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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
ツインブレイカーズ

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再始動は大変(1)

 六人しかいないのだが、いうなれば十人十色の反応だった。


 ユーリィはわけがわからないと猫耳を立て、レイミンはため息をついて肩をすくめる。サリエリは頭を抱えて嘆き、ウルジーは彼を心配して熱を測る。エナミは一人感心した様子だった。そして、ビビアンは目を三角にして怒っている。


「今、なんて言ったの?」

「だからチーム戦に殴り……、いや挑戦するっつった」

 ミュッセルはちょっとビビっている。

「その前」

「グレイと二人で」

「嘗めてる?」


 フラワーダンスリーダーの目は余計に細められた。額をぶつけんばかりの距離で睨んでくる。


「まあまあ、話を聞こうよ」

 グレオヌスが宥めに入る。

「他のメンバーに当ては? それとも今から募集するのかい? 主に援護役の砲撃手(ガンナー)が必要だね」

「だから、言ってんじゃん。二人だけってよ」

「『だけ』は僕も初耳だよ」


 グレオヌスの耳が寝る。上手く伝わってなかったかと後ろ頭を掻いた。ずっと頭の中にあったビジョンなだけに言葉足らずだったようだ。


「馬鹿じゃないの。不可能だわ」

 ビビアンが指を突きつけてくる。

「あんたたち二人のパイロットスキルがずば抜けているのは認める。昨日、嫌ってほど思い知らされたから。でも、五人のチーム戦に二人で挑戦するっていうのは論外」

「そうでもねえと思うんだがよ」

「そうなの!」

 声を荒げる。

「知らないわけじゃないでしょ? チーム戦っていうのは結局は数なの。戦術も大きく関わってくるけど重要度で劣る。三機まで撃墜(ノック)判定(ダウン)食らったらギブアップするチームだって少なくないの! それを最初から二機でスタートするですって? 頭おかしいとしかいえない」

「わかってるって」

「わかってない。素人ばかりならともかく、プロがひしめく世界じゃ無理」


 ビビアンの言うように、クロスファイトのパイロットにはプロのほうが多い。賞金で生活をする者だけでなく、メーカーの契約パイロットがそれだ。簡単に言うならテストパイロットである。


「そもそも、それが気に入らねえんだって。すまし顔でお綺麗な戦い方しやがって。アームドスキンをなんだと思ってやがる」

 彼が不満に感じているところである。

「商品よ。彼らはメーカーエンジニアの要望に従ってアームドスキンそのもの、あるいは指定のパーツの性能テストを求められているの。勝利と同等のウェイトを占めてるわ」

「そりゃ、ソロでも一緒だって」

「チーム戦はもっとあからさま。必要なデータを得るための戦術を組んでくる。周到な準備のもとにね」

 主目的で戦術が左右される。

「アームドスキンは兵器なんだよ。そういうのはテスト場でやってこいってんだ。勝ちにこいよ、勝ちに」

「操縦で生活したい人はそうはいかないの。下手したら、仕事以外じゃアームドスキンなんて乗りたくもないって人もいるかもよ」

「夢がねえ奴はクロスファイトに来んな。あそこは俺たちの戦場じゃねえか」


 見れば見るほどに思いが募っていた。管理局本部にしてみれば趣旨に沿っていると言うだろう。しかし、実際に身を置く人間からすると馬鹿にされているようで腹が立つ。


「夢ね。そういう子供っぽいものを捨ててるのが大人ってものなの」

 ビビアンもあきらめない。

「だったら俺たちでもう一遍熱くさせてやろうじゃねえか。今のかしこまってるチーム戦カテゴリをぶっ壊してやる」

「はぁーあ、やってみれば? そんで爆死すれば?」

「簡単にゃ死なねえぞ、俺は」


 思いは固い。少々説得されたところで曲げるつもりは毛頭なかった。


「で、それに協力してほしいってことなんだな?」

 グレオヌスが訊いてくる。

「ああ、頼む。ずっと相棒を探してたんだ。俺と肩並べて馬鹿やれるだけのスキル(ちから)がある奴を」

「認められるのは悪くない気分だけどさ、君なら我慢せずに一人でも喧嘩を売りに行ってたような気がしてね」

「無理だったんだって。チーム戦のレギュレーションに邪魔されてよ」

 それが一番の不満だった。

「レギュレーション?」

「ええ、チーム戦の規定に『1チームは複数、二機以上五機以下であること』っていうのがあるのよ。一機じゃ登録できません」

「そうなんだ、サリ」


 グレオヌスは納得している。勉強の他にクロスファイトにも詳しいサリエリが説明すると説得力がある。


「だったら別に僕じゃなくてもよかったかもな」

 数だけ揃えばいいと思ったらしい。

「馬鹿抜かせ。そんなん面白くもなんともねえじゃん。同じ場所で同じ強さで同じ時間を戦って同じ勝利を味わうから楽しいんだろ? 数合わせなんて相手を見下してるだけだ」

「なるほど、それで僕に白羽の矢が立ったわけか。うん、まあ光栄だね。やってみようか」

「グレイってば正気? 苦労するわよ?」

 ビビアンは二機で戦うこと自体がチーム戦をこき下ろされている気分になるようだ。

「ほんとの戦場でも、二倍以上の敵を前にすることだってある。そんな感じ」

「違うわ。リングに障害物(スティープル)って限定された環境は数の論理を強くする。思い知るといいわ」

「挑戦してみる価値はあるね」

「だろ? よし決めた。俺たちのチーム名は『ツインブレイカーズ』だ」


 ミュッセルははっきりと宣言した。

次回『再始動は大変(2)』 「ひでえな、おい!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 二人で勝てそうな…… 下手したら単騎で優勝しそうなのが 過去作にチラホラと?
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