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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
ツインブレイカーズ

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チーム戦登録

 二日掛かりでレギ・クロウの修理作業が終わってミュッセルとグレオヌスはこの日、放課後に公的機関エリアに足を伸ばしている。どのビルにも出入りする人々が多い中、そのビルの表口は主に観光客が目立つ。しかし、二人は裏の目立たないドアから入場する。


「こんな流行らない感じなんだ」

 グレオヌスは不思議に思った様子。

「あんまり用がないからな。大概はオンラインで済んじまう。俺もたまに顔を出すくらいだし」

「大々的にやってるクロスファイト興行なんだし、もっと派手なのかと思った」

「運営は裏方。銀河全域でいえばGAEは別のコンテンツのほうが有名じゃん」

 ここは星間()管理局()興行部()ビルである。


 星間管理局のエンターテイメント部門である星間()管理局()興行部()は、所属芸能人のマネジメントから各地に置く興行施設の運営管理が職務である。その中でクロスファイトの占める割合はそれほど大きくはない。


「クロスファイト部門なんて、この奥にある窓口くらいのもんだ。ほとんどの処理がオンラインとアリーナドームで済むんだからよ」

 担当者の勤務場所でしかない。

「ここもただの通用口だしな」

「GAEの通用口って……」

「あ、ミュウちゃんだ。どうしたの?」

 ドアで鉢合わせたのは驚くほど可愛い女性である。

「登録に来たんだよ」

「更新かなにか? へぇ。お姉さんと遊ぶ時間ないのに?」

「学生は忙しいんだ。お前と遊んでる時間なんかねえ」


 女性は頬を膨らませる。しかし、横にいる別の女性に促されて、二人に手を振りながら去っていった。


「知ってる人?」

「ジーニャ……、なんだっけ?」

 ファミリーネームが思い出せない。

「もしかしてジーニャ・キュメイ? 疎い僕でも曲くらい知ってる有名シンガーじゃないか」

「そうか? 前にちょっとかまってやったら妙に懐いてやがる」

「じゃあ、隣りにいたのはエージェントの人だったんだ」

 マネジメント担当者である。

「やっぱり所属の人が使う出入り口じゃないか」

「でもよー、ここの奥にしか正式窓口がねえし」

「ずいぶんと境目の曖昧な。もし、ミュッセルに推しの芸能人とかいたら会い放題だろう?」

 言い募ってくるのに「興味ねえな」と返す。


 たまにしか来ないのに、すれ違う人間が妙に彼に興味を示す。だから足が遠のいてしまいがちである。


「そういえば、確かに歌は上手いな。時々連絡してくるメッセージに添付してあっから聴いてるが」

「それって普通は無料(ただ)で手に入らないものだと思うよ?」

「そっか。今度会ったら礼くらい言っとくか」


 自分から連絡するよう勧められる。耳が寝ているので呆れられているらしい。


「あ、悪魔ちゃんだ、いらっしゃい」

「誰が悪魔だ。変な略し方すんじゃねえ!」


 奥まった場所の窓口にいる若い女性が声を掛けてくる。彼女が窓口担当者の一人、ヴィアンカ・スレイであった。


「碧星杯の受付は来週からよ。今日はなにしに来たの? そっちの子ってこの前、君ととんでもバトルしたグレイちゃんでしょう?」

 ヴィアンカは捲し立ててくる。

「登録に来たんだよ。仕事しろ」

「登録? やっと芸能人(タレント)登録する気になった? そっちの窓口はここじゃないわよ」

「チームカテゴリにエントリすんだよ」

 ソロ一本だと思い込んでいるらしい。

「えー、とうとう? どこかにスカウトされたの?」

「いいや、準備ができたからなだけだ」

「そう? じゃ、メンバー表送って」


 投影コンソールを立ち上げている。目で促してくるが、そんなものはない。


「俺とグレイだけ。チーム名は『ツインブレイカーズ』で」

 キョトンとした顔をされる。

「二人? あと三人は?」

「だけだっつってんだろうが」

「正気?」

 小首をかしげる。

「せめて、あと二人」

「二人だ。さっさとしろよ」

「マジで?」


 しばらく押し問答になったが突っぱねる。真面目に調べていなかったが、前代未聞のことだと言われた。


「余計に面白えじゃねえか」

 不敵に笑う。

「運営としては歓迎するわよ。でも、それなりの成績じゃないと盛り上がらないわ」

「盛り上げてやっから心配すんな。大人ぶったチーム戦に嵐を巻き起こしてやんよ」

「豪語するわねえ。考えられなくもないか」


 グレオヌスを流し見てくる。金華杯決勝を見ているなら納得できるはずだ。彼のパイロットスキルもずば抜けていると知っている。


「でも、ヴァリアント壊れちゃったじゃない。運営(こっち)で運び出さないといけないくらいの有様だったけど、もう直ったの? レンタル機使うとか言わないでね?」

 それでは盛り上がらないと思っているか。

「新型を入れる。こいつだ」

「『ヴァンダラム』? こんなの作ってたの?」

「ちょっとな」

 ニヤリと笑う。

「へぇ、そう。いいわね。面白くなりそう」

「スペック表見てわかるのですか?」

「これでもプロなのよ、グレイちゃん」


 年若い女性と侮っているらしい。こんなしゃべり方でもヴィアンカは間違いなくクロスファイトに関してはプロである。


「で、グレイちゃんはレギ・クロウのままね? チーム名は『ツインブレイカーズ』と。面白くしてちょうだいね?」

 満面の笑みで言われる。

「楽しませてやっからよ。待ってな。それとアリーナの訓練場予約入れてくれよ」

「はーい。スケジュール表送ったから都合いいところに入れといて」

「おう、わかった」


 ヴィアンカに礼を言って星間()管理局()興行部()ビルから帰った。

次回『ミュウのプレゼント』 「聞き捨てなりませんね。追い出しましょう」

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― 新着の感想 ―
[一言] 今までも度々思ってましたけど、耳で感情がわかるのって、やっぱりかわいいですよね!
[一言] 更新有難う御座います。 二人は異端か。(人数不利だもんな)
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