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四天王テンパリングスター(3)

 鏃陣形に逆側から封じ込めるような戦法をレングレンは提案した。コマンダーと図ってのことだが、かなりリスキーな作戦なのは理解のうえでだ。


(従来のやり方では二人を攻め落とすことはできない。リスクを背負ってでも手数を増やさないと反撃の糸口を与えてしまう)


 ツインブレイカーズにペースを持っていかれれば取り戻すのは困難だ。彼らは勝負どころを見極める目も確かだし、仕切り直さなくとも攻撃をいなしながら組み立てしてくる。封じようとすれば全力で攻め続けるしかない。


「なぜ踏み込んでくる!」

 シュバルはミュッセルの行動に仰天している。

「躱せ!」

「逃がすかよ」

「シュバル!」


 ワイズとゼドの弾幕を力場スキンで弾き返したヴァン・ブレイズは、スライディングしてくるシュバル機にまで踏み込み下がろうとしない。彼のレトレウスに背後を取られているというのに気にする様子もない。


「くっ!」

「ふん」


 転がって避けるのも許してくれない。フィックノスは踏みつけられていた。しかし、その状態はレングレンには好都合でもある。


(容易に回避もできない。下手に動けばシュバルの的だ)


 砲撃手(ガンナー)を気にしたままであれば彼の斬撃を躱せない。足場が悪いので一撃必殺の技も出せないはずだ。


「足掻け!」

「やってますって!」


 ビームランチャーの砲身は掴まれ逸らされている。ヴァン・ブレイズは背中を向けたまま押し合いしていた。


(もらった!)


 背後からの避けようのない一撃。胴を薙ぐようにブレードを走らせる。ところが真紅のアームドスキンはかがみ込んで躱した。


(見えていたとしても!)


 あまりに紙一重の回避だった。まるで予想していたかの如く。レングレンは見事に空振りしてしまう。


(引き戻せ。どうせどうすることも……。しまった!)


 ヴァン・ブレイズの三連カメラアイがこちらをうかがっているのに気づく。フィックノスを踏みつけていないほうの足が跳ねた。


「なぁ……、がっ!」

「うげは!」


 後ろ蹴りが腹部に入っている。そして、軸足は踏みつけている足。つまり、彼の受けた衝撃の反動がそのままシュバルにも伝わっている。ミュッセルは最初から両機とも攻撃する機会を狙っていたのだ。


「やらせん!」

「けっ!」


 彼とシュバル、両方とも咄嗟に動けない状態から救ってくれたのは、サイドに外していたゼドのビーム。ゲージいっぱいの散らした連射となるとヴァン・ブレイズも弾きつつ下がっていく。


「っとぉー!」

「厳しいか!」


 苦戦しつつもフェチネとワイズがレギ・ソウルから距離を取る。フォーメーションが崩された状態で維持するのは望ましくない。


「なるほどな」

「面白いことを考えるもんですね」

 合流した二機は感心している。

「初手で手足の一本くらいはもらう予定だったのに」

「どうにかしてるぜ、こいつら。あそこで前後に踏み込んでくるか?」

「戻れ、フェチネ。言ったとおり、崩すまでくり返す」

 指示を飛ばす。

「シュバル、真っ向から突っ込むだけでは駄目だ。相手の動きを見てから攻め口を決めろ」

「あのリズムでですか、リーダー。難しい注文です」

「できるのがテンパリングスターメンバーだ。私はそう信じている」


 再び逆鏃フォーメーションを組む。火力を集中せねば少年二人を攻め続けるのは不可能。そのために後衛(バック)陣も常に走れるよう訓練したのだ。


(全体のパイロットスキルを鑑みれば戦術的に間違っていないはず。ただし、こうも極端にリスキーなフォーメーションを組むしかないのは戦略的に彼らに負けているようなものなんだが)


 四天王ともあろうチームが形振りかまわない作戦に走るのはみっともないと言われるかもしれない。しかし、まずは対決しての一勝。それが喉から手が出るほど欲しい。


(これまでどおりの攻め方では駆け引きもなにもない。攻略法を見出だせないと思わせるだけ。試合の前に負けているようなものだ)


「もっと鋭くいけ。ワイズとゼドも場所を開けるような感覚でなく、トップとスイッチするくらいの際どいタイミングでいい」

 一度目の接触で足りなかった指示を補う。

「ヒートゲージがいささか怪しい状態になるぜ」

「後のことは考えなくていいんだ。決まらなければ仕切り直すしかないんだからさ」

「わかった。だがよ、見せてしまったのは痛い」

 ゼドも一撃で決めるくらいでなくてはいけないと思っていたようだ。

「反射的に避けられただけだ。こっちが全く同じことをしないかぎり、向こうも同じ対処はできない」

「徐々に回転上げてくか」

「決定的な攻略法は見つけていないはず」


 根拠がないわけではない。隙を見つけるとアクティブになる二人が今回はまだ受け身にまわっている。明確な対策が打てていないのだと思われた。


(これでいい。何度でも仕掛けて、よりブラッシュアップしていく。こちらも疲弊するだろうがミュッセルたちも同じこと。どこで崩れるか賭けになるな)


「さあ、もう一度だ」

「今度こそ一撃見舞ってやるんだから」

弾液(リキッド)ケチるな。こいつはヘビーなバトルになってきたぜ」


 レングレンたちは再びフォーメーションを組んで赤と灰色のアームドスキンに向かっていった。

次回『四天王テンパリングスター(4)』 「待て! 撃ち方やめ!」

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― 新着の感想 ―
更新有難う御座います。 まぁ、数の不利を覆すには高火力の速攻と回転率かな?
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