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四天王テンパリングスター(6)

 先頭は砲撃手(ガンナー)のワイズ、サイドに彼レングレンとフェチネの両剣士(フェンサー)、後尾をゼドとシュバルが固める。ガンナーを中心に置いた逆鏃フォーメーションとは異なり星型のフォーメーションだった。


(オープンスペースと違って射線が取りにくい。フェンサーがブロック役をしないと一気に崩される可能性を捨てがたいからな)


 二人のどちらかが飛び込んでくると同士討ち(フレンドリファイア)を意識せざるを得ない。誰か受け止めにいかなくてはならず、自然それは剣士(フェンサー)の役目となるのは事前に決まっていた。


「ゆっくりと移動中だ。振り切ろうとはしない。無理だって承知してる」

「いくらあの二人でも不可能を可能にはできないか」


 コマンダーの操る索敵ドローンは全長にして20cm程度でしかない。それが機体四ヶ所のエアブラストスラスターで浮遊飛行する構造。開けた場所で高速飛行するアームドスキンには追いつけなくとも、リングのような限定された空間で追いきれないはずがない。


「本当ならレギ・ソウルに仕掛けたいところだが、この距離ではあまり意味がない。位置関係を見ながら調整してくれ」

「わかった。そのあたりは私とフェチネでどうにでもなろう」

「ワイズじゃ赤い暴れん坊を受け止められないもんね」


 ブレードなら力場盾(リフレクタ)を押し立てて防御しつつ当たりに行ける。だが、ヴァン・ブレイズの打撃だとリフレクタでは効果はない。剣士(フェンサー)のフォローが必要になる。


「うるせえよ。オレっていう囮に食いついてきたら始末すればいいんだ。そういうフォーメーションだろ」

「はいはい、美味しい餌を演じるのよ」


 両サイドからガードしつつ、ワイズに攻撃してきたヴァン・ブレイズかレギ・ソウルの足を止めさせる。そこへ後尾の砲撃手(ガンナー)二機が大破を狙いにいく作戦。狭所用シフトである。


「見えた。くそ、ミュウが後ろか」

「右にまわり込む。フェチネ、並走気味に攻撃」

「あいな」


 右側からレギ・ソウルをターゲットに仕掛ける。ミュッセルを左サイドのフェチネに牽制させつつワイズがグレオヌスに攻撃。彼はその援護をする。そこで本命のザドたちが走り込む算段だ。


「こんな場所なのに、ごちゃっと固まってくるのかよ。ご苦労なこった」

「ふふん、嫌がってる嫌がってる」


 フォーメーションを堅持したままで接触。ワイズは、ミュッセルには一射も入れずに通過、レギ・ソウルを狙いに走った。レングレンもワイズのすぐ背後に付く。

 足元をビームで崩されたグレオヌスは速度を緩める。もう一撃をブレードスキンで受け、向き直ってきた。


「侮れませんか」

「君らに合わせた贈り物だからね」


 グレオヌスも彼を気にして無闇に間合いを詰めてこない。そうなると砲撃手(ガンナー)の餌食である。集中するビームを弾くのに忙殺されている。


「王者の驕りはないと?」

「驕りも誇りもないね。打ち勝つ楽しさを実感させたのは君らだからね?」


 ザドが程よくヴァン・ブレイズにもビームを挟んでいるのでフェチネも持ち堪えている。一気に崩しにとはいかないが予想どおりの運びとなっていた。


(手足の一本でも奪えればバランスは傾くんだが)

 そう甘くはない。

(的を絞らせてはくれない。少なくともグレイ君は目論見を読んでるね)


 ツインブレイカーズは完全に足を止めることなく小走りしている。テンパリングスターは追いすがりながら攻撃。その所為で照準は甘め。

 二人の少年は回避を織り交ぜつつの走行に変わってきた。まともに受け止めるつもりはなさそうだ。しかし、それも計算のうち。


(この状態を作れればいい。膠着していると見えて実はこちらに有利に働いている。なにせ、ビームは走行速度にほぼ関係しない)


 斬撃ならば、やはり足を止めての攻撃でないと正確さに欠ける。それはビームランチャーとて同じことなのだが距離で手数が左右されない。精密狙撃は難しくとも、ずっと攻撃しつづけることができる。多少狙いが甘くとも攻めは緩まない。


「たるい攻め手しやがんな。ガツンと来いよ」

「ガツンとやられたら堪らないんでね。悪いがゆっくりでも確実に詰めさせてもらう」

「ほんとプライド捨てやがったな」


 密度の高い攻撃を維持する。障害物(スティープル)の間隔が広いところに差し掛かると足元をビームで崩して突き放しに掛かるのを防いだ。ミュッセルたちは若干前後しながらも相対距離を保っている。


「さあ、この我慢比べの結末はどうなると思う? ちなみに、うちのガンナーも少々ではへこたれないくらい走れるようになってるからさ」

「そうかよ。ま、試合で走りながら攻撃もするとなりゃ訓練の比じゃねえ消耗だぜ。それでもいいってんなら付き合うのもやぶさかじゃねえんだけどもよ」


 ミュッセルの声音に違和感を覚える。なにか企んでいるかのようなそれだ。くり返し味わわされてきた嫌な感じが湧いてくる。そんなはずはないと打ち消した。


「ツインブレイカーズ、攻め立てられているぅー! これは形勢逆転かぁー! スティープルエリアに入ったのは誤算だったのでしょうか!」

 リングアナにも少年たちが守勢にまわっていると見えている。


(そうだ。フラワーダンスが勝機を見出した攻撃法。これが彼らのペースを狂わせるんだ)


 レングレンは変化を見逃すまいと集中して観察した。

次回『四天王テンパリングスター(7)』 「それだけ揃えりゃ勝てるってか?」

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