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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
モンスターブレイカーズ(後編)
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フラワーダンス共闘(3)

「うらやましいほど息ぴったりね、ツインブレイカーズとも」

「合同訓練でお互いを知り尽くしてますからね」


 メリルは落ち着きを取り戻したが、もう口出しする気はなさそうだ。ギャザリングフォースの指揮で全力を出し切ったのだろう。


(ただ、クロスファイトドームまで漕ぎ着けるだけならなんとでもなりそう)

 エナミも自信が持てるほどフラワーダンスとツインブレイカーズの共闘は成功している。

(でも、本当は再生もできなくなるくらいダメージ与えておきたい。それならミュウもGPFの部隊に最後の処理を任せてくれるかもしれない)


 実質的な勝利をもぎ取ったと実感できればの話。しかし、まだ戦える状態でドームに閉じ込めても彼は納得しないだろう。まだまだ危険な敵ならば譲りはしない。事実、損害を出さずに撃滅は難しいと思う。


「行くわよ!」

 ビビアンの声に全機が一斉に走り始める。


 ヴァン・ブレイズを先頭に追いかけるユーリィのホライズン。隣接する通りへと抜けていったビビアン機とウルジー機、レギ・ソウル。始めからまわり込もうとするサリエリとレイミンの砲撃手(ガンナー)組。見え隠れしつつ響く足音がプレッシャーとなってカタストロフを襲う。


「甘えぜ!」


 突き放そうと放った生体ビームはミュッセルの拳が打ち砕く。全くといっていいほど緩まないスピードも危機感を煽ったか。同じ方向に走り始めた。


「来る」

 エナミは自身が一瞥されたと感じる。


 やはり生体ビームの狙撃が索敵ドローンへと発射された。試合と違ってカタストロフにタブーはない。監視されていると気づいて撃ち落とそうとしたのだろう。

 ただし、ドローンそのものはたった20cm程度のもの。少し回避させただけで躱すのは容易だ。


「ここ」

 三条の白光を避けたところで合図する。


 生体ビームのインターバルに入ったタイミングで攻撃を指示。僅かな狭隘を貫くレイミンの一射にリフレクタが生み出される。反動で足運びに乱れが出たところでユーリィの突進。


「んにぃー!」


 空気を鳴らして落ちる斬撃をフォースクローが受け止める。すかさず重ねられた左の一閃もリフレクタで紫電を散らす。

 だが、反動を逃がそうとして足は止まり、そこに横合いからウルジーの突撃が飛ぶ。顔面に決まった一撃は甲殻の破片を撒き散らし、返す逆側の先端が腹へと差し込まれる。


「コークスクリューブラストぉー」


 掌底撃がカタストロフの駆体を揺らし、悲鳴をあげさせる。痛みに折れた身体の横には真紅の機体。完全に足場の決まった状態で肘打ちが脇腹に突き刺さる。


烈波(れっぱ)


 リクモン流の一撃だけでなく、さらに浸透系衝撃波の追い打ち。隣のビルに駆体を打ち付けしゃがみ込む。それでもリフレクタを張ってさらなるダメージは予防している。


「普通なら脇腹めちゃくちゃになってんぞ。こいつには骨ってもんねえのかよ」

 ミュッセルは悪態をつく。

「皮肉にも今回の事件で研究成果があがってるわ。甲殻から内部突起、腱、筋組織となだらかに変化する構造。急速な形態変更を可能とする生態から予想されていたけど、アームドスキンのフレームみたいな骨格らしい骨格は持たないみたい」

「構造的にはどっちかってえとアストロウォーカー寄りか。それでこのパワーとかどうにかしてんぜ」

「それを可能にする筋組織だからこそマグナトラン社は画期的な有機駆動器になると確信したんでしょうね」

 メリルがデータを噛み砕いて説明している。


 ユーリィの一撃をリフレクタで弾いて立ち上がるヴァラージ。振り回したフォースウィップをウルジーがブレードスティックで絡め取ると強引に引く。それでミュッセルの出足を邪魔すると包囲を抜け出した。


「残念ね」


 交差する通りからスライディングしてきたサリエリ機。建物の基部に足を掛けて止まると、仰向けの姿勢から角度を付けたビームを放つ。カウンター気味の一撃が副腕を一本吹き飛ばした。


「器用な真似をするのね?」

「今回は跳べないのでサリは考えたみたいです」


 上からの角度のあるビームは回避されると路面に大きなダメージを与えてしまう。仕方ないので、従来の縦の動きを横にしたらしい。惰性を利用して立ち上がると反撃のブラストハウルから機体を逃がして消えていった。


「お疲れ!」


 爆散する建物の破片を避けて低く飛び込んでくるビビアンのホライズン。機体の下に隠したビームランチャーが光を放つ。射線を読めず躱せないビームが胸のレンズ器官を貫いていた。


「上手い、ビビ」

「なんで抜けちゃうのよ」

「内部は有機組織構造だから金属に当たったときみたいに拡散しないの」

 思ったより小さいダメージに悔しがっている。


 機動兵器などの金属構造ならビームに含まれる質量体が分散してより大きなダメージを与えるが、柔らかい組織だと貫通してしまう。わずかに射出口が大きい程度に見えた。


「それなら」


 即座に切り替えてブレードを繰り出すもリフレクタに阻まれる。最も厄介なのが、この任意空間に展開できるリフレクタかもしれない。


(そういう意味だとやっぱりミュウやウルの打撃系のほうが崩しに向いてる。意表を突かないとビームやブレードは簡単に防がれちゃうもの)


 エナミはコンビネーションを再編すべきだと考えた。

次回『フラワーダンス共闘(4)』 「トリガー、重かったのよね」

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― 新着の感想 ―
更新有難う御座います。 ……あぁ、[共闘]か……今までは合同訓練でしたもんね?
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