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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
モンスターブレイカーズ(後編)
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フラワーダンス共闘(5)

 ビビアンのホライズンが足元に滑り込んだ状態。そこへカタストロフの手が向けられ、手首から一直線にフォースウィップの力場がコクピットへと伸びる。


「ビビ!」

 エナミの心臓がキュッと縮む。


 そこへ真紅の踏鳴(ふみなり)がビビアン機の脇で盛大に弾ける。瞬速の蹴撃が力場を縫って直撃した。胸のど真ん中に足刀を喰らい、もんどり打って倒れる駆体。


「来い!」


 ヴァン・ブレイズが伸ばした左手がホライズンの左手を取っている。蹴ると同時に後ろへと振り回した。遠心力で宙を舞った機体が落ちてきたのは真紅のアームドスキンの肩の上だった。


「ぶちかませぇー!」

「うああぁあー!」


 防御もなにもない状態のカタストロフに目もくらむような連射が浴びせられる。粉砕された甲殻が熱せられ、雫となって散る。しかし、途中からは紫に光る干渉波へと変わった。


「しぶてえな」

「腹立つ」

 とんでもないコンビネーションを見せた二人は不満げだ。

「狙ってたの?」

「なんとなくな」

「それとなくね」

 ちょっと妬けるが結果オーライなので黙る。


「ここでミュウ選手とビビ選手による猛攻が決まったぁー! 怪物は半身焼けただれているー! 勝負あったかぁー!」

 フレディも熱弁している。


 確かに甲殻はかなりダメージを受けている。内部組織が露出しているがリフレクタを張り巡らせる余力もあった。不用意な接近を躊躇っているうちに表面が硬質に変化していく。


(しばらく生体ビームのレンズまでは再生できないと思う。でも、今突っ込んでも危なかった)


 無事な背中側から伸びた螺旋(スラスト)力場(スパイラル)が蠢いている。みるみるうちに二対目が生えてくると全身を包みこんでいた。ビームも弾き、装甲さえ削るほどの強力な力場には触れるべきではない。


「結構弱らせたろ。そろそろ締めに掛かるか?」

 ミュッセルが提案してくる。

「うん、問題ないかも。攻めすぎるとわからないし」

「うっし。じゃあ、任すかんな、エナ」

「ええ、あんた抜きで決めちゃうかもしんないけどね」

 少年は「いい度胸じゃん」とビビアンに残してヴァン・ブレイズを下がらせていった。


 レンズ器官の消失を確認したグレオヌスもレギ・ソウルに距離を取らせる。ここからはフラワーダンスだけで残り800mを誘導する算段である。


「これはどうしたことかぁー! 一転して静かになった両者は睨み合いー!」

 ライブ配信を見ている視聴者を代弁している。


(あまり追い詰めすぎると、こんな居住ブロックの真ん中で予測不能な強化変形を招いてしまうかもしれない)


 誘導作戦は続行中なのだ。より確実に被害を抑止できる状態でなければ賭けはできない。


「ルート策定、これでどう?」

 建造物の配置も含め、詳細なルートをメリルが流してくる。

「いいと思います。んー、押し込むのは厳しそうですね」

「ちょっと無理だわね。やっぱり引っ張るのが順当」

「ウルがメインでいきます」


 正面にウルジーを置いて攻めつつ下がる戦法が間違いないだろう。ユーリィをサポートに付けて残り三人は遊撃させるスタイルで進めるつもりだ。


「少し重いからフォローお願い、グレイ」

「もちろん、危険を感じたら動くよ。それまでは全体の防御補助をする」


 チャージを済ませたブレードスティックをストンと前に構えるウルジー。細かな戦い方までは指示しない。彼女のタイミングで仕掛けるに任せた。


「くるー?」

「シャー」


 威嚇音で応じるカタストロフ。すでに甲殻は再生して、増えたスラストスパイラルをのたくらせていた。ブレードスキンを展開した先端でこつこつと突付き合いをしている。


(慎重になった。明らかに危険な敵と認識されてる。良くも悪くも)

 難しいが利用もできる。


「ほい」

 無造作に回転させたスティックが脳天を叩く。

「ジャッ!」

「はいはいはい」


 リズムがあるのに次どう動くか読めないスティック捌きで各所を打っていく。ウルジーが挙動なしから放つ攻撃は付き合いの長いメンバーでも読めないところがある。それでも合わせていくのがチームというもの。


「あちきの爪は鋭いのにぃ!」


 半身の棒術娘と向かい合って半身で仕掛けるユーリィ。突き出した左のブレードがフォースウィップを叩くと右が下から跳ねてくる。肩を浅く削って抜けた一閃が折り返して落ちてきた。スラストスパイラルがうねって止められる。


「ほんとに弱ってるのにぃ?」


 副腕が脇から飛び出てきて猫娘は慌てて飛びすさる。そこへ伸びたスティックの先端は勢いよくねじり回転を孕んでいた。


「スパイラルスラストぉー」

「あいかわらず技名が安定しないわね!」

 メリルが思わずツッコむ。


 だが効果は覿面で、突き抜けた先端は副腕をえぐって途中から切り離している。威力は折り紙付きなのだ。


「ここぉー!」


 突如として飛び出したビビアンのホライズンが今度はカタストロフの肩に着地。首筋にブレードを突き立て、背中に連射を浴びせる。


「グギャアー!」

「強敵がいなくなったって油断してるんじゃないわよ!」

「そーそー、こっちのほうがテンポいいんだから」

「動き悪くなってない、お間抜けさん?」


 スラストスパイラルが明滅したタイミングですかさず集中砲火を浴びせるサリエリとレイミン。危機感を煽るには十分だろう。


 エナミは次に彼女たち砲撃手(ガンナー)がひそむポイントにピンを落としていった。

次回『フラワーダンス共闘(6)』 「この子、いつもこうなの?」

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更新有り難うございます。 必殺技を叫ぶのはロマン。
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