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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
モンスターブレイカーズ(後編)
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フラワーダンス共闘(4)

「リィはウルとセットで。ビビはミュウの後ろに」

 誰かが決めるべきだとエナミは考えた。

「あたしがウルとのほうが息合ってない?」

「ミュウの速度についていけるのはビビのほう」

「そういうことね、ラジャ」


 ヴァン・ブレイズを前面に出すからには自由に動いてもらわなくてはならない。ならば、ついていける速力(あし)があるビビアンであるべきだ。


「グレイは全体の防御。ごめんなさい」

「わかってるよ」

 快く引き受けてくれる。

「サリとミンは援護考えなくていいから行けるとこで攻めていって」

「こんな状況じゃね。エナが正解」

「フォローしろって言われてもできないしー」


 クロスファイトドームに近くなっていくほどに高層建築が少なくなっていく。遮蔽物が足りなくなって、止まって狙撃姿勢が取れなくなる。位置取りはどんどん困難になっている。


(あそこまでに弱らせておきたい)

 彼女の乗っているリフトトレーラーからも丸い天井部が見えてきた。


 距離にして約1200mほどか。今はメインゲートが広く開放されてカタストロフを閉じ込める準備をしているはず。

 その向こうにはほぼ完成した新しいメインドームも待ち構えている。次の第6シーズンからトーナメント本選はそちらで行われる。予選トーナメントを二つのドームで分散して円滑化を図る予定であった。


(だからって第一ドームを壊していいわけじゃないけど、最小限の損害でヴァラージを撃滅するにはそれしか思いつかなかった)

 決断材料ではあった。


「東側にまわり込んで停車いたします」

 マシュリが最終指揮地点を決めている。

「ドームの設備使用権の一部移行を確認。ゲート開放状態、防御フィールド展開準備できております」

「わかりました。みんな、いい?」

「承り!」


 ミッションの最終段階である。基本的にドームに封じ込めるまでがクロスファイト選手に要請されている。その先は本局が判断することだ。


「これまでのダメージ傾向からランチャーの収束度を下げましょう。出力30%、収束度10%で設定お願いします」

 分析結果からマシュリが提案する。

「それで建造物へのダメージは?」

「なくなりはしませんが、一発で倒壊するほどではなくなります。舗装面もダメージはありますが大きくめくれ上がるほどではありません」

「ヴァラージにダメージあります?」

「甲殻破壊が可能レベルです」

 エナミの疑問に答えがある。


 つまり、これまでは大きなダメージを与えることで動きを止めようとしていたが、ここからは甲殻を破壊して蓄積するダメージを狙うという意味。カタストロフが溜め込んでいるエネルギーを奪って弱らせる方針に変わる。


「収束度を落としたほうが内部組織を焼くのにもよさそうね。一撃では決められないけど縛りが小さくなるのも悪くない」

 メリルも賛同する。

「全機、設定送るから反映させて。マシュリさんが計算済みだから試し打ちもOK」

「それいい。助かる」

「トリガー、重かったのよね」


 砲手にしてみれば自身が街を破壊してしまうリスクを背負っているプレッシャーはつらかったらしい。効果は薄くとも、制限が小さくなるのは歓迎している。


「それだけ連射利くんだろ?」

 ミュッセルがグレオヌスに訊いている。

「もちろんさ。収束度下げるほど砲身加熱は下がる。なくなるわけじゃないけどな」

「十分だ。やり方変えっぞ、ビビ。思い切っていけ」

「わかってるわよ」


 全体に動きが活発になる。特に大きく変化したのはサリエリだろうか。低層建築の屋上に着地して三斉射。リフレクタに阻まれるが、すぐにジャンプして狙点を変える。


「気をつけて、サリ。反対に狙われやすくもなるから」

「もち。一ヶ所に留まったりしない」


 レイミンも大胆に通りに飛び出して連射している。防がれるのでダメージはないが無視もできない攻撃。牽制には有用である。

 ただし、反動の弱さからか出力を落としたのは覚られたようだ。カタストロフも立て直しが早くなって次の挙動までが短い。


(良し悪し。でも、このほうが削れるっぽい)


 活発になった攻撃で怪物の意識は分散している。逃げたレイミンを追おうとして、横からウルジーの掌底撃をもろに喰らっていたりした。

 転んだところでユーリィの連撃。甲殻に幾つもの裂け目が生まれ、そこにビームの狙撃をもらって深いダメージを負っている。


「いっくぜぇー!」

 ヴァン・ブレイズが突進を掛ける。


 ブレードナックルが迎撃の生体ビームを切り裂いたかと思うと、返しの左がクリーンヒット。振り子の如き連撃が始まった。一撃が相当なパワーを秘めているらしく甲殻が破片を撒き散らす。

 フォースクローで反撃しようとしても手刀で弾かれ、さらに肘打ちに繋がる。追い打ちに烈波(れっぱ)を放り込まれてよろけた。


「往生しなさい!」


 赤い機体の足元をすり抜ける白い影。スライディングで寝かせたホライズンから二連射のビームが浴びせられる。しかし、カタストロフはギリギリで防いだ。


(思い切りよすぎ! その位置は危険!)


 エナミは思わず息を飲んだ。

次回『フラワーダンス共闘(5)』 「狙ってたの?」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 流石、息はピッタリ?(まぁ、ベテラン(笑)が合わせてるか。)
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