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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
モンスターブレイカーズ(前編)
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スター、輝け(10)

(届いた!)

 喜びというより安堵だった。

(間違いなく搭載されているとは思っていたけど、僕にも起動できた)


 レギ・ソウルは元々父のブレアリウス用に設計されたアームドスキン。当然、父の使える空間エネルギー変換(コンバータ)システムは搭載されているはず。問題はグレオヌスにそれを制御しうる精神強度(サイレベル)があるか否かだった。


「サイレベルはぎりぎりです。限定解除ではありますが使用可能です」

「それで十分」

 マシュリの指摘に応じている場合ではない。


 生体ビームが発射される。ユーシカ・アイナルのレイ・ソラニアに向けてだ。彼女の双剣で防げるのは最大でも二門まで。カタストロフは四門を備えている。


(なにができる?)


 マシュリは限定解除と言った。それは制御エリアが限定されているのか出力が限定されているのかわからない。まずは使ってみるしかなかった。


(弾けろ!)

 白光が花冠に転じる。


「む? これは不可思議な」

 女帝は戸惑っている。

「システム!? 使えるんなら言っておいてくれない、グレイ?」

「どうにか使えるようになったんですよ、メリル。これがあれば……」

「幅が広がる!」


 凄腕コマンダーも懸念を胸に秘め、抑制した作戦展開をしていたとわかる。Cシステムは攻撃力に劣るものの、惑星規模破壊兵器(リューグ)システムの中では防御に最も優れているとされているのだ。


「どこまで使えるかわからないんで確かめます」

「早急にして。それ次第で全然変わるの」

「簡単に言わないでください、こんな状況で」


 不思議に感じたのは味方だけではなくヴァラージもだった。動かないのをこれ幸いとエネルギーの砕片でできた花冠を分解する。薄片を飛ばしてカタストロフを攻撃した。


(このあたりの使い方はわかる。回数は少ないけど、父が使っているのを見たことあるし、過去映像は飽きるほど復習した)


 グレオヌスにとってブレアリウスは絶対の憧れであったし、いつか到達したい高みにいる。模倣しようとするのは自然なこと。ならば父がなにをできるか調べるのも当然だった。


「無理か」


 エネルギー薄片は見た目がブレードに似ていても性質はビームに近い。力場制御に長けたヴァラージだと制御圏内に入っただけで分解された。磁場制御の一つであるCシステムは直接攻撃に向かない。


(だったら変換できる範囲が大事になる)


 カタストロフも不可思議な現象を起こしているのがレギ・ソウルだと気づいたようだ。目標を変更してくる。彼の戦気も数倍に上がっている。


「やるじゃん」

「それどころじゃないんだよ」

 観戦しているミュッセルは呑気なもの。

「特殊武装みてえだが動けなくなんなら本末転倒だぜ?」

「言われるまでもない。けど、これはなかなか」

σ(シグマ)・ルーン制御の負荷がでけえか? 普段からフィットバー操縦に偏ってるからだぜ」


 足技も多く、全身を使う相棒は機体制御のバランスがいい。対して剣闘技に特化してフィットバーに頼りがちな部分を皮肉られた。


「感覚的なもんだろ? 身体の一部だと思えよ」

 気軽に言ってくる。

「僕はこんな膨張した粘液体みたいな身体を持ってないよ」

「そういうもんだと思えばいいじゃん。そのうち慣れてくるって」

「だったら変わって……、いや、これは自分で求めたものだ。御してみせる」


 方針変更してレギ・ソウルを反対側へ移動させる。つまり、居住ブロックを背負う場所へだ。自身を追い込む意味も込めている。


「さあ、来い!」

「ジャジャッ!」


 生体ビームが同時発射される。グレオヌスの正面に四つの花冠が咲いた。それだけでは意味がないので薄片に分解してまといながら走る。

 接近しても徐々にしか分解されない。制御範囲が拮抗しているのだろう。繰り出されたフォースウィップも花弁に当たると軌道が変わった。対策になる。


(あとは)


 カタストロフを包みこんで攻撃をできなくさせられるとかなり大きい。花弁を飛ばして迂回させようと試みたが、レギ・ソウルからある程度の距離が離れると分解してしまう。


(限定されているのは効果範囲のほうか。あまり良くないぞ)

 舌打ちをする。


 試しに横にまわり込む。攻撃を誘って回避してみた。やはり効果範囲を外れた位置を通過した生体ビームは変換できなかった。


「これじゃ自分の周りの防御範囲が増えただけでしかない。足りない」


 彼が欲しているのは範囲の限定されない防御力である。街区に入れても守れるだけの力がなくては駄目なのだ。


「贅沢だな」

 生体ビームの無効化手段を手に入れただけで満足しろと戦友は言う。

「自機を守れるだけじゃ足りないんだ」

「自分を守れりゃ、あとは攻撃し放題じゃねえか」

「違う。もっと大局的でなければ戦場を御するだけの力にならない」

 求めるものは大きい。

「Cシステムの機能はそれだけではございませんよ?」

「そうだった。サイクロトロン形成、サークルショットが本来の攻撃手段。でも、あれは攻撃力が高すぎるし」

「限定と申し上げました」


(僕にはサイクロトロン形成もできないのか? いや、だったらマシュリは言及なんかしないはず)


 グレオヌスは彼女の言った意味を理解しようと頭をフル回転させた。

次回『スター、輝け(11)』 「ご立派ですよ」

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