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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
モンスターブレイカーズ(後編)
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再戦はド派手に(4)

 蓮華槍(れんげそう)で転ばせたカタストロフに追撃を掛けるべくダッシュするヴァン・ブレイズ。しかし、ミュッセルの意識の視界には金線が連続して走る。発射された衝撃波(ブラスト)咆哮(ハウル)に姿勢を崩され、足元も狙われて足留めされる。


「ちっ、こいつの悪いとこは決め手になんねえとこだぜ」

 不満げにつぶやく。

「冗談。普通は一撃でバイタルロストするさ」

「通じてねえじゃん」

「あれは戦闘生命体だからな」


 外部からのダメージには強いと言いたいのだろうがそれでは困る。二人はヴァラージを降参させたいのではなく撃滅しなくてはならない。少年の手札では、浸透系の打撃しか通用しないと言われたようなもの。


「酷なこと言うなよ」

「それ言ったら僕だってさ。無闇に斬り飛ばせば分体作られる可能性があるんだよ?」

「斬った部分からも再生しやがんのかよ。洒落になんねえじゃん」


 グレオヌスがあまり積極的に斬り掛からない理由を告げる。過去の情報から、効果のある攻撃と危険な攻撃を学んでいる。


「動けなくして消すしかねえな」

「ああ、そのために対消滅爆弾なんて危険極まりないもの持ってきたじゃないか」


 反物質を封じ込めてある爆弾。時空外媒質(フレニオン)反応を利用した対消滅炉(エンジン)とは違う。本物の反物質と物質を反応させて消滅させる、規模によっては使用を禁じられている兵器である。

 アンチVが効かなくなったカタストロフへの最後の決め手がそれだ。二人は突入前に星間(G)平和維(P)持軍(F)のアームドスキンから撃滅用武器としてリモート起爆式の爆弾を二発ずつ預かってきている。


「局長が都合した虎の子だってんだから問題ねえだろうが」

「反物質量も加減してある。接触させた状態で元のサイズのカタストロフなら消し飛ばせるらしい。今のサイズなら十分のはずさ」


 相手を動けなくした状態で使わなければいけないという意味。駆体に接触させて起爆させるしかない。昔戦争に用いられていたような、都市を消し飛ばすクラスの反物質弾頭は星間法で使用を禁止されている。


「ともあれ、この感触はもう強化変形はできない状態だと思う。消耗させていけばエネルギー欠乏で活動停止に追い込めるさ」

「だろうがよ、コンパクトに収めた所為でまだまだ元気いっぱいだぜ。だんだん縮んででも戦える感じに仕上げてきそうで面倒くせえ」


 斜めに倒れたアングル型障害物(スティープル)を乗り越えるとフォースウィップが風切り音を鳴らす。ブレードナックルで叩いて逸らし懐に入り込んだ。


「安心しろ。そんな塩っぱい勝ち筋狙わねえで正面から勝ってやっからよ」

「シャー! ジャー!」

 喧嘩を売られているのは理解しているようで威嚇を返してくる。


 ショートフックで顎をかち上げると、仕返しに脇腹に拳を入れてくる。奥歯を噛み締めて衝撃に耐え、肘を落として打ち落とした反動を使って腹にも一発決める。芯の通し方が不完全で十分な威力ではない。

 それでも弾かれた身体はノックバックし、振り下ろしたフォースクローは届かない。力場の爪先がブレストプレートに三本線を刻んだのみである。


「そんな無茶しないでも」

「ぎりぎりじゃ駄目だ。真正面から叩き潰せるくれえじゃなきゃ、こんな生物兵器を使ったテロがメルケーシンに通用するって思わせちまう」


 駆体の一部分でも刎ね飛ばすのが危険なグレオヌスでは積極的な白兵戦を控えている。今も突きをメインに心臓のある二ヶ所とやらを狙っているが、ブレードの直線的な攻撃は迎撃しやすい。


「加減せず斬っちまえ」

「できないよ。小型の分体でも馬鹿にならない」

「すぐに焼きゃいいだろ。腰にぶら下げてるもんは伊達じゃねえ」


 直撃させるのが難しいビームランチャーをほとんど使っていない。だが、刎ねた駆体の一部を焼くくらいは簡単なはずである。


「処理してる間は君のフォローができなくなる。いささかリスキーかな」

「気にすんなって。そんくらいもたせてやる」

 証明すべく接近戦を続ける。


 足払いからの掌底撃で崩し蹴り足を飛ばした。崩したりなかったかパワーだけで足を掴み取り、回避できないところで顔面を殴られた。

 しかし、頭部までフレームの通っているヴァン・ブレイズだと耐えられる。エルボーを脇腹に突き刺しオーバーハンドフックで殴り返した。地面まで叩きつけるほどの一撃で盛り返す。


「ギャシャッ!」

「痛えだろ? とことん追い込んでやっから覚悟しやがれ」


 単独でも十分なダメージを与えながらレギ・ソウルの突きも当てていく。回復が間に合っていないのか、それだけでも弱ってきた気配があった。打ち負けはしない。そんな攻防が続く中で油断があったのかもしれない。


「あん?」

「シュー」


 ある時、戦気眼(せんきがん)に映った金線に違和感を覚える。ブラストハウルを放とうとしている開いた口を打ち抜いてやろうかと思った拳を止めてしまう。別の金線が下からも交錯していた。


(なんだ、これ?)

 背筋を寒気が駆け上っていく。


 危険を示す勘を頼りに機体を引いた。徐々に危機感は増大していく。思いきり軸足を蹴って後ろにジャンプした。最終的にそれで命拾いする。


「このやろ!」


 ミュッセルの目の前でなにかが爆発的に弾けた。

次回『再戦はド派手に(5)』 「とんでもねえ隠し玉持ってやがった」

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