんとだな」

「でも、この構成は大変だろう?」

「なんとかなんだろ」


 ウォーロジックは3トップ構成だ。剣士(フェンサー)三名に砲撃手(ガンナー)二名という布陣。かなり攻撃的なチームだといえよう。パオを除けば2+2を相手しなくてはならない。


「トップエース先輩を引っ張りだせ。それだけでいい」

「わかったよ」


(メーカーのサポートがあるのに(エース)クラスに甘じているチーム。底は知れるというものだな)

 読み解く。


「おーっと、早くも口撃戦に突入しているぞ! 戦いのゴングを待ちきれない!」

 リングアナも煽りにくる。

「アリーナも待ちきれないかぁー? さあ、ゴースタンバイ? エントリ! ファイト!」


 ゴングが鳴る。ウォーロジックの五機は開幕から動く様子はなかった。こちらに合わせて対処ができると見下している。


「余裕ですか、パオ先輩?」

 ブレードを展開して半身に構える。

「あまり侮らないほうがいい。僕は実戦経験者ですよ?」

「スクール生がブラフを。そんなわけがない」

「残念ながら生まれも育ちも戦闘艦です。若造が専用機を用意してもらった意味を考えてみてください」

「まさか?」


 パオはグレオヌスの挑発に見事に乗ってきた。

次回『碧星杯二回戦(2)』 「すっごい勢いでクロスファイト通になってきちゃうわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 訓練だけの大人と 実践済みの子供だと覚悟が、ね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ