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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
モンスターブレイカーズ(前編)
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スター、輝け(11)

 グレオヌスは空間エネルギー変換(コンバータ)システムで分解した花弁のような薄片を回転させる。どうにか制御は可能で、大型サイクロトロンとはいかなくともサイクロン円盤(ディスク)と呼べるサイズにはできた。


「これならばいけるか?」

「シュルシュル……」

 カタストロフは異変に警戒している。


 しかし釘付けともいかず、近づいてこないレギ・ソウルに対して生体ビームを放った。彼はディスクを移動させるとその軌道上に置く。すると、白いビームがディスクに飲み込まれてわずかに大きくなった。


(サイクロンディスクは盾じゃない。そこにあるCシステム制御点が可視化しているに過ぎない。つまり、生体ビームも変換可能)


 それこそ狼頭の少年が望んでいたもの。広範囲で生体ビームを防げるのならば越したことはないが彼の精神強度(サイレベル)では難しい。だが、自機から離れたポジションでもディスクという形で変換ポイントが作れるのならある意味盾として機能するものになる。


「ご立派ですよ」

「恐縮です」


 結論を見出しマシュリに褒められる。養い親(シシル)も喜んでくれるだろう。父と同じステージにはまた一段ずつ登っていけばいい。今、必要なものは手に入れた。


「さあ、これでやっとまともな勝負ができる」

 ブレードを正眼に構える。

「全力で付き合うよ」

「ジャッ!」


 ディスクを三つまで作る。幾つまで制御可能かわからないが空間を掌握するほどの負荷はない。レギ・ソウルも自在に動ける。


「シュー」

 ヴァラージは恨めしそうに唸る。


 生体ビームで狙われるがディスクで受けない。機体周囲の約5mは制御範囲にしており、エネルギーの花弁が折り重なり花冠に変換される。分解して周囲を舞わせ、少しずつディスクに取り込んでいった。


(ディスクのエネルギー蓄積量次第では使えるかもしれない。まずはサイズを育てていく)


 生体ビームが効果ないとわかると今度は別の攻撃をしてくる。カタストロフの開いた口からは不可視の衝撃波が放たれた。その塊は花弁を押しやって迫ってくる。


「そっちも可視化できるとは思いがけないな」

 動きを元に回避する。

「システムが無敵だって言われるのも頷ける」

「シャッ! ジャッ!」

「なるほど」


 突進してきたカタストロフが今度はフォースウィップを振るってきた。力場の制御力では及ばないようで変換できない。ただし、ディスクで受け止めることはできた。フォースクローまでブレードで弾いてみせるとヴァラージは飛び退く。


「そう考えるよな」


 攻め手に欠けるとわかるとターゲットを変える。未知の武装に警戒して近づきかねていた女帝のレイ・ソラニアに向き直って攻撃する。


「今なら防げるんだ」

 ディスクを動かして発射された生体ビームを受ける。

「こっちも攻め手がないのは否めないんだけど」

「それは私が補完しよう」

「よろしくお願いしますよ。僕も直接攻撃しかできませんので」


 状況は変わった。生体ビームの流れ弾を防ぎながらブレードで攻め立てる。若干自由度が上がったが、いかんせん集中力の要求が激しい。


「すみませんが、そう長くは持ちそうにありません。押せますか?」

「やってみせよう」

「だいたい把握した。攻めるわよ」


 コマンダーのメリルも観察してCシステムの機能を飲み込んだ様子。改めて組み立ててくる。連携は理論的でグレオヌスにも理解しやすいものだった。


「狼頭の貴公子が進化したぁー! 驚くべきアームドスキン『レギ・ソウル』は無敵なのかぁー! 撃滅への期待が高まります!」

 フレディのテンションも上がっている。

「果たしてチーム『フローデア・メクス』はこの激闘に終止符を打てるのかぁー!? メルケーシン最強と誉れ高い四天王チームの度重なる攻撃がここに来て結実するー! 我らが母なる惑星(ほし)を守り抜けるのは彼らしかいなかったぁー!」


 危機感を募らせるよりは期待感を抱かせたほうがいい。リングアナを長年務めてきた彼のアドリブ力にはグレオヌスも感服する。


「目まぐるしい斬撃がカタストロフを追い詰めるぅー! もう一歩です! 頑張れ、フローデア・メクス! 頑張れ、レギ・ソウル! 我らの希望をその背に戦え! 皆が応援しております!」


 制空権を取り返した戦場で砲撃手(ガンナー)のサラが跳躍する。角度のある狙撃がカタストロフを苦しめた。

 走っては伏せ撃ちの姿勢を取るベスはメンバーの動きの未来が読めているかのよう。鋭く縫ったバルカンビームがヴァラージの足を削り動きを鈍らせていく。


「たあっ!」


 ボズマの大振りながら威力のある回転斬りが落ちてきたかと思えば、凄まじい回転力を持つ女帝ユーシカの剣閃が駆体を削っていく。その間隙を埋めるようにエイクリンが鋭い突きで刺す。


「シュギャアー!」


 堪らず反転したカタストロフ。しかし、そこにはレギ・ソウルが待っていた。フォースウィップを掻い潜って低い一閃を放つと片足を刎ねて抜ける。転倒した怪物を建物の間から狙う複数の砲口があった。そう、そこはもう居住ブロックのエッジに当たる場所。


「ここでチーム『ギャザリングフォース』の登場だぁー! 街を守る砦の戦士が立ち上がるぅー!」


(これでようやく作戦は第二段階に入れるのか)


 グレオヌスは即座に再生をはじめる余力のあるカタストロフに閉口した。

次はエピソード『ブレイカーズ(後編)』『ドームへの長き道のり』 「ただし、見慣れない装備です! これはもしかしてぇー!?」

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