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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
モンスターブレイカーズ(後編)
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グレイ奮闘

(さて、と)

 グレオヌスは意識を切り替える。


 右腕を大破したヴァン・ブレイズの離脱を確認した。ミュッセルが復帰するまでは一人で戦わねばならない。しかし、それほど厳しいとも思っていない。


「実戦モードの僕はスタイルが違うよ? ミュウみたいに突っ掛かっていかないからさ」

「シュルシュル……」


 一転して静かな対峙になる。不用意に仕掛けてこない知恵が小憎らしい。レギ・ソウルを倒れた障害物(スティープル)の上にさらす。カタストロフもひと跳ねして300mは離れたところに登ってきた。


(さすがに対消滅爆弾のショックは大きかったか)


 目の前で起爆させた爆弾は一時的に人口土の下、フロアベースの金属面まで削り取っている。今は土が崩れて少し埋まっているがクレーターと化していた。


「どうくるんだい?」


 赤茶色のボディでレンズが輝く。放たれた二条の白光がレギ・ソウルに迫ってくるも、手前50mで積層エネルギーに変わる。大輪の白い花は分解されてサイクロン化しディスクを形成した。


(制御圏はこれが限界。コントロールの確実性は上がってきた感触だけど、距離を伸ばすのは一朝一夕ってわけにはいかなさそうだな)

 デリケートな制御を確かめる。

(欲しいのは別の方向性だから置いておこう)


 変換されたのを見てカタストロフも生体ビーム発射を控える。グレオヌスはディスクを引き寄せてから前進を開始。向こうからも近づいてきた。

 次に来るのはなにか予想がつく。確かめておきたいので不用意に歩を進めていった。すると、やはり腰の裏から副腕が顔を覗かせる。


「それなら射線が読めないだろうって? 悪いけど解析も進んでるんだよ」

「シャー」


 警戒音のあと、副腕の先がパカリと十字に口を開く。向きから予想到達範囲がモニタに反映され、反動認識で発射を予測する。機体は逃がしディスクに直撃させた。


(衝撃波も一種のエネルギー波動として変換できたな。これは大きい)


 ディスクの表面にエネルギークラウンができ、そのまま吸収される。サイズは若干大きくなった程度。エネルギー量は大したことないようだ。


(けど……、ちょっと防御に足らないし、どこまでいけるか試せる環境で試しておこう)


 ヒップガードのビームランチャーをラッチから外して乱射する。萼の側をこちらに向けた青白く輝く花を咲かせ分解する。空間エネルギー変換(コンバータ)システムでディスクを幾つまで作れるかも重要である。


「シャシャッ?」

「待ちなよ。これで準備できたからさ」


 最大で五つのディスクが形成できた。制御点を作れず迷走させてしまったエネルギー片は生成したディスクに吸収させる。グレオヌスはカタストロフと同様、任意に動かせる防御手段を得たのである。


「戻ってくるまでに倒してたら文句言われるかな?」

「シュー」

「ま、そんなに甘くないか」


 歩みをどんどん速めていく。お互いに全力疾走になると一瞬で激突。大振りの斬撃を怪物はフォースクローで受け止め盛大に紫電を放散した。

 力場(フォース)(ウィップ)で受け止めてきたら絡めてディスクに食わせてみようと思っていたのに目算が外れる。代わりに至近距離で生体ビームを撃ってきた。


「っと!」


 ディスクを滑り込ませる。全出力を吸収させると、やはり生体ビームのほうがエネルギー量が多い。一回り大きくなったディスクを前面に掲げながら一度間合いを切った。


「ここに来てパワーアップかい?」


 最大でも約30mの射程しかなかったフォースウィップが大きくひるがえる。50mオーバーに伸長した。連続してディスクを叩いてくるも、接触した部分はこちらの制御力のほうが上。波紋の如く分解されて吸収する。


「意地になるなよ」


 連撃をやめないカタストロフの前に別のディスクを持ってくる。懸命に打ち据えてくるも成長させるだけ。さすがに憤然としつつ一歩引いた。


(相性悪いな、本体周辺での制御力は相手を上回るというのは)

 どちらも決め手に欠ける。


「シュー」

 威嚇音を立てつつ突進してくる。


 ディスクにフォースクローを突き立てた。紫電が散るが、徐々に食い込んでくる感触がσ(シグマ)・ルーンを介して伝わってくる。干渉力の範囲をお互いに探っていたらしく強引な手段に出てきた。


「それはちょっとよろしくない」


 ディスクと機体を下げる。エネルギーの一部がえぐり取られたのか一回り小さくなってしまう。つい鼻頭に皺を寄せてしまった。


(このままだと一進一退……、ん?)

 変化に気づく。

(この反応はもしかして)


 ディスクの形状が揺らいでいる。直接攻撃を喰らった部分の裏に棘が立っていた。時間が経つと元に戻っていくが見逃さない。


「なるほど。そういう性質を持っているのか」


 間合いを外してディスクを前に持ってくる。右手のブレードを真ん中に突き入れた。すると反対側、つまり前面からエネルギーを放出する。まるでビームのように。

 ブレードを使っているので真正面に撃ち出される。予備動作も大きいがゆえにカタストロフは容易に躱した。


(逆側に反作用が出る仕組みになってる。だったら……、悪くない)


 グレオヌスはとある方法を思いついて口端を上げた。

次回『我慢の報奨』 「接続確認三十秒です」

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